社会科学研究所は、11月9日、駿河台キャンパス・グローバルホールにて、第35回社会科学研究所公開シンポジウム「アメリカはどこへ向かうのか―2024年アメリカ大統領選挙を受けて」を開催した。本シンポジウムには、10代から80代まで幅広い年齢層の方々、約150人が参加した。
冒頭、所長の井田正道政治経済学部教授のあいさつに続き、第一部では3人の個別報告が行われた。第一報告者の海野素央政治経済学部教授は、トランプ氏の勝因とハリス氏の敗因について講演した。今回の勝敗を第一に分けたのは、トランプ氏の選挙戦略の転換であり、ヒスパニック系と黒人男性へのアプローチの変化だったことが、さまざまなデータをもとに指摘された。
第二報告者の杉田弘毅政治経済学部特任教授(共同通信客員論説委員)は、トランプ氏当選がアメリカと日本の外交に与える影響に焦点を当てて講演した。特に、ウクライナ戦争とガザ戦争について、国内外で 厭戦 気分が広がる中、停戦交渉が進む可能性が示された。
第三報告者の藤森浩樹商学研究科兼任講師(横浜国立大学経済学部非常勤講師)は、アメリカ経済の現状と、トランプ氏再選が日米の経済に与える影響について講演した。バイデン政権下ですでに保護主義的な経済政策へのコンセンサスが超党派で作られており、どちらが勝利してもその点では対中日に対する強硬的な姿勢は同じだったのではないかという知見が示された。
第二部では、3人の報告者にファシリテータの井田所長を加えた4人によるパネルディスカッションが行われた。会場からは、アメリカの人種主義や女性蔑視、大統領選の国民の熱狂の理由、あるいは金利や株価の経済動向などに関して質問が寄せられ、登壇者から丁寧な応答と活発な議論が行われた。大統領選の直後ということもあり、参加者の関心は非常に高く、会場は熱気を帯び、盛況のうちに閉会となった。(社会科学研究所)