駿風
2025.04.01
「駿風」2025年4月
20年以上前になるが、本学に赴任してきたとき、なんとも緩い大学だと思った。教授会の後の昼食で酒が振る舞われてから新入生ガイダンスがあり、ほろ酔い加減で登壇した思い出がある。結局、壇上で鼾をかく教員がでてきたので取りやめになったそうだ。今なら顰蹙を買う話だが、昔はなんともおおらかだった。でも、このおおらかさが明治の良さだったと思う。さすがに飲酒はまずいが、真面目過ぎずどこか緩さがあるという本学の精神は、人間関係がギスギスした今のような時代に必要なのではないか。
自分が学生のころ、キャンパスには雑多なものがあった。トイレには落書きがあり、校内にも政治的主張があった。自由に喫煙もできた。それが今ではキャンパスは「無菌状態」になろうとしている。「健康に良くないもの」や「政治的なもの」は、キャンパスから追放されているのが現状だ。こういう点でも、緩さが必要なのではないか。画一的な物の見方を押しつけるのではなく、多様なものから考えていく自由を学ばせるのが、教育の本来の姿だからである。本学の緩さをもう一度見直すべきときではないか。
明治大学広報第796号(2025年4月1日発行)掲載