2歳の頃から父親にギターを教わり、ギターを続けるうちにシンガーソングライターを志すようになる。「誰かの言えない言葉を歌にして代弁したい」という思いで楽曲制作をしている。感情をうまく表に出せない彼女が楽曲を作ることで自由に胸に秘めた気持ちを解き放つ。その言葉、メロディーが伸びやかな歌声と共にリスナーの心に真っすぐ届く。
楽曲制作について
―― ご自身で楽曲制作をしていると伺っていますが、制作するときに心がけていることはありますか?
並木さん(以下:並木) 定番の流れにならないように気を付けています。作った曲を次の日に聴いて「これどこかで聴いた曲に似ているな」と感じたら、その曲はもう無かったことにしています。
―― それはメロディーですか?歌詞ですか?
並木 メロディーですね。メロディーは、こうきたらこうっていう規則的なものはあるんですけど、それの中でどう動くかが難しいんです。自分らしい新しい感じにつくるのが大変だと思っています。
―― 歌詞が先とおっしゃっていましたが、歌詞を先に考えてから曲を作るのですか?
並木 まず、歌詞を文字数とか関係なく書いて、印象というかイメージを作ります。それからそのイメージで曲を作って、後で歌詞とメロディの辻褄を合わせていくような感じです。
―― 歌詞を作る時というのは、発信点というか、何を思って作るんでしょう?
並木 例えば小説を読んだら、主人公目線の歌詞を書いてみるとか、テレビドラマを見て、自分なりの主題歌を作ってみたりとか。そういう感じでやっていました。
―― その主人公の気持ちになってみるとか、自分が主題歌を担当するならこうするとか、そういうことですよね。自分の経験から作詞することもありますか?恋愛や、学生生活に重ねてとか。
並木 「夢に向かって頑張ろう」というメッセージを込めた歌は自分の経験から書くことが多いんですが、あんまり恋愛のネタがないので(笑)、恋愛は友人の話を聞いて歌詞を書いたりします。でも恋愛はだいたいテレビドラマからが多いですね。
―― 音楽を始められたきっかけがお父様と伺っているんですが、お父様以外で影響を受けたアーティストさんはいますか?
並木 父も母もボン・ジョヴィをよく聴いていて、ボン・ジョヴィが家でずっと流れているような環境でした。例えば小さい時聴かされていたりすると、大人になったらもういいやってなったりすることもあるじゃないですか。でもボン・ジョヴィは大人になった今でも好きなんです。
ボン・ジョヴィは洋楽ですが、でも、日本の歌謡のように、Aメロ、Bメロ、サビ、イントロがあってっていう、ちょっと日本のロックバンドに似ているというか近い部分があって。それは曲作りのなかでは、カギになっていますね。
「このアーティストに影響受けました」というよりは、たくさんの音楽を聴いてきました。古いものだとシンディ・ローパーとか、日本だと私が幼稚園や小学校の時くらいのときのaikoさんとかも聴いていましたね。
―― 音楽の出発点はお父様であり、常に耳に入っていたボン・ジョヴィだったりして、制作するときもそれらがベースになる場合があるけれども、今までの人生の中ではいろいろなジャンルの音楽を聴いてきたんですね。
並木 いろいろ聴いてきました。大人になって、自分でインターネットなどで音楽を聴けるようになってからは日本の大御所というか、ザ・イエロー・モンキーさんとか斉藤和義さんとかも好きで聴いていました。
―― 以前の記事では、できるだけ流行をキャッチするために、音楽はジャンル問わず聴くとおっしゃっていましたが、それは趣味であり、仕事であり、ということでしょうか。
並木 K-POPとかも聴きます。
―― K-POPはダンスミュージックが多いと思うのですが、それらを聴いた上で、制作に生かされたりすることはありますか?
並木 アレンジも自分で少しやるので、アレンジの部分でK-POPは勉強になっています。同じメロディを何回も繰り返すところとかですね。
―― 曲を作られている中で、いき詰まったりすることはありますか?
並木 作ろうと思っても全然曲が作れない時があるのですが、そういう時は作らないです。一旦やめて、YouTubeを見たりと、違うことをして過ごします。何時間かたってから作るのか、明日に回すのか、とやった方がうまくいきます。難しくてできないものを無理やり完成させたくないので。
―― 編曲ってどうやるのでしょうか
並木 こういう雰囲気のギターがあって、こういうメロディのキーボードがあってと想像して、それを再現するんです。ドラムを作って、ギターを入れて、もう一本ギター入れて、と。多重録音のような感じです。
でもこれが1番時間がかかります。歌詞は思いついたら携帯にメモしたりしてだんだんたまっていきますし、メロディは歌詞見ながら鼻歌歌っていって、30分くらいででできるんです。そこからのアレンジが長いんです。
映画主題歌「花になる」について
―― 今回、映画「花になる」の主題歌をご担当されるそうですね。そのことについても質問させてください。映画の予告を拝見しましたが、ストレートで心に響く声が印象的でした。どのようなことを意識して楽曲制作されたのでしょうか。
並木 映画がゆったりとしたイメージの作品だったので、バラードでも良かったんですけど、熱い楽曲にしたいと思って、そういう気持ちで制作しました。ミディアムバラードのような感じです。
―― そうすると、制作の中で映画を意識して、こういう風にしたい、という思いだったと。
並木 そうですね。ちゃんとでき上がる編集前の作品を観て、そこで雰囲気を感じ取ったりとか、監督とこの歌詞でどうかと何回か話し合ってできた歌です。
―― 映画に合わせた部分もあるんですね。監督さんのほうから「こういう曲にして」というご提案があったのか、それとも並木さんの方から「こういう感じにしたい」と提案したのか、どちらなんでしょう?
並木 もともとメロディーはだいぶ前から自分の中にあったんです。なので、このメロディーを使おうと選んだ時に、曲としてはできていたんですけど、そこにはまだ違う歌詞が乗っていて。だから歌詞だけ変えようという話になって、監督と歌詞についてやりとりはしました。
―― それはどんなやりとりだったんですか?
並木 例えば恋の映画なので、恋をしている瞬間のところを書いてほしい、というような。
―― 恋愛中の時のような?
並木 好きだなって思っただけの段階です。
―― 恋愛前ということですか。
並木 まだ何も始まってないところを書いてほしいって言われていました。
―― 確かに映画もこれから恋が始まるというストーリーですよね。主題歌が決まった時はどんなお気持ちでしたか?
並木 いつも通りにレコーディングしているところに行ったら、「映画の主題歌があってさ」と言われたのですが、「おー!」みたいな感じじゃなかったんです。そうなんだ、みたいな(笑)。
―― 今回の制作で苦労された点はありますか?
並木 恋のはじまりっていうところですね。恋をテーマにしたら「好き」とか、よくある言葉が思いつくじゃないですか。でもどうしても「好き」を入れたくなくて、それが難しかったです。
―― 「好き」を入れたくないとうのはどういう意味で?
並木 告白していることになってしまうので、歌で。それは良くないなって思って。段階としてはもっと前の、気持ちが芽生えてドキドキっていう時なので。それを「好き」という単語を使わないで気持ちを表現するのが難しかったです。
―― この曲を作り終えてから心境の変化とか、楽曲制作への気持ちの変化とかはありますか?
並木 この曲は小さいころに作った曲で、それまではテンポが早い曲ばかり作っていたので、久しぶりにひっぱってきた時に「意外とバラードもいいのかもしれない、また作ってみようかな」と思いました。
―― 普段作っているロックな曲ではないということでのプレッシャーはなかったですか?
並木 そうですね、嬉しかったですし、映画のために歌詞を変えるというように、お題があって作るのは初めてだったので楽しかったです。
―― 大学にもご友人がたくさんいらっしゃると思いますが、主題歌を担当されるということで周りの反応はどうでしたか?
並木 私よりも友人の方がすごくびっくりしていて。温度差がすごかったです(笑)。
―― 最後に、明治大学を目指す人にメッセージをお願いします
並木 私が学んでいる文芸メディア専攻は、小説などの勉強が多いので、小説が好きな人や、文学作品をもっとスムーズに読みたい人、それに関わる仕事や、出版社で働きたいという人には向いている専攻だと思います。 古い小説などは、現代の言葉ではないものが多いので、それを読み解くのが一番難しかったですね。私は高校のときに古文を勉強してこなかったので、そのせいだとは思いますが(笑)。
並木瑠璃さん、ありがとうございました!
並木瑠璃さんの今後のLIVE予定
ライブタイトル | SUPERNOVA | 日程 | 2020年2月18日(火)18:30 OPEN 19:00 START |
場所 | 渋谷lamama |
映画『mellow』(メロウ)予告編
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