私立学校法改正を経営に活かす(総務担当常勤理事 岸上謙司)
加速化する18歳人口減少は、いずれ到来する人口減少社会の前兆であり、それを見据えた戦略的な学校法人経営と事業継続性の確保が求められている。こうした時代背景の中、私学は健全経営とガバナンスの強化が求められているからこそ、2023年に私立学校法(以下私学法)が改正され、2025年度から施行されることになる。特に私学法改正の柱は理事会と評議員会が相互に牽制し合いながら建設的に協力、議論し充実した学校法人運営を目指すことであり、換言すれば「権利自由・独立自治」を守ることにつながる。この趣旨に沿い、今年度中に寄附行為と関連規則等の改正が必要となっており、本学においても、寄附行為の改正案の認可申請を文部科学省に行っているところである。
改正された私学法のキーポイントでもあるガバナンス体制の強化を担保していく上で重要となるのは、内部統制システムをいかに機能させていくかであり、限られた時間の中で学内合意を形成し、今年度中に内部統制システムに係る規程整備が求められている。内部統制とは学校法人の諸活動が適正に行われることを確保することであり、理事の業務執行や教職員の職務執行が法令や寄附行為に適合しているかを確保するためのコンプライアンス規程や、法令遵守のマニュアル整備が具体的に必要となってくる。
また、本学のように大きな組織であるが故の多様なリスクが顕在化した場合に、社会に対する説明を含め、誰がどのように対応していくのかをシミュレーションしながら、機動的に対応できる仕組み作りと実践が理事会に求められている。
このようなリスクをまずは事務部門で洗い出した上で評価し、現在の対応状況を確認することが出発点となる。法人全体の危機管理は言うに及ばず個人レベルの不祥事をも視野に入れた取り組みが求められている。このことは他大学の事例を見れば明らかであろう。大学は社会の公器として、人材を育成・輩出していくことが期待されているからこそ、役員・評議員・教職員・校友・父母が一体となって、学生の期待に応えられる存在であり続けなければならない。常勤理事の一人として、大学を取り巻く諸環境の変化に対し、これまで以上に機動的に対応していくことを念頭に、明治大学を発展させる覚悟で取り組んでいきたい。
私学法改正を本学の発展につなげることの大切さを、教職員各位に意識付けていく責務を共有し、「MEIJI VISION 150-前へ-」で掲げた諸計画を確実に実行していくことが、今期理事会のマイルストーンなのであろう。
明治大学広報第790号(2024年10月1日発行)掲載