電気味覚技術で減塩食の味わいを強める食器「エレキソルト スプーン」が発売 宮下研究室とキリンホールディングス(株)との共同研究成果の技術を搭載
数理・データサイエンス・AI
総合数理学部先端メディアサイエンス学科の宮下芳明研究室とキリンホールディングス(株)の共同研究により開発された「エレキソルト スプーン」が5月20日にキリンから発売され、同日、キリンによる発売発表会が中野セントラルパークサウスで行われた。発売発表会では宮下教授が登壇し、エレキソルト スプーンで使われている電気味覚の技術について説明した。

エレキソルト スプーンは、スプーンの先端から微弱な電流が食品に流れることで塩味やうま味などの食事の味わいを増強する食器型デバイス。減塩食を物足りないと思う人もエレキソルト スプーンを使うことで濃い味わいを感じることができる。
これは宮下研究室が長年研究してきた電気味覚の技術を活用したもので、宮下研究室とキリンは2019年から社会実装を目指し共同研究を進めてきた。宮下研究室が開発した電気味覚の技術は、独自の電流波形で食品中のイオンの動きをコントロールし、味わいを増強させる。キリンはこの技術で減塩食の継続性を向上する商品・サービスを実現できると考え、この技術を搭載したデバイスを開発した。2024年にはこの共同研究が内閣府「日本オープンイノベーション大賞」で日本学術会議会長賞を受賞している。(※1)

宮下研究室では2011年に微弱な電流を流すストロー・箸・フォークによって飲食物の味を変えて食体験の味覚を拡張するビジョンを掲げた論文を発表し、この論文が2023年にイグ・ノーベル賞(栄養学)を受賞している。(※2)
キリンはエレキソルト スプーンをヘルスサイエンス領域の新規事業として位置づける。今回は公式オンラインストアでの数量限定での販売だが、今後もスプーン以外の食器類への展開や減塩食メニューの開発提案を進め、企業や自治体とも連携しエレキソルトの活用シーンや市場の拡大を図る。
宮下研究室の味覚メディア研究
宮下研究室では、味覚を視聴覚と同じメディアと捉え、映像や音楽と同じように味覚を自由に再現できる「味覚メディア」の研究を行っている。
今回、社会実装された電気味覚技術の他にも、時間変化を再現する味のタイムマシン「Taste-Time Traveller:食品の時間を操る味覚AR装置」(※3)など、研究室の学生の自由な発想を具現化し社会実装に向けて発展させる研究を推進していく。
記事中の役職などは、原則として取材時のものです