明治大学法学部教授、大学史資料センター所長/図書館長 村上 一博
現在開催中の「女性法曹養成機関のパイオニア-明治大学法学部と女子部-」展から、「中田正子法服(鳥取市歴史博物館寄託資料・個人蔵)」
第25週は、次週(最終週)と合わせて、これまでの伏線をすべて回収する必要から、かなり窮屈な展開になっていたかと思います。また、脚本では丁寧に描かれながら、15分の枠に収まり切れず、演出で大きくカットされた箇所もかなりありました。法制審議会における少年法改正審議も、中途半端な展開で、なぜ年齢引き下げが断念されたのか、まったく説明不足であったというのが私の感想です。時間の制約があって、充分な考証ができなかったことが悔やまれます。
尊属殺事件の上告を受理するかどうか、最高裁長官の桂場と調査官の航一との遣り取りは、面白かったですね。調査官の役割について、私はまったく門外漢ですので、調査官を経験された方にお話を伺いました(もちろん、かなり脚色していますが)。ちなみに、長官室はNHK内のセットですが、最高裁の外観は法務省の赤レンガ庁舎(霞が関)が使用され、さらに廊下・階段でもロケが行われました(おそらく前例のない画期的な出来事です)。
桂場が、少年犯罪が急増して道徳心の欠如や家族崩壊が社会問題化している時期に冷静な議論ができるはずはないから、上告を受理して、尊属殺重罰規定の合憲違憲を判断するのは「時期尚早」だと答えたのに対して、航一は、それは、長官の「傲慢」であり「己の過信は独裁への一歩だ!」(非常に思い切った強烈な言葉ですね)と(若かりし航一が)吠えるシーンが用意されていたのですが、演出でカットされたのは残念でした。もっとも、興奮した航一が鼻血を出したことで、緊迫したシーンが一挙に和らいだのは、脚本の妙と言って良いでしょうね。緊迫した場面に、すかさず和らぎ(笑い)を入れるという、吉田マジックがここでも炸裂です。
今週の私のコメントは、ここまでにさせてください。美佐江問題にせよ、尊属殺問題にせよ、結末はすべて、最終週に持ち越しになっていますから。
<補足>
霞が関の「法曹会館」エントランスロビーで、9月26日(木)から10月10日(木)まで、『三淵嘉子裁判官とその時代展』が開催されます(開館時間など、詳細は同館のホームページをご覧ください)。今回の朝ドラにちなんで、今回限りの貴重な資料が見られるようです。私も見に行きます。