ハラスメントの無いキャンパスに(学務担当常勤理事 岡安孝弘)
学務担当常勤理事 岡安孝弘
駿河台キャンパスに心理臨床センターが開設されてから、2023年度で20周年を迎えました。心理臨床センターでは、公認心理師および臨床心理士の資格を有する専任教員や専門相談員が、心に問題を抱える一般の方々への相談活動を行っています。また、心理士を目指す大学院生が、有資格者の指導を受けながら研修相談員として相談活動を行う実習機関としての役割も担っています。この20年間に、約2000人の相談者に対して5万回を超える相談活動を行ってきました。私も資格を有する相談員の一人として相談活動に携わってきましたが、多くの相談者の相談内容に共通しているのは、強い不安やうつ状態に圧倒され、通常の生活を送ることが困難な状態にあるということです。その原因はさまざまですが、大きな原因の一つとして、職場や学校におけるハラスメントがあります。
全国の大学においてハラスメント事案が報道されることは珍しくありませんが、本学もハラスメント問題と決して無縁ではありません。私が役職上、人権委員会委員長を務めてきたこの4年間に、決して少なくない数のハラスメント事案に対応してまいりました。学生がハラスメント被害に遭った場合、学生の学修・研究環境を著しく損ねるだけでなく、回復困難な精神的ダメージを与えることにもなりかねません。また、ハラスメント相談員、当該学部・研究科の役職者、事実を確認する調査委員、それを支える事務職員など、被害学生の支援や事実認定に関わる多くの教職員が事案への対応のために膨大な時間と労力を費やすことになります。加害者もまた、何度も聞き取り調査を受け、事実認定がなされれば相応の処分を受けることになり、その間、厳しいストレス状態に苛まれることになるでしょう。ハラスメント行為は誰にとっても利益になることなど一つもないのです。
本年4月に教職員就業規則が一部改正され、新たな懲戒規程が制定されました。そこには懲戒事由とそれに対する処分の量定基準が具体的に示されており、各種のハラスメントについても取り上げられています。また、人権委員会およびキャンパス・ハラスメント対策委員会からも、教職員に向けてハラスメント啓発・予防のためのチラシを配布しました。そこには、ハラスメント行為が具体的に記載されています。ハラスメントの加害者は、自らの行為がハラスメントに該当するという認識に欠けているケースがほとんどです。懲戒規程やチラシをぜひご一読いただき、自らの行動を振り返る機会を持っていただければ幸いです。
全ての教職員のご協力によって、キャンパス・ハラスメントのない明治大学が実現することを願っています。 (文学部教授)
明治大学広報第784号(2024年4月1日発行)掲載。記事中の役職や学年などは、原則として取材時や2024年3月時点のものです。