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2024.11.01
『自治体行政における文化専門職のガバナンス』(熊田知晃 著、東海教育研究所)
熊田知晃 著『自治体行政における文化専門職のガバナンス』(東海教育研究所)
地方分権改革、そして複雑多様化する住民ニーズに対応するため、自治体行政の現場では総合性とともに各政策領域における専門化が求められるようになった。本書は、自治体の文化行政領域を担う「文化専門職」に就いた職員の、専門性の具体的な中身を明らかにしようとする意欲的な試みである。
2001年の文化芸術振興基本法制定以降、文化政策の体系化と専門分化が進められるようになった。一方で、地方自治法改正により文化ホールなどの公の施設の管理運営に指定管理者制度が導入され、専門能力の外注も進んでいる。その中で著者は文化専門職に就いた自治体職員の経歴資源に着目し、自治体へのアンケートとインタビューにより専門性の内容と当該専門職の運用の実態を明らかにしている。
分析対象自治体での制度定着の経緯と運用の実態を丹念に追う後半の各章は、自治体行政施策の制度史としても読み応えがある。文化行政のみならず、自治体行政の専門性とその管理を学びたい職員・研究者に広く手に取ってもらいたい研究書である。
評・菊地端夫 経営学部教授(著者は経営学部助教)