第660回 明大スポーツ新聞部 ズームアップ
文・写真/小松 錦葵(経営学部2年)
2人乗りの自転車で速さを競う、大学限定のトラック種目「タンデム・スプリント」で快進撃を見せる吉田・本田ペア。吉田が前で舵を取るパイロット、本田はストーカーとして後ろでエンジンを担う。2023年の全日本大学対抗選手権(インカレ)で初タッグを組み3位の成績を残すと、24年全日本学生選手権では優勝、同年のインカレと今年度の全日本学生選手権では準優勝と、毎レース、表彰台に上がっている。そんな名コンビが今年度のインカレでラストレースを迎える。
吉田・本田ペアの誕生は奇跡に等しい。福島県で生まれ、小学生から陸上競技に励んでいた吉田は「地元に自転車競技が強い高校があり、親に勧められたのがきっかけ」と高校から自転車競技に転向した。吉田より一つ後輩の本田も「1人で自転車部の体験に行くのが寂しいと言う友人に誘われて行ったら、入らなければいけない雰囲気になった(笑)」と愛媛県で高校からこの世界に飛び込んだ。現在、彼らにとって自転車は「人生の相棒」(吉田)「自分を語る上でなくてはならない」(本田)とサイクリストとしての充実感をにじませている。
2人が明大自転車部でペアを組み始めたのは吉田が2年次、本田が1年次のインカレ2カ月前。ケガの影響で1人種目への出場が難しかった本田が、当時の主将から声を掛けられ、タンデム・スプリント出場経験のある吉田とのペアが結成された。結果は2カ月の練習で3位入賞。それぞれ「相性が良かった」(吉田)「天職だと思った」(本田)と語り、大学限定の種目であることが悔しいと思うほどに息の合ったレースで、次々と観客を魅了した。
今年度、ペア結成3年目にしてラストレースとなる2人の強さのゆえんは出走前、欠かさずに行う固い握手。「お互いを勝たせてやりたい。一緒に競技ができる感謝の気持ち」(吉田)をそれぞれの手に込め合い、レースに挑んでいる。最後に掲げた2人の目標は優勝だけでなく、学連新記録を残してその名を歴史に刻むこと。唯一無二の輝きを放つ2人がペダルを踏み込む。
(タイトルの掲載順に、よしだ・ゆいと 政治経済学部4年 学校法人石川高校 174cm・78kg、ほんだ・とき 経営学部3年 松山工業高校 186cm・81kg)
明治大学広報第801号(2025年9月1日発行)掲載