こちらの記事は、『明治大学広報』第766号「明大スポーツ新聞部ズームアップ」からの転載になります。
伊山優樹
所属 | 体育会弓道部 |
学部 / 学年 | 政治経済学部 / 3年 |
出身高校 | 東北学院高等学校 |
静まり返った射場に1人残って弓を引く。自分の弦音と矢が的に当たる音が響く。団体戦で落(おち)を務める者の特権だ。今年度の全日本学生選手権(以下、インカレ)の男子団体でベスト8に終わってしまった明大だったが、内容は決して悪くないどころか、3試合全てで的中率9割という高水準を維持。その団体戦で最後に射る重要な役割が「落」である。
その落を務めたのが伊山。6月の全関東学生選手権でも落で弓を引き、優勝に貢献した。己の射型を追い求め続ける弓道家が多い中でも、人一倍試行錯誤を重ねてきた男だ。今でこそ美しい射型から高い的中率を生みだしているものの、昨年度の出場はシーズン終盤にあるリーグ戦のみ。フォームも現在とは違っていた。
一昨年度、伊山はまさにどん底を経験した。事故で右半身がまひし、現在でも後遺症が残っていると言う。「なんとかそんな体でもうまくやれているのかな」と明るく語ったが、その努力は並大抵のものではない。無理に元の射型に戻そうとするのではなく、ありのままの自分と向き合い工夫に工夫を重ねてたどり着いた。
「自分が一番頑張らないとなと思って」。驚異の復活劇を遂げた伊山の弓道にかける思いは熱い。9月から始まる長丁場のリーグ戦は、インカレで勝てなかった桜美林大など強豪がひしめく。「落の役割は外さないこと、勝負矢を決めること」。覚悟を決めて的を見据える男は、もう過去など無関係であるかのような頼もしい射でチームを引っ張る。
文・写真提供/明大スポーツ新聞部 西田舞衣子さん(法学部2年)
※ページの内容や掲載者のプロフィールなどは、『明治大学広報』第766号発行当時のものです。
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