
7月18日、駿河台キャンパス・グローバルフロントで、政治経済学部倉地真太郎ゼミナールがNO YOUTH NO JAPANとの共催で公開セミナー「デンマークのイノベーティブな社会 ~若者団体代表と研究者が語る~」を開催した。グリーン経済、社会保障、ジェンダーの分野において先進的でイノベーティブな取り組みを行っているデンマーク社会の「今」を知るため、若者団体の代表と北欧・デンマークをフィールドとする研究者が議論を交わした。
倉地准教授の開会あいさつの後、NO YOUTH NO JAPAN代表の能條桃子氏によるプレゼンテーションが行われ、団体の概要紹介と活動経緯について、自身のデンマーク留学の実体験を交えて紹介があった。能條氏は留学中、デンマークにおける若者の政治への関心の高さや女性政治家の多さを実感し、帰国後にNO YOUTH NO JAPANを立ち上げた。現在は、若者の政治参加の促進や政治における男女平等の推進に取り組んでいる。
続いて、デンマーク国内で注目を集める左派連合青年部元代表のFrederik Dahler(フレデリック・ダーラー)氏による基調講演が行われた。講演の内容は、学生時代からの活動、デンマークの政治・政党、福祉国家とイノベーションの関係、メンタルヘルス支援の重要性、学生への給付型奨学金やギャップイヤーといった若者支援の重要性など、多岐にわたった。フレデリック氏と年代の近い学生の多くが、彼の講演に刺激を受けている様子が見られた。
セミナー後半では、デンマークの社会保障を専門とする菅沼隆氏(立教大学)と北欧のジェンダー・社会保障を専門とする浅井亜希氏(東海大学)がコメンテーターとして登壇し、日本とデンマークの両国が直面する課題と今後の方向性について議論を行った。
菅沼氏は、日本での「新しい資本主義」との比較の視点からデンマークのイノベーティブな福祉国家の特徴を説明し、「イノベーション」と「イノベーティブ」の概念の違い、若者の活躍と社会変革の重要性などを説明。浅井氏からは、ジェンダー平等の現状について、デンマークのジェンダーギャップ指数ランキングが他の北欧諸国よりも高くない理由などが述べられた。
その後、能條氏、フレデリック氏、菅沼氏、浅井氏によるパネルディスカッションが行われた。4氏は日本の現状と比較しながら、デンマークにおけるフェミニズムの捉え方の変遷、排外主義の動向、若者の生き方と社会の期待の違いなどについて議論を交わした。最後に、政治への無関心層への対応、被選挙権の年齢引き下げといった課題に対して、デンマークや他国の事例から学ぶことの重要性が共有された。
セミナーに参加した倉地ゼミの臼澤桜子さん(4年)は「教育や福祉が充実していて若者や女性の政治参加が積極的なデンマークでも、他の北欧諸国に比べればジェンダーギャップ指数が低いというのが驚きでした。われわれ学生と年齢の近いお二人のご活躍を拝見し、自分も当事者意識を持って政治や社会問題に向き合いたいと思いました」と述べた。
今後も、北欧社会の「今」を知る研究・教育イベントを開催していく。(政治経済学部事務室)
