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2025.02.01
『ベトナムの経済発展と未来―日本の開発協力と日越企業の経営・人材戦略を通じて』(藤江昌嗣・杉山光信・東長邦明 他 編著、芙蓉書房出版)
藤江昌嗣・杉山光信・東長邦明 他 編著『ベトナムの経済発展と未来―日本の開発協力と日越企業の経営・人材戦略を通じて』(芙蓉書房出版)
ベトナムは、多くの日本企業が生産拠点を置くなど日本と深い関係を持ち、また1990年代からの経済的躍進は世界的に注目されてきた。本書はベトナムが1970年代以降どのように経済発展を遂げ、そこに日本のODA(政府開発援助)とFDI(海外直接投資)がどんな役割を果たしてきたかを問うている。また現在のベトナムと日本企業の経営・人材戦略を、IT化への取り組みを含め分析し、ベトナム経済の未来を考察する。極めて長期的かつ多面的な視野の大著である。
多くの章を執筆した藤江教授は、統計資料の分析により、1990年代ベトナムの経済的「離陸」に、繊維産業が貢献したと実証し、担い手の一つである縫製業のフォーク株式会社の当時の事業を詳査する。同社を導いてきた小谷野正道現会長は明治大学出身で、本研究をも長く支えてくださったという。小谷野氏の尽力がベトナムの経済発展につながっていく論述は、大河ドラマのようだ。
杉山氏(元文学部教授)が、FDIがベトナムの国民経済に役立っているのかを問うなど、本書は現在のベトナム経済の多くの課題も論じ、ベトナム理解にとっては必携の書となろう。
評・平山満紀 文学部教授(編著者は上記の記載順に、経営学部教授・元文学部教授・MOS研究所客員研究員)