明治大学からのメッセージが変える未来(理事 榎本知佐)
大学の経営に携わり、1年が経過した。理解が深まったのは大学がとても多くの人たちに支えられているということ。企業が盛衰を繰り返して従業員、株主、パートナー企業等と共に社会のためやお客様のためにビジネスをするのとはかなり違う。だが、私の社会人としてのキャリアの中心であるグローバルコミュニケーションとブランドの観点では、大学と企業において広報に対する期待や戦略に大きな違いはない。
先日、20代のプロゴルファーと話した際に、「大学に先生以外の方がいるのは初めて知りました。どんなお仕事をされているのですか?」と聞かれ、これにはショックを受けたが、一般企業で働いた経験のない彼女には大学の経営に関する情報に触れる機会もなく、おそらく明治大学の学生も似たような状況かもしれない。
建学の精神「権利自由、独立自治」のように校歌から浸透するものは良いが、大学を牽引する長期ビジョン「MEIJI VISION 150 -前へ-」やそれを具現化する「第3期中期計画(2022-2026)」は、ストーリーを作って学生に対しても分かりやすい広報をすることが必要だ。繰り返すことも成功の鍵だし、広報部門の力も頼りにできる。
明治大学は学生数約3万6千人、専任教職員数約1500人と大規模であり、ステークホルダーは多様で数が多い。優秀で熱意のある人々の対話は大学の強みになる。校友や父母会を含めて60万人以上が大学のメッセージを学外・学内へ発信できるとすると、これから何をたくさん語っていただこう。明治大学においては、テーマは教育・研究に加えて大学の取り組む社会課題からスポーツ振興まで選択範囲が広くある。大学の魅力の発信というゴールに向かって全国各地で楽しみながらアクションを起こすことで、人的資本の優位性を獲得するチャンスだ。それは日本の国力アップにも貢献する。
2024年度には、大学のブランド力の向上、山の上ホテルの継承、駿河台キャンパス総合施設整備計画「SURUGADAI 6.0」、「紫紺の襷プロジェクト~Mの輝きを再び~」をはじめ、明治大学には新しい価値が次々と生まれた。今年度も決して止まることはない。こうした価値を分かりやすく語り、共感を得ることで大学のファンは劇的に増えるのだ。
さて、明治大学の150周年まであと6年を切った。一人一人がストーリーを選んで語り、さまざまな形で応援をしていく。それをさらに応援する人たち。明治大学を囲む人々とファンをたくさん作って「前へ」、未来へと進みたい。ステークホルダーの方々と一緒に、“全員が明治大学のアンバサダー”になって、輝きながらメッセージを発信し、大学の新たな魅力を創っていこう。
明治大学広報第797号(2025年5月1日発行)掲載