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2026.04.07

2026年度入学式 学長告辞

上野正雄学長

8903名の新入生の皆さん、明治大学への入学、おめでとうございます。

本日、この晴れやかな日に、皆さんを明治大学の新しい仲間として迎えることができますことを、心からうれしく思います。同時に、大学を代表する者として皆さんの輝かしい未来を預かる責任の重さを改めてかみ締めております。ここから始まる日々が、皆さんの人生にとってかけがえのない時間となることを願ってやみません。

また、今日まで慈しみ育ててこられたご家族、ご関係の皆さまにも深く敬意を表し、心よりお祝い申し上げます。皆さまが支え、励まし、時に背中を押してこられた若者は、今日から、明治大学の学生という新たな誇りを胸に、広大な学びの世界へと歩み出します。これからも、その成長を温かく見守っていただければ幸いです。

そして、ライブ配信を通じてこの瞬間を共有している皆さまとも、画面を通してではありますが、共にお祝いできることをうれしく思います。

さて、新入生の皆さん。今日は皆さんに、明治大学に入学するということの意味について、お伝えしたいと思います。

大学は、単に既成の知識を効率的に習得する場所ではありません。知を探究する教員、それを支える職員、そして学びの主体である学生が集い、互いに刺激し合いながら、知の最前線を切り拓いていく創造の共同体です。

皆さんは、専門知を深めると同時に、多様な他者との出会いと対話を通して、ものの見方そのものを磨き、自分自身の価値観を形作っていくことになります。他者との出会いによって皆さんの世界は外へと広がり、その経験は翻って、自分という存在をより深く内省し、理解することへとつながっていくはずです。思索と議論を重ねるという、大学における、こうしたプロセスこそが、皆さんを自立した個人へと成長させてくれるのです。

明治大学において、その指針となるものが、建学の精神「権利自由、独立自治」です。これは単なる標語ではありません。人はいかに生きるべきかを示す、極めて重い思想です。その根底にあるのは、人は誰もが固有の尊厳を持つ存在であり、自らの理性と判断によって生きる主体であるという考え方です。

自由とは、他者に依存して与えられるものではありません。好き勝手に振る舞うことでもありません。自分の頭で考え、自ら選び取り、その結果生じる責任を自ら引き受ける。その覚悟があって初めて成り立つものです。そして自治とは、その自由を他者と共に生きる社会の中で、互いに支え合いながら実現していくことを意味します。

他者の自由を尊重しながら自らの自由を生きる。そのような自立した個人の生き方の積み重ねの上にこそ、社会の健全な発展は築かれていくと明治大学は考えています。

その起点は、今から145年前にさかのぼります。まだ20代の若者であった3人の創立者が、この「権利自由、独立自治」の精神を掲げて明治大学の前身、明治法律学校を創設しました。自由も自治もいまだ霧の中にあった時代、彼らは人が自ら考え、自ら立つ社会を実現するという志を抱いて、この学び舎を築いたのです。それ以来、この精神は大学苦難の時代も乗り越えて、今日まで受け継がれ、61万人に及ぶ卒業生によって社会のさまざまな場で体現されてきました。そして今日、その志の襷は、明治大学の仲間となった皆さん一人一人にも託されました。

この精神を社会の中で生きたものとするために、私たちが向き合わなければならないことがあります。多様な他者の存在です。

社会は多様な個人によって構成されています。しかし、その多様性を単なる景色の違いとして眺めるのではなく、自分とは異なる価値観や背景、そして視点を持つ他者として尊重し、そこから他者と協働する契機を見いだそうとする姿勢を持って初めて、「権利自由、独立自治」の精神は実質的な意味を持ちます。

そもそも大学は、さまざまな文化や感性、価値観、知見を持つ人々が出会い、互いの違いを知り、その違いの中から新しい価値を創造していく場所です。

そして、明治大学には、日本各地はもとより約60の国と地域から、さまざまな背景を持つ学生、教員、職員が集まっています。教員の学問分野も多岐にわたり、関心や経験も一人一人異なります。その上で、授業での議論、さまざまな課外活動、地域社会との交流、さらには海外での学びなど、皆さんが多様な経験を積むための準備も整えています。

そうした明治大学において、皆さんは、自分とは異なる価値観や背景を持つ人々と出会うことになります。人は、違いに触れることで初めて、自分という存在の固有性に気付くことができるのです。同じ出来事を見ても、人によって見え方は異なります。同じ社会を見ていても、そこに映る風景は決して一つではありません。だからこそ、臆することなく多くの人と語り合ってください。あなたが見ている世界が、他の人の見ている世界と同じなのかどうかを、自分の五感で確かめてください。

その出会い、対話の一つ一つが、新しい視点を得る機会となるでしょう。そうして得られた気付きを自分の中に深く落とし込み、何が正しいのかを自らに問いただし、考え抜いてください。

もちろん、熟考の末に導き出された結論が、周囲の多数意見と異なることもあるでしょう。しかし、それを恐れる必要はありません。大学こそ、周囲に安易に流されず、自分の頭で考え抜く経験を積み重ねていく場なのです。

そして、十分に考え、悩み、議論し、その末に導き出した結論、それはあなたという人間の個性そのものであり、あなた自身の創造物です。誇りを持って大切にしてください。

多様な考えに真摯に耳を傾けながら、自分自身の判断を持つこと。他者を尊重しながら、自らの立場を築くこと。それこそが「権利自由、独立自治」を体現する道に他なりません。

大学生活は、新しい知に出会う時間であると同時に、新しい人と出会い、まだ見ぬ自分、新しい自分と出会う時間でもあります。対話を重ね、思索を深める中で、皆さんはやがて自らの言葉で世界を語り、未来を変えていく存在へと成長していくことでしょう。

明治大学の創立者たちが目指した未来、それは、自由に思考する個が育つところから始まります。

今日この場所にいる皆さん一人一人が、その未来の担い手なのです。

皆さんの未来への挑戦に期待して、新たに明治大学の一員となった皆さんに送る学長告辞とします。

入学、おめでとう。