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論壇
2026.02.01

学際系学部における研究・教育の在り方(情報コミュニケーション学部長 阿部力也)

過日、情報コミュニケーション学部において教育活動の一環として開催している「研究交流祭」に参加しました。研究交流祭では、多様な学問分野を専門とするゼミナールが一堂に会し、それぞれの研究成果を相互に発表・共有することを目的としています。とくに専門分野・研究手法を異にするゼミナール同士が発表や質疑応答を行うことで、参加学生が自らの研究を相対化し、多角的な視点から「ものごと」を捉える力を涵養(かんよう)することに役立っています。

国際紛争をはじめとして、環境問題、食糧問題など、おおよそ現代社会に生起する事象が単一の原因に基づくものではないのは当然のことです。事象が複雑であればあるほど、一つの学問領域のみから問題を分析し一定の解決を得ることなど、不可能であると言ってよいでしょう。だからこそ、本学部で学ぶ「学際的・学域横断的」な思考の枠組みに従ったアプローチが諸課題の解決に寄与できるのではないかと考えます。

例えば、わたくし自身が研究テーマとしている「共犯」(犯罪を複数人で行うという現象)を理解する上でも、たんに「刑法」という法律を解釈するだけではなく、法律学に隣接する諸科学の成果に依拠しながら、いくつもの「問い」を立てることの重要性を実感しています。

共犯現象に対しても、個々の参加者の影響力とその相互作用の射程はどこまで及ぶのか、構成された集団から参加者への圧力の存否(抜け出せなくなる参加者!)といった分析の「視角」を設定すると、社会学、心理学などの知見に依拠しなければならないのです。

つまり、犯罪現象を「実体」に即して的確に理解することは適切な「処罰」に結び付き、適切な処罰は確実な「犯罪予防」につながると言えるのではないでしょうか。このことは、たんなる「条文解釈」を超えて複眼的・学際的な思考を持つことの重要性を物語っていると思うのです。

「社会の現在(いま)を捉える」ことを重視する本学部では、講義科目およびゼミナール科目だけでなく、この研究交流祭も学際研究の「マイルストーン」の一つです。マイルストーンを達成するごとに「学びにおける主体性」を自覚することになり、ものごとの「全体像」を見渡した上で、個別の解決策を提示できる能力が着実に身に付くことになるはずです。

「天下の形勢は、一事一物に就て臆断すべきものにあらず」と先達も指摘しています(『文明論之概略』より)。畢竟(ひっきょう)、これからの社会が要請する真の人材とは、(オルテガ的な批判も込めつつ)たんに専門知に長けた人ではなく、「ものごとの全体を把握しながら対処できる人」ではないでしょうか。各研究報告を聞きながらそのようなことを考えた次第です。

明治大学広報第806号(2026年2月1日発行)掲載