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スペシャル・インタビュー
2017.06.26

株式会社宝島社 『sweet』『オトナミューズ』編集長 渡辺佳代子さんにインタビュー【第1回】―ファッション雑誌編集長の仕事―

政経学生卒業生インタビューエンタメ

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1995年に政治経済学部を卒業し、現在雑誌編集長として活躍されている渡辺さん。大学を卒業後、角川書店などを経て1997年、宝島社に入社。『CUTiE(キューティ)』編集部を経て、1999年、20代で『sweet(スウィート)』の編集長に抜擢されると、同誌を100万部超の販売部数を誇るファッション雑誌へと育て上げた。ファッション誌の付録にブランドアイテムを採用した先駆者としても知られる。現在は2014年創刊の『オトナミューズ』編集長も兼務。そんな雑誌界の第一線で活躍されている渡辺さんに、同じ政治経済学部に在籍する4年生の柿沼さんから、お仕事のこと、学生時代のこと、そしてプライベートな趣味などについて、インタビューしてもらいました。

現在のお仕事について

柿沼さん(以下:柿沼) 初歩的な質問ですが、雑誌作りの様子をお聞きしたいです。

渡辺さん(以下:渡辺) 雑誌には、それぞれ想定している読者像があります。私は今『sweet』と『オトナミューズ』の二誌を手掛けているのですが、例えば『sweet』であれば「28歳、一生“女の子”宣言!」をコンセプトにしています。毎月の企画は、このコンセプトに沿って考え、編集部員がそれぞれ担当を持って誌面を作っています。

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柿沼 
店頭に並ぶまでには、どんなステップがありますか?

渡辺 私が企画を決め、担当者が構成を作り、それをもとにして写真の撮り方を考え、カメラマンやスタイリスト、モデルなど、スタッフを組みます。服や小物を手配し、スタジオやロケ先を決めて、写真ができあがったら原稿を書いて、レイアウトを依頼し、上がったものをチェックして、OKなら印刷して、書店に向かうという感じです。

柿沼 それを毎月、続けているんですね!

渡辺 そうですね。でも、スタッフはそれぞれの分野のプロなので、編集者の仕事は構成を考えて、スタッフに指示することがメインです。あとは企画がイメージ通りに進んでいるかをチェックすることですね。

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柿沼 今までで、最もやりがいを感じた仕事はなんですか?

渡辺 たくさんありますが、やはり一つだけあげるとするなら、『sweet』で100万部を達成したことです。売れる雑誌を作ったことはもちろんだけど、100万部という数字がすごいと思いませんか?

柿沼 すごいです!その陰にはどんな努力があったのでしょう?

渡辺 『sweet』では、いかによそを真似しないか、いかにほかの雑誌がやっていないことをするかを考えて作るようにしてきました。付録を付けたのも同じ理由です。当時は、本当に売れてなくて、こんなに良い雑誌なのになぜ売れないんだろうと思い、とにかく雑誌を手に取ってもらうために「モノで釣ろう」と考えたんです(笑)。

柿沼 でも、「釣れる」付録を毎号考えるのも大変なことだと思います。

渡辺 数ある雑誌のなかで『sweet』を選んでもらうために付録を付けたわけですが、今はもっと難しくて、書店に来ない人に来てもらうための工夫が必要になっています。ハードルはますます高くなっていますね。

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柿沼 確かに、紙媒体が売れない時代と言われています……。

渡辺 出版業界が衰退しているとか、全体のことを憂えても、あまり意味はないと思っています。それより自分の雑誌が、どうしたらもっと面白くなるか、書店に人を呼ぶことができるかを日々考えています。雑誌でしか読めない情報というものは、確かにあると思うので。

柿沼 雑誌でしか読めない情報とは?

渡辺 SNSでは得られない情報です。私自身、10代のころ、ファッション誌の中にしかない世界に心惹かれていたように、雑誌のサイズでなければ表現できないものがあると思うんです。もちろんWEBの速報性にも魅力はありますが、生の加工されていない情報だけでは、夢がないでしょう?

柿沼 ビジュアルを大事にしているということですか。

渡辺 していますね。一つの企画のためにわざわざ海外に行って写真を撮ってくるのはなぜか。相応の予算をかけて1ページ1ページつくっているのはなぜか。それは絵に力を持たせるという意味が大きいです。誌面を見て、感情が沸き上がってくるようなものを作っている自負はあります。それに、もし、ファッション誌がなくなったら、世界からこういうビジュアルが消えてしまうということですから、そこは大事にしたいですね。

株式会社宝島者 渡辺佳代子さんにインタビュー 第2回はこちら(2017年6月27日公開)

※ページの内容や掲載者のプロフィールなどは、記事公開当時のものです

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