駿風
2024.07.01
「駿風」2024年7月
中学生の頃、体育教師が語ってくれた。昔、実技はからきしできないが、ひたむきさを評価したことがあると。その生徒は中学時代からドイツ語に取り組み、技術者として活躍していると。その話が頭にあり、大学ではドイツ語を選択した。教科書には記憶に残るいくつかの例文があった。真面目に取り組み、担当教員から認められていると自負していたが及第点すれすれだった。手紙で問い合わせた。不出来な答案に丁寧な解説と外国語を学ぶ意義が添えられてきた。
学生の研究活動を評価することは難しい。研究テーマの違いから進捗に差が生じる。練習問題を解くがごとく結果をまとめたり、一部のデータに自己流解釈を加えたりすることで成果を強調するケースも増えてきた。都合の悪いデータこそ事実を物語っている。その事実をかみ砕こうと失敗を繰り返し成果がまとまらないケースもある。Eine Schwalbe macht noch keinen Sommer(私訳:一つの事象だけで全ては分からない). 体育教師やドイツ語教員の思いをいま一度くみ取ってみる。自分は学生に伝えられているだろうか。ツバメを見ると頭をよぎる。
明治大学広報第787号(2024年7月1日発行)掲載