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2025.03.25

上白石萌音さん「明治大学で学びと仕事を両立させた8年間―ワクワクしながら最後の最後まで駆け抜けた」

国際日本学部受験国際交流卒業生インタビューエンタメMeijing

映画『夜明けのすべて』、NHKの連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』、舞台『千と千尋の神隠し』など数多くの作品で主演を務める上白石萌音さん。「語学をより深く学びたい!」という強い思いのもと一般入試 を経て明治大学に入学し、国際日本学部で、「語学だけでなく、日本文化の魅力や、多角的に物事を見ることの大切さを学んだ」と話します。そんな上白石さんに、学生生活や国際日本学部の魅力、大学での学びとお仕事のつながりなどについて、たっぷりと語っていただきました。

プロフィール俳優・歌手
上白石萌音(かみしらいし もね)さん(2024年国際日本学部卒業)
上白石萌音さんMeijing上白石さんのMeijingは、「未知の物事にワクワクする」を意味する “Wonder” ing

1998年鹿児島県生まれ。2024年明治大学国際日本学部卒業。
2011年のデビュー以降、映画『舞妓はレディ』『君の名は。』『ちはやふる』『羊と鋼の森』『夜明けのすべて』『35年目のラブレター』、ドラマ『ホクサイと飯さえあれば』『恋はつづくよどこまでも』『オー!マイ・ボス!恋は別冊で』『カムカムエヴリバディ』『法廷のドラゴン』、舞台『ナイツ・テイル–騎士物語−』『ダディ・ロング・レッグズ』『ジェーン・エア』『千と千尋の神隠し』などに出演。
エッセイ『いろいろ』や「翻訳書簡『赤毛のアン』をめぐる言葉の旅」を執筆するほか、2016年からは歌手としても活動し、多くの楽曲をリリース。武道館ライブや全国を巡る“yattokosa”Tourなども行っている。

「語学をより深く学びたい」と考え、明治大学国際日本学部に進学

――明治大学の国際日本学部を選んだ理由について教えてください。

上白石萌音さん(以下:上白石) 「大学に進学したら、英語を含む語学をさらにしっかりと勉強したい」と考えていたため、まずは英語に関するカリキュラムが充実している大学や学部を探していきました。その中で明治大学の国際日本学部に出会い、公開されているシラバスや授業内容を見て、「ここだ」と思ったんです。

英語だけでなく第二外国語もしっかり学ぶことができ、「政治学」や「経済学」といった硬めの学問から、「ファッション文化史」「映画史概論」「舞台芸術論」、ポップカルチャーとしては「漫画文化論」「アニメーション文化論」まで、本当に多様な科目がそろっていて……。履修したい科目ばかりだったので、「4年間、絶対に飽きることがないだろうな」とそのバリエーションの豊かさに引かれ、明治大学の国際日本学部を目指すことに決めました。

――きっかけは「語学を深めたい」という気持ちだったとのことですが、なぜ語学を学びたいと思ったのでしょうか?

上白石 子どもの頃にメキシコに住んでいたことがあり、その時に、外国語を学ぶという面白さに気付きました。私がスペイン語であいさつしたり歌ったりするだけで、現地の方がすごく喜んでくださって。こういう経験を何度もしたことで、「相手の言葉を理解して少し覚えるだけで、こんなにも人とつながれるんだ。コミュニケーションが楽しくなるんだ」ということを実感しました。

相手の国の言葉を話すということは、「あなたのことをもっと知りたい」「あなたと関わりたい」という気持ちの表れでもあると思うんです。ですから、人とつながるためのツール、世界を広げるための手段として、「もっともっと外国語を覚えたい。学びたいな」と思うようになりました。

このようなきっかけで、帰国してから本格的に英語の勉強を始めたのですが、今度は「言語って学べば学ぶほどに発見があるんだな」ということに気が付いて、どんどん面白くなっていきました。「数字を表現するだけでもこれだけの言い方があるんだ」とか、「同じ英語でも国によってこんなに表現が違うんだ」 とか……。そもそも世界中に、全く異なる言語が、こんなにたくさんあるっていうこと自体が興味深いですよね。突き詰めるとバベルの塔のようなところに立ち返っていくと思うのですが、すごく壮大で、なにかロマンのようなものを感じます。

人とつながれる楽しさと学問としての深さや面白さ。この二つが、良い意味で混在しているところに、語学の、大きな魅力を感じました。

上白石萌音さん

まるで魔法のように分かりやすくて面白い、引き込まれる授業

――実際に明治大学に入学してみていかかでしたか? まずは授業について教えてください。

上白石 楽しくて楽しくて仕方がなかったです。どの授業も本当に面白くて、いつも、「もっと受けたい」「もっと聞きたい」という気持ちでした。

中でもよく覚えているのが、鈴木賢志 国際日本学部長の「社会システム論」や「ヨーロッパ政治経済論」の授業です。鈴木先生がお話されると、EUの複雑な関係についての硬めの内容でも、驚くほど人間くさい物語になって頭と心にスッと入って理解できるんです。例えば、「A国とB国との関係が悪化した」というような内容の場合、「A国とB国は、お互いにこういうところが気に入らなくて仲が悪くなっちゃったんだよね」「ここの内容がこの人のポリシーに合わなくて、へそを曲げちゃったんだ」というように、軽やかにかみ砕いてお話してくださるんです。

高校の時には、あまり理解できていなかった世界の構図や関係が、先生の手にかかると、とても分かりやすく、親しみやすくなるんですよね。まるで魔法のようにするすると理解できるようになるので、いつも「もっと聞きたい!」「終わってほしくない!」と思っていました。先生の授業のおかげで、一国の首相、偉人、名のある政治家たちも私たちと同じ人間なんだということが感情で理解できるようになって、歴史や学問を、彩り豊かな物語として深く頭にとどめておけるようになったと感じています。

――他に、印象に残っている授業はありますか? 好きな授業や学びについて教えてください。

上白石 ありすぎてどこからお話していいのか分からないぐらいです。歌舞伎や能楽について学ぶ「伝統芸能論」も楽しかったですし、「舞台芸術論」では俳優の仕事に直結するような知識を学ぶことができました。「世界のなかのアフリカ」でアフリカへの支援について学んだ時に、「長い目で見たときに本当に良い支援とはどのようなものなのか」を多角的な視点で考えられたことも印象に残っていますし、「人類学」も「映画史概論」も、とにかく全ての授業がずっとずっと面白かったです。

何よりどの授業も、先生方の「熱」がすごかったです。どの先生からも「扱っているテーマが大好きだ!」という強い思いが伝わってきて、いつも先生方がとても楽しそうに授業をしていらっしゃいました。その様子につられるようにして、私たち学生も、どんどん引き込まれていくという感じでしたね。

――大学での学びを通して、どのような力が身に付いたと思いますか?

上白石 あらゆる角度から物事を見るという視点や姿勢が身に付きました。国際日本学部の学びは、「世界に出るには、まず日本のことを知ろう」「日本と世界をつなごう」というコンセプトをベースにして考えられています。ですから、外に目を向ける学びだけでなく、中に目を向けるような学びが、とても充実しているんですよね。外国から見た日本、日本から見た外国、そんなことが意識できるようなカリキュラムになっているので、学びを深めるうちに自然と「複数のカメラを通して、いろいろなアングルで一つのものを見る」という多角的な視点を身に付けることができました。

また、英語が話せることが最終目標ではなく、その先の、「英語を使って何をするか」「英語を使いこなした上で、どう世界とつながるか」といった部分まで徹底的に学べたことが、今、とても大きな力になっています。語学は、一つのツールとして学びのゴールではなく、いろいろと結び付けて卒業後も可能性が無数に広がる。単なる知識ではなく、ものの見方や考え方を身に付けることができ、「一生を支える思考の軸」となるような教えをたくさんいただきました。

上白石萌音さん

興味関心の近い友人や温かい先生方に支えられた大学生活

――友人との関係や学生生活について教えてください。

上白石 必修科目が多いこともあって、1年次は、ほぼ毎日友人と顔を合わせていました。興味関心が近いので話が合う仲間が多く、「次はこの授業を一緒に取ろう」と話したり、ノートを見せ合ったり。私が仕事で授業を休みがちになってしまった時は、昼休みに友人が学食に集まってくれて、課題を手伝ってくれたこともありました。

みんな積極的で明るくて、本当に良い友人ばかり。卒業後も時々連絡を取り合っているんですよ。海外で働いている友人や日本語教師になった仲間など、それぞれが国際日本学部での学びを生かして活躍しているので、その頑張る姿が、今、私の励みになっています。

それから、留学生が多いところも国際日本学部の特徴の一つです。特に、中国や韓国といったアジア圏の留学生が多く、皆さん、日本人の学生と同じように日本語で授業を受け、難しいレポートを日本語で書いているんですよね。彼ら、彼女たちの頑張りを見ていて、「私ももっと頑張らなくては。まだまだできるはずだ」と思っていました。一緒に学ぶ仲間たちから、いつも力をもらっていたように思います。

――先生方についてはいかがでしょうか? 印象や関係性について教えてください。

上白石 鈴木先生をはじめ多くの先生方に、とても温かく指導していただきました。なかなか卒業できずに先生方にはかなりご心配をおかけしていたと思うのですが、 いつも親身になって相談に乗ってくださり、仕事との両立を応援してくださって……。卒業が決まった時は、いろいろな先生に喜んでいただきました。

先にもお話した通り、国際日本学部の先生は、ご自身が取り扱うテーマが大好きな、熱く、面白い方ばかり。それでいて優しく、温かいんですよね。いち人間として目標になるような、すてきな先生にたくさん出会うことができたので、この出会いも大学で得た財産だと感じています。

上白石萌音さん

映画『夜明けのすべて』は、まさに学業とともにあった作品だった

――在学中に出演した作品で、最も印象に残っているものについて教えてください

上白石 『夜明けのすべて』という映画が印象に残っています。在学中の最後の方のタイミングで主演として出演したので、それはもう学業との両立が大変でした。「卒業するためにこの授業だけは取らないといけない」という時は撮影を止めていただいて、パッと待機用の車に走り、そこで1コマ100分のオンライン授業を受けて、終わったら現場に戻るということもあったので、すごく思い出深い作品です。皆さんに協力していただきながら必死で走り抜けた、まさに学業とともにあった映画でした。

上白石萌音さん

――仕事と学業を両立させるために、何か取り組んだことがあれば教えてください

上白石 1年間の授業を選択する前にマネージャーと相談して、仕事を入れる日、入れない日を整理しました。仕事と学業の割合は、だいたい半々程度でしょうか。大学に行って対面で学ぶ授業を週3日で6科目、それ以外はオンラインで受講して、仕事以外の時間はずっと勉強していたように思います。課題やレポートもたくさんあったので、忘れないように締め切りを付箋に書いて、とにかく全て目につくところに貼って、自分を追い込むようなこともしていたんですよ。そのような状況だったので睡眠時間を削って勉強しなければならないことも多かったのですが、それでもとても楽しかったことを覚えています。

繰り返しになってしまいますが、そのぐらい、本当に授業が面白かったんですよね。眠い目をこすりながらオンデマンドの授業を受けるような日もあったのですが、一気に目が覚めるぐらい、授業が気付きに満ちていて刺激的で。「なるほど、こういうことだったのか!」「この言葉は忘れたくないな」などと思いながら、最後の最後までワクワクしながら授業を受けることができました。純粋に学びがとても楽しかったことがモチベーションとなり、卒業する最後まで頑張り続けることができたと思います。

映画『夜明けのすべて』で「第48回 日本アカデミー賞」優秀主演女優賞を受賞

2024年2月9日に公開された、映画『夜明けのすべて』で主演した上白石萌音さんは、「第48回 日本アカデミー賞」優秀主演女優賞を受賞されました。

映画『夜明けのすべて』ポスタービジュアル『夜明けのすべて』 バンダイナムコフィルムワークス=アスミック・エース ©瀬尾まいこ/2024「夜明けのすべて」製作委員会
上白石萌音さん(アカデミー賞授賞式)第48回日本アカデミー賞授賞式©日本アカデミー賞協会

国際日本学部での多角的な学びが生きた、舞台『千と千尋の神隠し』

――在学最終年度には、舞台『千と千尋の神隠し』に出演され、翌年2024年の卒業後にはロンドン公演にも出演し、大きな話題となりました。こちらについてはいかがでしたか?

上白石 『千と千尋の神隠し』に出演した時は、国際日本学部での学びが大いに生きました。演出家がイギリスの方で、しかもクリエイティブチームにアメリカをはじめとするさまざまな国の方がいらっしゃったので、稽古場に常に英語が飛び交っているような状況だったんですよね。

そういう時にも、通訳を待たず、演出家が言っていることをパッと理解することができました。理解できるだけでなく、元のニュアンスや意図のようなものもつかむことができたので、「これはひとえに国際日本学部で英語力を磨いたおかげだ」と思ったことを覚えています。本当に国際日本学部のカリキュラムは、全方位完璧で「聞く、話す、読む、書く」が全部できるようになるので、英語で困ることはありませんでした。

舞台『千と千尋の神隠し』ロンドン公演より 舞台『千と千尋の神隠し』ロンドン公演より(撮影:Johan Persson)

その後、イギリスで公演をすることになったわけですが、この時は言葉というよりも文化や価値観の違いでいろいろと混乱がありました。日本人が思うように時間通りに物事が進まなかったり、大事だと考える作業が、日本スタッフと現地のスタッフで異なっていたり……。ただ、私自身はおおらかな気持ちで過ごせたように思います。幼い頃に海外で暮らしていたということもありますが、何より国際日本学部で文化の違いや多様性について学んでいたので、「人の価値観はそもそも全く違うもの」「自分の当たり前は相手には通用しない」という意識が強くあったんですよね。

舞台『千と千尋の神隠し』ロンドン公演より (撮影:Johan Persson)舞台『千と千尋の神隠し』ロンドン公演より(撮影:Johan Persson)

何か問題が発生しても全くカリカリせず、「そりゃそうだよね」と。いろいろな視点で考え、多様な選択肢を持つということが身にしみ付いていたので、「そりゃ分からないよね」「さあここからどうしようか」と前向きに受け入れることができました。

むしろ、こういう行き違いや価値観のズレのようなものが発生した時は、ワクワクしていたように思います。違いがあるということ自体が面白いし、「なぜそう思うんだろう」と考えると余計に知りたくなる。違いや多様性が、私にとってはエネルギーになるんです。ですから、イギリスにいた時は、周囲から見ると、私はずっとイキイキしていたんじゃないかと思います(笑)。

舞台『千と千尋の神隠し』ロンドン公演より (撮影:Johan Persson)舞台『千と千尋の神隠し』ロンドン公演より(撮影:Johan Persson)

将来の夢は、イギリスに留学し、英語力を磨きながら、歌や演技、ダンスの勉強をすること

――今後の目標について教えてください。

上白石 留学に行くことが目標です。本当は在学中に行きたかったのですが、仕事の都合もあって行けなくなってしまいました。でも、いくつになっても留学には行けますから。大学を卒業し、さまざまなことを学んでから行く留学というのも、また面白そうだなと思っています。いつか時間を作って、じっくりと、海外で暮らしながら勉強したいですね。

ちなみに今は、イギリスに留学したいなと思っています。『千と千尋の神隠し』のロンドン公演で、短期間ですが滞在し、すごく良い国だなと思いました。さまざまな国の人がいるので、すごく自由だし、とても心地よく過ごすことができました。公園や図書館、劇場もたくさんあり、文化的な刺激にも満ちあふれているところにも引かれました。こうした環境で、もっともっと語学の学びを深め、歌や演技、ダンスなどの技術を磨くことができたら、これほど幸せなことはありません。

ぜひ、またイギリスに行って、ロンドンから電車で3時間ぐらいのところにあるテイクアウト専門のお店で、おいしいフィッシュアンドチップスを食べたいですね。『千と千尋の神隠し』の時に連れて行ってもらって感動したのですが、あの味を、改めて留学という環境でゆっくりと味わいたいです!

上白石萌音さん

高校生の皆さんへのメッセージ

――上白石さんは、一般入試で受験されていますが、高校生の皆さんへ向けて受験勉強の秘訣なども含めてメッセージをお願いします。

上白石 国際日本学部は、生きていくために必要な考え方が身に付く学部です。多角的なものの見方や視点を、繰り返し、繰り返し教わることで、すごく良い考え方のクセを体得できるんですよね。他学部履修と組み合わせれば、学びの幅は無限大といっていいほどに広がります。興味関心さえあればどんなことでも学ぶことができる、とても懐の広い場所。ここで得た学びや知識は、私の一生の宝物だと思っています。

私が受験生の時は、「1点でも多くとる!」という気持ちで勉強していました。「最後にもう1問、過去問を見ておこう」「もう1ページ確認しておこう」という粘り強い気持ちが大切です。英語の長文読解や国語の現代文が苦手な人には、「読み物としてストーリーを楽しみながら、面白がって読む」という気持ちに切り替えてみると、内容が頭に入ってくるのでお勧めです。受験当日も「今日はどんなものが読めるだろう」と楽しみにしたり、「難しい問題が出ても、受けて立とうじゃないか」という強い気持ちを持ったりすることも、最終的な心の支えになります。粘り強く頑張ってください!

メッセージ

――最後に、メッセージをお願いします。

上白石 明大生の皆さん。私は8年間も大学に通いましたが、最後の最後まで学びに飽きることがありませんでした。明治大学は、本当に面白い授業がたくさんありますし、魅力的な先生もたくさんいらっしゃるし、すてきな友人との出会いもたくさんあると思います。今しかない学生生活、悔いの無いように思いっきり楽しんでください。すてきな学生生活を送られますことを願っております。

卒業生(校友)の皆さん。明治大学を卒業した皆さんなら、これから大抵のことは何とか頑張れるのではないかと思います。私も実際に卒業してから、いろいろな困難にあたるたびに、「大学時代に頑張れたから大丈夫だ」という気持ちが、すごく背中を押してくれています。皆さんのこれからの人生が、豊かなものでありますように。やりたいことに取り組み、楽しい毎日を過ごされることを心から願っております。明治大学の卒業生として共に頑張りましょう!

上白石萌音さん

(インタビュー時の写真=鎌田 健志)

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※ページの内容や掲載者のプロフィールなどは、記事公開当時のものです

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