宮下芳明 著『13歳から挑むフロンティア思考 イグ・ノーベル賞受賞者が明かす「解なき世界」を生き抜くヒント』(日経BP)
明治・大正期の小説家、有島武郎は『惜みなく愛は奪う』と題した評論でこう論じている。
子供は子供自身の為めに教育されなければならない。この一事が見過されていたなら教育の本義はその瞬間に滅びるのみならず、それは却って有害になる。社会の為めに子供を教育する――それは驚くべく悲しむべき錯誤である。
子供の学びを社会の都合で決め付けることを有島は批判した。宮下の新著『13歳から挑むフロンティア思考』は同様に、大人が考えた「フロンティア」の押し付けではなく、子供が子供自身で正しき学びをつかみとることを手助けするものである。
有島は先の文に続けてこう説く。
仕事に勤勉なれと教える。何故正しき仕事を選べと教えないのか。正しい仕事を選び得たものは懶惰(※)であることが出来ないのだ。
本書は、懶惰であることが出来なかった者がフロンティアを志す者へ贈る羅針盤である。
評・福地健太郎 総合数理学部教授(著者は総合数理学部教授)
※ 懶惰:怠けて仕事をおざなりにすること。怠惰