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2024.08.26

スーダン共和国大臣が母校・明治大学で講演

講演をするジブリール氏

明治大学と駐日スーダン共和国大使館は7月11日、駿河台キャンパス・グローバルフロント多目的室で、スーダン共和国の財務・経済計画大臣ジブリール・イブラヒーム・ムハンマド・フェデール氏の講演会を開催し、本学学生や教職員、一般参加者など90人が参加した。

ジブリール氏は明治大学大学院政治経済学研究科に 入学し、1983年に経済学修士、1987年に経済学博士の学位を取得している。本講演会はジブリール氏の来日に合わせ、母校である明治大学からスーダンの現状を伝えることを目的に開催され、進行は元・在南スーダン日本国大使館特命全権大使の岡田誠司経営企画担当常勤理事が務めた。

進行を務めた岡田理事

第一部では「The Current Crisis and Prospect for Rehabilitation in Sudan(スーダンにおける現在の危機と復興の見通し)」と題し、ジブリール氏による講演が行われた。

第二部では、まず、現地で支援活動を展開する特定非営利活動法人ロシナンテス理事長の川原尚行氏のビデオメッセージを放映。その後に、ジブリール氏と岡田理事に加え、独立行政法人国際協力機構(JICA)国際協力専門員の土肥優子氏、国際日本学部の鵜戸聡准教授が登壇して「紛争復興と支援活動」をテーマにパネルディスカッションが行われ、川原氏と土肥氏からそれぞれ現地で行っている支援活動の紹介がされた。

講演会の最後に上野正雄学長から「スーダンの現状や復興支援活動への理解が深まること、また、この講演が国際社会の平和と共生のために何が必要になるか考える機会になることを切に願う」とあいさつがあり閉会となった。

ジブリール氏の講演「スーダンにおける現在の危機と復興の見通し」概要

約40年ぶりに明治大学に戻って来られたことを大変うれしく思います。学生時代、特に白石四郎先生(元政治経済学部教授・故人)には大変お世話になりました。彼の魂が安らかでありますように。7年間の日本滞在中、多くの方々に支えられました。心から感謝申し上げます。

私は日本を離れた後、サウジアラビアの大学で5年間教鞭を執り、明治大学で学んだ経済学やマーケティングなどの知識を学生たちに伝えました。その後スーダンに戻り、航空会社を立ち上げ、10年以上にわたり航空と貨物輸送のビジネスに従事しました。しかし、政治的な混乱により、20年もの間、内戦に巻き込まれることになりました。

2022年12月5日 に和平合意が締結され、私は国の財務・経済計画を担当する職に就きました。以来、友好国や国際金融機関と協力して債務問題に取り組んでいます。

そうした中、2023年3月に RSF(Rapid Support Force:スーダン共和国の準軍事組織)がスーダン国軍に反旗を翻し、4月15日に武力衝突が発生しました。

国は再び壊滅的な状況に陥りました。国の収入の約80%が一夜にして失われ、1000万人以上が家を失い、200万人が隣国に避難しています。国内に残った避難民は、地域社会の限られた資源によって支えられています。

私は、限られた資源の中で互いを支え合うスーダンの人々に誇りを感じます。日本でも支え合いの精神はあることでしょう。こうした精神は人間の本質なのだと思います。

経済は非常に困難な状況にあります。生産が停止し、治安の悪化で貿易も停滞しています。資本の国外流出や外国為替の不足で、通貨価値が急落し、インフレ率も約200%近くに達しました。銀行も正常化には数ヶ月を要します。開発プロジェクトも停止し、公務員の給与を60%に削減するなどの緊縮策を講じています。

戦争からの復興は、社会的、経済的、身体的、経済的影響が複雑に絡み合った多面的なプロセスです。私は財務・経済計画大臣として次のような戦略を立てています。

まず、人材育成に重点を置き、公共事業や復興活動を通じて雇用を創出しながら、教育や職業訓練に投資するとともに、個人がビジネスを始めることを支援するための少額融資の仕組みを整備します。並行して、道路、橋、鉄道、港湾、空港などのインフラを整備します。日本企業にも投資を呼びかけ、新しいスーダンの建設に協力を求めていきます。

復興を達成するためには、政治による確固とした主導と調整が必要ですが、国際社会からの理解と具体的な援助が必要です。

※ジブリール氏を含む各講演者の発言等は、各人の意見・考えに基づくものであり、明治大学の見解を示すものではありません
特定非営利活動法人ロシナンテス理事長の川原尚行氏のビデオメッセージの様子
独立行政法人国際協力機構(JICA)国際協力専門員の土肥優子氏
左から鵜戸准教授、岡田理事、ジブリール氏、上野学長。一番右が土肥氏