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2025.10.01

星の死に際に起こる「破壊的核燃焼」を解明――東大・京大との共同研究で│理工学部

理工学部
超新星残骸「カシオペア座A」のX線観測

理工学部物理学科の佐藤寿紀専任講師と佐藤寿紀研究室(宇宙物理実験研究室)の久保池結さん(理工学研究科物理学専攻 博士前期課程1年)は、東京大学大学院理学系研究科、京都大学大学院理学研究科、同大学基礎物理学研究所らとの共同研究で、太陽の8倍以上の質量を持つ大質量星が「死に際」に起こす激しい天体現象を世界で初めて明らかにした。

大質量星の寿命は数百万年から数千万年程度とされるが、その最期の数カ月から数時間の間に、恒星内部は劇的な進化を遂げることが知られている。しかし、進化の最終段階における恒星内部は天文学における未観測領域であり、その観測的検証が難しかった。

研究グループは、大質量星の最期に起こる超新星爆発から300年以上が経過した「超新星残骸」に着目。超新星残骸「カシオペア座A」をX線で観測し、元素の分布を詳しく解析した。近年の理論研究で、超新星爆発直前の星の内部では、激しい核燃焼の対流が生じることで、元素が層のように分布する「玉ねぎ構造」が壊れ、元素の不均一な混合が広がると予想されていたが、今回の観測でその証拠を初めて発見した。

今回の発見は、宇宙物理学の超難問として、世界各国のスーパーコンピューターを用いて進められている超新星爆発のメカニズム解明において、重要なピースとなる可能性がある。この研究成果は、9月2日に国際学術誌『The Astrophysical Journal』に掲載された。

死に際の大質量星は内部の「玉ねぎ構造」が破壊される