
明治大学の生涯学習機関リバティアカデミーは6月15日、駿河台キャンパス・リバティホールでオープン講座(無料の特別企画)として「大友克洋×松森正トークイベント」を開催した。
このイベントは、米沢嘉博記念図書館で3月7日から6月23日まで開催されていた「大友克洋を育てたマンガたち展」の関連企画として実施されたもの。大友氏が少年期に影響を受けた「貸本」の文化と、貸本文化が現在のマンガやアニメーションに与えた影響を再評価することを目的として行われた。
貸本は、1960年代まで一般的だった書籍の貸し出し文化。街中にある「貸本屋」で、子どもたちが楽しめるよう、廉価でマンガや雑誌などを貸し出しており、貸本屋のみで流通する書籍もあった。月刊・週刊少年誌の隆盛とともに徐々に衰退し、当時貸し出されていた書籍があまり現存していないため、これまで貸本に焦点が当てられることは少なかった。
イベント冒頭のあいさつでは国際日本学部の宮本大人教授が「マンガ・アニメーションの世界では“大友以前・大友以後”という言葉がある。大友氏は、自身がマンガ表現への造詣が深かったからこそ“以後”を生み出せた。今回は、大友氏が貸本文化と月刊・週刊少年誌の両方に詳しい松森氏にお話を伺いたいとのことで実現した」とトークイベント実現の経緯を明かした。
対談では、園田光慶氏の「アイアン・マッスル」など、両氏が大きな影響を受けた貸本作品の話題を皮切りに、多方面に話題が展開。貸本作品の画期的なアングルや画法、貸本文化が勢いを失った60年代後半には貸本作品の作家が多方面に分岐し多様な文化が生まれていったことなど、両氏の細部にわたる分析に参加者は熱心に聞き入った。
トークイベントは事前申込制で、当初170人だった定員を450人に増やしてもすぐに満席となった。当日は、両氏のファンをはじめ、編集者、ライター、デザイナーの他、関連する研究者など文化の創作・発信・批評に携わる関係者が多数参加した。
イベント後のアンケートでは、貸本文化に興味を示す声やイベントの続編を熱望する声が多数寄せられ、本対談の高い満足度がうかがえた。
講師プロフィール
大友 克洋(おおとも・かつひろ)|マンガ家・映画監督
代表作に「童夢」「AKIRA」など。自ら監督・脚本等を担当し制作したアニメーション映画「AKIRA」は世界中で高く評価され、現在のマンガ・アニメーションの表現に多大な影響を与えている。2012年米アイズナー賞にてコミックの殿堂入り、2013年紫綬褒章受章、2015年仏アングレーム国際漫画祭グランプリ受賞など受賞・受章歴多数。
松森 正(まつもり・ただし)|マンガ家
代表作に「木曜日のリカ」「拳神 海渡勇次郎伝」「湯けむりスナイパー」など。画力、構成力の高さに定評がある。大友克洋原作の作品に「僕等は愉快な訪問者」がある。