
明治大学付属明治高等学校・明治中学校は、11月19日、同校鵜澤総明ホールにて芸術祭「能『船弁慶』」を開催した。演技を披露したのは、大槻文蔵氏(シテ方観世流、人間国宝)の芸養子大槻裕一氏、福王茂十郎氏(ワキ方福王流、文化功労者)の長男福王和幸氏、野村萬斎氏(狂言方和泉流)の長男野村裕基氏、演奏を担当する4人の囃子方ら総勢11人の能楽師。
まず大槻氏から謡や舞といった能を構成する要素、狂言との関係、歴史について、野村氏からはユーモアある演技を交えながら狂言の喜劇性について解説があった。囃子方による笛・小鼓・大鼓・太鼓の演奏もあり、生徒が手拍子を合わせて参加し、会場が一体となった。休憩を挟み、能「船弁慶」のあらすじの解説後、いよいよ後半の義経、弁慶一行らが平知盛の怨霊と懸命に戦うダイナミックな場面が上演された。
生徒からは、「今まで能を見たことがなかったが、事前説明のおかげで物語を理解できた。日本の伝統的な芸能に触れることができて良かった」(中3)や、「小道具をほぼ使わずとも、演者による謡と舞の調子、囃子の緩急から物語を想像しながら楽しめた。それらが調和して織り成す厳かな雰囲気に引かれた」(高3)といった声があり、中高問わず能の幽玄な世界に浸れた様子だった。
通常、能は能楽堂で披露されるが、今回は構内のホールに特別な能舞台を設置することで、遜色なく上演できたことは大きな収穫であったとともに、若い世代が日本の伝統芸能に触れ、親しみを持つこれ以上ない好機となった。感性を豊かにする芸術や文化の数々が受け継がれていくような本校独自の芸術祭を今後も企画していく。
