Meiji NOW 明治とつながる 今をつたえる。

資格取得体験記
2021.11.08

全盲のハンディキャップを乗り越え司法試験に合格!奥山茂さん(専門職大学院法務研究科〔法科大学院〕修了生)の資格取得体験記

試験・難関試験に合格した明大生を紹介する「資格取得体験記」。今回は、務研究科()修了生の奥山茂さんが、司法試験の合格体験を紹介してくれます! 奥山さんは全盲というハンディキャップを乗り越えて、見事司法試験に合格されました!
合格体験を紹介してくれた方奥山茂さん(専門職法務研究科〔法科大学院〕修了生)

2019年に明治大学専門職大学院法務研究科(法科大学院)に入学し、2021年修了・同年司法試験に合格しました。

合格した試験 司法試験

司法試験をした理由(法曹を志した理由)は?

私は8歳(小学2年生)の時に事故で失明し、全盲となりました。その頃は、まだ視覚障がい者が就職できる職種は少なく、また、社会も障がい者の能力を比較的低く評価する固定概念がありました。

また、現在においても障がい者は社会において弱い立場であることは周知の事実です。その弱い立場を少しでも改善できる職業につけたらと、中くらいの頃から思っていました。そこで私は、上記の社会的観念を変化させつつ、障がい者の立場を向上させる職業として弁護士が最適なのではないかと思い、司法試験の合格を目指すことにしました。

なお、現在では上記の社会的な固定概念は、随分改善したのではないかと思っています。

明治大学専門職大学院法務研究科(法科大学院)で学んで良かったことを教えてください。

明治大学を選択して最も良かったことの一つは、とても素晴らしい諸先生方から、詳細かつ熱心な指導を受けることができたことです。生粋のプロフェッショナルの方から直接熱心なご指導を受けられることは、本当に貴重な機会だったと思います。自分の疑問に対して直接諸先生方から回答や指導をいただけたことは、とても恵まれた環境だったと思います。

次に、少数精鋭のクラス分けになっていることです。学生の数が多ければ当然先生方の指導が行き届かない学生も出てきます。そのような状況が生じない明治大学法科大学院は、とても良い学習環境だと思います。

また、事務室をはじめとするスタッフの方々の、学生に対するバックアップ体制がしっかりしていることです。私は視覚障がい者なので、本を直接読むことはできません。パソコンに音声ソフトをインストールして、その音声ソフトで教科書を読み上げさせて勉強しています。事務室の皆さんは、視覚障がい者の私がそのような音声ソフトでもスムーズに勉強できるように、基本書などの教科書や先生方からのプリントなどを一つひとつ改良してくださいました。事務室の皆さんの細やかなバックアップ体制は、司法試験への勉強の大きな支えとなりました。

パソコンの音声ソフトで教科書を読み上げさせて勉強する様子

好きな科目とその理由を教えてください。

好きとはやや違いますが、私にとって「憲法」「行政法」「刑法」が、勉強しやすかったのは確かです。私は視力障がい者なので、条の数が多い科目は勉強するのに一苦労してしまいます。「行政法」は若干例外ですが、他の2科目は司法試験のための勉強として条文数が比較的少ないために、勉強しやすく取り組みやすかったと感じています。私がそうですから、一般の学生ならさらに勉強に取り組みやすいと思います。

苦手な部分はどのように取り組んで克服しましたか。

私は文章作成能力が乏しかったので、とにかく答案を作成し、それを先生に読んでもらい、ご指導いただけるを優先して履修しました。本当に私の最初の文章は、法的文章どころか通常の論文としてもその体を全くなさないような、相当質の低い文章でした。

当初は、先生のご指導に応えられる状況ではなかったのですが、「論文作成の指導を受けられるのは今しかない」と思い、たくさん答案を作成した記憶があります。苦手なものにたくさんトライして、たくさん失敗すれば、それだけ伸びると私は思っています。

集中力が切れた時の対処法や、モチベーション維持の方法を教えてください。

私は無理はしません。集中力が切れたら勉強はやめて、好きなことをします。お風呂に入ったり、アロマセラピーをしたり、寝たりします。正確にいうと、集中力が切れる前に勉強はやめます。

また、スケジュールは立てません。立てたところで守った実績がこれまでなかったからです。そのため、1日にどれくらいの科目をどの程度するかを大雑把に決めて、それを1日の内で勉強できればそれで良いと思っていました。そうすると、持続的に勉強ができたので、私はこれで良いと思っています。

将来どのような法曹になりたいと考えていますか。

特定の専門的事件を深く解決できるように尽力できる法曹も良いとは思いますが、いろいろな事件をその依頼者と一緒に考えて解決できるような、庶民的な弁護士が良いかと今は思っています。障がい者の地位向上は、私の役目の一つなので、こちらもしっかりと取り組んでいきたいと思っています。

法曹を目指す明大生に、アドバイスやメッセージをお願いします。

現在司法試験は、法科大学院を卒業することが大原則であり、諸事情により法科大学院に就学できない人のために司法試験の受験資格を与える「予備試験」が例外としてあります。ですが、この「予備試験」に合格し司法試験を合格することが、エリートとして高く評価されている現在の状態は、残念だと思っています。

私は、司法試験を目指す方には、できれば法科大学院に進まれて、司法試験を受験されることをお勧めします。例え2年間ないし3年間であっても、素晴らしい諸先生に出会うことができ、その先生にご指導いただける時間は、法科大学院に在籍している期間のみであり、司法試験合格後はほぼないと思うからです。

司法試験へのアドバイスとしては、とにかくしっかりと正確な知識と、それを表現できる文章力を身に付けてください。私は本当に文章を作成するのに苦労しました。知識は、まずは「条文」と「判例」だと思います。簡単なようでとても難しいことなので、ゆっくりと落ち着いて嫌気がささない程度に、しかし、しっかりと勉強してください。

※ページの内容や掲載者のプロフィールなどは、記事公開当時のものです
※記事中に掲載した写真は撮影時のみマスクを外すなどの配慮をしております

※ページの内容や掲載者のプロフィールなどは、記事公開当時のものです

この記事をシェア