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論壇
2026.03.01

分断と対立の時代にこそ「明治はひとつ」を目指したい(国際日本学部長 鈴木賢志)

近年、世界各地で分断と対立が深刻化している。とりわけトランプ政権下のアメリカで広がる分断と対立は、国際社会全体に大きな影響を及ぼしている。分断と対立の先に破壊と破滅が待ち受けているのは歴史の常だが、世界は今、その過ちを繰り返そうとしている。

こうした状況は、わが国にとっても無縁ではない。特に最近の排外主義的な動きには、大いに懸念を抱いている。異なるものを頭ごなしに排除するのではなく、まず相手を尊重し、相互理解に努めた上で、皆が納得できる合意点を探る。そのことが肝要で、それができることこそが、人類の最も優れた(えい)()であるはずだ。

私は8年前に学部長に就任して以来、「日本と世界をつなぐ」を国際日本学部のコンセプトとして掲げてきた。カリキュラムにおいても、日本に関する学問群と世界に関する学問群の間に、あえて学科や専攻といった既存の枠を設けてこなかった。こうした「枠を設けない」学びの在り方は、学生の視野を広げ、自主的な学びを促してきたと自負している。

この「枠を設けない」学びの重要性は、近年のAI技術の発展によって、さらに高まっている。AIは定まった枠組みの中で解を導くことに関しては、すでに人間の能力を上回っており、そのAIを使いこなすために、これまで関連がないと考えられてきた知識や価値を結び付け、新たな問いを立てる発想力が求められている。だからこそこれからの学究の世界では、専門分野の枠に閉じこもって分断・対立するのではなく、互いにその枠を超えようとする意志と能力が必要だ。

私は「明治はひとつ」という言葉が大好きだ。受験業界では、明治大学は学部間の偏差値の差が小さく「学部カーストがない」と評されることがあるが、私はそれを本学の大きな強みと捉えている。来年度から始まる「副専攻プログラム」を皮切りに、学部の枠を超えた「他学部履修」ならぬ「多学部履修」を促進することで、総合大学としての力をさらに発揮できるはずだ。

学内には、学部や専攻の垣根のみならず、教員と職員、教職員と学生、教職員と卒業生、さらにはキャンパス間など、さまざまな垣根が存在する。少子化が進み、大学への就学人口がますます減っていく中で、私たちはこうした垣根を取り除き、同心協力、ひとつに力を結集し、より良い教育と研究に取り組んでいく必要がある。

本学の理念は「個を強くする」だが、個の力を発揮するには、他者との連携と協力が不可欠だ。あの大谷翔平だって、一人で野球の試合に勝つことはできないのだ。

明治大学広報第807号(2026年3月1日発行)掲載