
理工学部で物理を専攻し、爆発的に恒星が形成されている「スターバースト銀河M82」の観測を行っている鈴木仁深さん。「自分で考えて行動すること」を大切にしているという鈴木さんに、物理に興味を持ったきっかけや大学生活での苦労と成長について伺いました。
鈴木さんのMeijingは、「探求する」を意味する “Explor” ing
物理学の知識を深めると、自然現象の一つ一つが新鮮に見えてくる
明治大学の理工学部物理学科に進学した理由を教えてください。
高校の授業でニュートン力学を学んだ際に、物理学に興味を抱きました。ボールを投げたときにそのボールがどう動き、どこに着地するかといった物体の動きを、シンプルな数式で予測できるという点に魅力を感じたんです。
物理学科を設ける大学は多く存在しますが、中でも明治大学は幅広い分野の研究室があります。高校生の頃は専門的に研究したい分野がはっきりしていなかったため、3年かけて基礎となる物理学の知識を習得した上で、複数の研究室から進む先を選ぶことができる明治大学を志望しました。
これまでで特に印象的だった講義について、教えてください。
「相対性理論」の講義が印象深いです。「光の速度は不変である」と提唱する特殊相対性理論を扱ったのですが、日常的な感覚に反するような話が展開され、常識が覆される感覚がありました。
例えば、動いているバスの中央から前方と後方に向かって同時に光が発射された場合、特殊相対性理論に基づいて解釈すると、前方に向かった光の方が遅く到着するといえます。一般的な感覚だと同時に到着するように思えたので、自分の中になかった考え方に触れて、さらに物理の面白さを感じました。

物理学科での学びを通じて、どのような知識やスキルが得られましたか。
物理学科の講義の多くは、演習がセットになっています。一方的に講義を聞くだけでなく、演習問題に取り組むことで、論理的思考力が鍛えられるとともに、理解したことを言語化する能力も身に付いたと感じています。講義や研究だけでなく、さまざまな活動(サークル活動・留学・教育実習)においても、次のステップを考えて周囲に伝え、前に進めていくアクションにつなげられています。
物理学の専門的な知識も増えたことで、日々の生活や自然界の中で起きている現象の見え方が変わり、今までなんとなく「すごい」「美しい」と感じていたことの裏側を推測できるようになりました。博物館に出かけると、以前よりもずっと大きな感動を得ることができます。
「銀河の観測」を通して追い求めている未知の発見
現在取り組んでいる研究について、教えてください。
太陽を超える質量を持つ恒星を数百万年という短期間で形成している「スターバースト銀河M82」の観測、研究を行っています。M82は私たちが住む天の川銀河から比較的近いため、研究を進めることで地球や銀河が誕生した経緯につながるヒントを得られるかもしれません。
現在はさまざまな先行研究の論文を読んだり、観測画像の解析を行ったりしながら、宇宙の成り立ちに対する理解を深めています。
研究テーマを「宇宙」に絞ったのは、なぜでしょうか。
もともと漠然とした興味はあったのですが、物理学の専門的な講義を受ける中で、地球や惑星の内部構造や細かな素粒子、宇宙全体に対する関心が高まったため、宇宙の観測や望遠鏡の開発を進めている宇宙物理実験研究室への配属を希望しました。
担当の佐藤寿紀先生に研究テーマについて相談した際に「スターバースト銀河M82」の話を伺い、生まれたての銀河を観測することで面白い発見ができるのではないかと感じ、テーマに設定しました。データが集まり始めているところなので、新鮮な気持ちで取り組むことができています。

課外活動で培った「他者の意見を受け入れる姿勢」
大学生活を送る上で、どのような考え方を大切にしていますか。
「自分で考えて行動すること」「相手の考えを受け入れること」を大切にしています。サークル活動や留学の経験から、意識するようになりました。
私は、公認合唱サークル「明治大学混声合唱団」に所属し、他の学部の友人たちと充実した時間を過ごすことができています。ただ、コロナ禍で団員が減った経緯があり、私の代もまだ少ない状態でした。3年次に執行代となりサークルをまとめる立場になると、同期の人数が少なく、学部もそれぞれ異なるので、こまめな連絡が必須でした。
その経験を経て、今何をするべきかを常に考えるようになりました。また、行動に移すだけでなく、考えや情報を団員と共有することで認識を統一し、チーム内で負担を分散しながらスムーズに物事を進められるということを学びました。

留学の経験についても、教えてください。
学内の短期海外留学プログラムで、1年次の春休みに1カ月間カナダのビクトリア大学に留学し、主に英語を学びました。治安のいい地域だったので、授業の課題で「知らない人に話しかけてみよう」と、現地の方々と交流する機会を与えられたこともありました。ビクトリアの方々はとてもフレンドリーで、バス停で「英語で話が弾む経験」をすることができました。また、休日には観光名所を巡ったりしながら、楽しく安全に過ごすことができました。
現地で自分と異なる背景や価値観を持つ方々に出会い、一緒に共同作業や課題に取り組む中で「その視点で考えればいいのか」と驚かされることがたくさんありました。自分の思考を見直すきっかけになり、相手の考え方を受け入れる大切さも学びました。
サークル活動や留学の経験は、日々の講義や研究にも役立っていますか。
演習問題や研究に取り組む際、友人とそれぞれの解釈や知識を共有しながら進めていくことが頻繁にあります。自分なりの解釈に固執せず、他者の考えを聞いて受け入れる姿勢は、サークル活動や留学で培われたものだと感じています。
自分にはない発想や意見を聞くと思わぬ発見につながることがあるので、これからも考えを共有し、受け入れていきたいです。

「考え行動する力」を生かして宇宙の謎を解明していきたい
今後の目標、これから挑戦したいことを教えてください。
卒業後は明治大学大学院に進学し、現在取り組んでいる「スターバースト銀河M82」に関する研究をさらに深めていきたいと考えています。観測や研究を主体的に推し進められる人材となれるよう、今のうちからできる限りの準備をしたいと思います。
難しい研究テーマですが、今まさに観測が進んでいるところなので、探求しがいのある分野だと感じています。宇宙で起こっていることをじっくり解明していくためにも、自分で考えて行動する力を大切にしていきたいです。
最後に、高校生の皆さんにメッセージをお願いします!
具体的な進路を思い描くのが難しいときには、自分の楽しさや喜びの源がどこにあるのか、どのような人物に憧れを抱くかといったことを考えてみるといいかもしれません。私も物理学に長けている方への憧れの気持ちが、進路選択の背中を押しました。進路を決めるきっかけは、些細なことで大丈夫だと思います。
大学では、多くの人や学問、機会に出会うことができます。少しでも興味を抱いたものがあれば、勇気を出して取り組んでみることをお勧めします。皆さんが過ごす日々は、きっと充実したものになるはずです。応援しています!
Meiji NOWでは、Xアカウント(@meiji_now)で日々の更新情報をお知らせしています。Xをご利用の方は、以下のボタンからMeiji NOW公式アカウントをフォローして、情報収集にご活用ください。
※ページの内容や掲載者のプロフィールなどは、記事公開当時のものです