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相談室の窓から
2025.01.28

一歩前へ進む時 (経営学部 専任准教授 古川裕康)

学生相談室相談員 経営学部 専任准教授 古川裕康

学生相談員として担当することになった当初、私は学生からの相談内容のほとんどが困り事、ネガティブな悩み事の内容だと考えていました。確かにこのような内容の相談は多く存在していますが、一方で「一歩前へ」進む挑戦のための相談事も一定数存在していることが分かりました。

また、最初はネガティブな相談内容であったものの、相談を重ねると姿勢や行動が前向きに変化することもあります。何事も「気の持ちよう」と片付けてしまうのは少し乱暴かもしれませんが、誰しも自分の気持ちには波があるものです。その波の状況や変化を自分なりに知ろうとしてみると、少し気が楽になるかもしれません。

私は、人間の行動を分析対象として研究していますが、ここまで述べてきた内容は学術的にも明らかにされてきたものです。人間誰しも一歩前へ進むことに躊躇する時期と、挑戦心に満ちている時期があるとされています。その時々で自分自身の心がどちらに向いているかによって、私たちの悩み事や行動は大きく左右されるのです。

具体的には「制御焦点理論」という名前で研究が進められてきました(Crowe & Higgins, 1997)(※)。この理論ではネガティブで保守的な心理状況を「予防」と呼び、ポジティブで挑戦しようとする人間の心理状況を「促進」と呼んでいます。私たちが今どの側面に焦点を当てて生活をしているかによって、考え方や行動パターンは変化します。

制御焦点理論では、自分自身の現状が予防の焦点にあるのか、それとも促進の焦点にあるのかを理解した上で次の行動をとることによって、最終的に自分自身にとって望ましい結果が得られると説いています。

「一歩前へ」進み続けるためには、タイミングが極めて重要になります。スポーツでも攻守の流れの中で適切なタイミングを狙って進み続けることが重要です。同じように自分自身の歩みについてもタイミングさえ見極めることができれば、最終的により遠くへたどり着くこともできます。今回の記事が、皆さんにとって今の心の状態を再確認し、立ち止まる or 一歩前へ踏み出すタイミングについて考えるきっかけになれば、うれしく思います。

※ Crowe,E., & Higgins, E. T. (1997), “Regulatory focus and strategic inclinations: Promotion and prevention in decision-making”, Organizational Behavior and Human Decision Processes, Vol.69, pp.117-132. doi:10.1006/obhd.1996.2675

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