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駿風
2025.05.01

「駿風」2025年5月

先日、本学の学生が主催していた舞台作品を観劇した。学内ではなく、都内の小劇場での上演だった。よくもこんな難しい作品を選んだものだ、と演目を目にした時、彼らの勇気に脱帽した。舞台を実現させるためには、演者だけでなく、全体を支える演出や裏方のスタッフの活躍、また作品の理解・解釈に加え、グループとしての想像力・創造力が不可欠である。それに、観客という他者の存在も稽古中に意識していなければならない。

さて、私たちの日常生活は、デジタルに過剰に依存していく傾向にある。インターネットを通しての情報収集や生成AIは非常に便利である。動画も倍速で見れば時間も節約できる。だが、技術は進化し人間は退化する、と最近よくいわれるようになってきた。他者との直接的な関わりが減少するため、対面でのコミュニケーションは不得手、世界で起こっているさまざまな出来事に人は無関心となり、思考力も育たないからだ。

このようなデジタル時代に生きる学生たちのバイタリティーあふれる舞台を観て、人間の退化を止めるためには、若者には演劇を体験してほしいと、切に思った。

明治大学広報第797号(2025年5月1日発行)掲載