大胡さんおすすめの本
『武士道シックスティーン』誉田哲也 著
ジャンルはスポーツ小説で、青春を剣道にかける女子2人のエンターテインメント作品です。
剣道一筋で、自分にも他人にも厳しい性格の香織と、勝利にこだわらず、お気楽マイペースな早苗の2人の視点で物語が進んでいきます。中学最後の大会で無名選手である早苗に負けてしまった香織が、リベンジを果たすべく早苗と同じ高校に進学して……。そこから彼女たちの、3年間の熱い青春が始まっていきます。
ただただ純粋に面白く、ページをめくる手が止まりません。この小説は、香織と早苗の2人の一人称視点を交互に替えて物語を進めていくという形式を取っていて、その時々の主人公2人の「現在」が丁寧に描写されています。この小説が面白い理由はいろいろありますが、一番の理由は「リアルタイム感」だと思います。
また、彼女たちが非常に魅力的なキャラクターであるが故に、私たち読者はだんだんと彼女たちに感情移入していきます。その時間がとても楽しいです。そして感情移入していった先にある、白熱した試合のシーンには引き込まれること間違いなしです。
全4巻のシリーズものですが、この巻だけでも充分楽しめます。ぜひ読んでみてください。
自分の部屋で静かに読みたい本
『余命10年』小坂流加 著
ジャンルは恋愛小説で、「余命10年」を宣告された主人公のその先の10年間を描いた作品です。
「周りを追い詰めないために、笑顔を絶やすことはできない。何かを始めれば、それはきっと途中であきらめなければならない」―主人公・茉莉はこうした状況に置かれながらも、優しくて残酷な日々をあきらめと共に過ごしていました。そんな中、かつての同級生・和人と再会して……。物語の最後、彼女は誰よりも優しい決断を下します。
読んでいて、すっと涙が流れます。号泣するようなたぐいの小説ではなく、なぜだか分からないけど、いつの間にか目が潤んでしまっているような小説です。
ページをめくるたびに茉莉の命のカウントダウンが進む中で、私はずっと「余命10年」ということを考えていました。余命1年よりは長いでしょう。余命5年よりも長いでしょう。しかし、その間に自分は死ぬ覚悟を決められるのかというと、正直自信がありません。むしろ、絶対に死ぬと分かっているのに、まだ10年も時間が残っているのですから、取り乱してしまう自分の方がまだ想像がつきます。だからこそ、茉莉が生きた10年間は、「ああ、こういう生き方があるのだな」と、私に静かな感動を与えてくれました。自分の部屋で静かに、いろいろと考えながら読んでほしい本です。
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