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スペシャル・インタビュー
2018.10.31

【特集・第2回】作詞家・作家 児玉雨子さんにインタビュー

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【第1回】作詞家・作家 児玉雨子さんに こちら

誰かに身近に感じてもらえる詞を書きたい

池田 作詞家のお仕事の面白さをお聞かせください。

児玉 私が書いた作品について、知人に「この曲は私のことを歌ってくれている曲だ」と言ってもらったことがあって、それがとてもうれしかったです。1、2回言われた程度ですが、これからも誰かに身近に感じてもらえる詞を書けたらいいなと思います。その曲も、知人ではなくて道行く人をモチーフに書いた曲で、たまたまそれがその人の感性に刺さったんだなと。

池田 リスナーの方に共感してもらえるとうれしいということですね。

児玉 多くの人に共感してもらうことは当然大事なのですが、不思議なことにそれを狙うとかえって共感されなくなるんです。自分自身の実体験でもあるし、他の方の作品を見ていてもそう感じることがあります。みんなに分かりやすいようにと狙いすぎた詞では、全然引っかかりがない作品になってしまうんです。多くの人に聴いてもらいたいけれど、まずはひとりのことを見て書くということを大切にしています。

池田 詞を書くノウハウのようなものがあるのでしょうか?

児玉 ノウハウというほどのものはありませんね(笑)。昭和の歌謡曲が大好きなので、決まりごとというわけではありませんが、いただいたメロディのどこに情景が入るのだろうかと考えます。明治大学の大先輩である阿久悠さんや阿木燿子さんの作品も大好きなんです。

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児玉さんの自信作は?

池田 ご自身で代表作だと思えるような作品はありますか?

児玉 最高傑作を聞かれて「Next One!(次回作だ)」と答えたチャップリンではありませんが、常に次に出す作品が自信作でなければならないと思っています。自分の中で自信作と思っているものほど、売れていなかったりすると自信が無くなってしまうので(笑)。また、私が「これが一番です」というと、ほかの作品を好きだと思ってくれている方に、あれは手抜きだったのかなと思われてしまうのも残念なので、これだと決めているものはありませんね。

池田 児玉さんの作品は、歌詞に歴史的仮名遣いを取り入れた『うるわしのカメリア』という曲などもありますし、作風がとても幅広いですよね。作風の違いなどはどのように意識されていますか?

児玉 その曲を歌う歌手や、アイドルグループの性別やジェンダー、年齢など、「この年齢でこの言葉は使わないな」といったことは意識しますが、強く意識して書き分けてはいませんね。

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「何でもOK」は「何でもやりなさい」ということ

池田 明治大学を選んだ理由は何ですか?

児玉 もともと、とある大学の付属校に幼稚園から通学していました。そのまま付属の大学への進学を目指すこともできたのですが、単純に学校に飽きていたこともあって、気になる大学のオープンキャンパスに行ったりしていました。その中で数校、自分で行けそうなところを絞ってしました。明治大学の合格が早かったことと、オープンキャンパスでの印象が良かったこと、学部文学科の文芸メディア専攻は、ほかにあまりない分野で面白そうだなと思ったことから明治大学に入学しました。

池田 その後、まで6年間明治大学に通われて、いかがでしたか?

児玉 文芸メディア専攻は、そこにテクストがあれば、ジャンルやメディアも問わず何でも取り扱うというところでした。古典から現代まで全部できるし、新聞や映画、音楽など何でもOKなんです。ただし、それらをテクストとしてきちんと扱いなさいというスタンスで、「何でもOK」ということは「何でもやりなさい」というところでした。今日は大衆歌謡と江戸文学の、明日は現代文学に映画、といった感じで、必修の範囲が広くて大変でしたが、若いうちに多種多様なものを読んだり見聞きしたりすることが大事なことだったのだなと、今は思っています。

池田 先ほど触れた歴史的仮名遣いの作品などにも、生かされていたところがあったのかもしれませんね。

児玉 そうですね。『うるわしのカメリア』の作詞中には、正しい旧仮名遣いに自信がなかったので、大学の中央の書庫に行って、大正期の小説などを読み漁って調べて書きましたよ。結局、読みづらいということになって、ところどころ現代仮名遣いですが(笑)。

池田 作品の裏側には明治大学があったのですね。

※ページの内容や掲載者のプロフィールなどは、インタビュー当時(2018年8月22日)のものです

>>【第3回】では、児玉さんの学生生活や、卒業論文などについてお聞きしています!

※ページの内容や掲載者のプロフィールなどは、記事公開当時のものです

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