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2024.05.28

自分の中のHERO(心理的資本)を育てよう!|商学部 専任講師 鈴木 仁里

学生相談室相談員 商学部 専任講師 鈴木 仁里

近年、学生の就労意識は企業によるインターンシップやセミナーなどの積極的な開催によって一層高まっており、その意識を持ち始める時期は顕著に低学年化してきている。企業は自社の将来を担う可能性のある優れた人材への積極的な接近を試み、学生はその企業の方針に自分の将来を重ね合わせることができ、やりがいを感じられる可能性のある企業をさまざまな情報媒体を通じて模索している。就職活動について、学生が必ず陥る心情がある。例えば、「他人と比べて自分のとりえが少ない」「他人とは違って将来のビジョンが明確ではない」「友人らに比べて内定を多くもらえず悔しくて情けない」などである。これらの心情に共通するのは「他人と比較している」ということだろう。この他人と比較して自分を捉える行為は就職活動に対する「相対的アプローチ」と言えよう。

しかし、より重要なことは自分の過去と現在、将来に真摯に向き合い、自ら考え行動し、企業との対話を通して進路を切り開き、納得のいく決断を下していくことである。この行為は「主体的アプローチ」と言えよう。もちろん、就職活動における合否判定で一喜一憂することもあるだろう。しかし、不合格となっても、むしろその結果をプラスに捉えて、次の機会に生かしていこうとするポジティブな思考こそが、学生にとってその後の貴重な財産となるだろう。

昨今、実社会においてもポジティブ心理学を起点とした従業員の心理的資本育成の重要性についての議論が展開されている。その心の持ちようはHEROと形容されており、それは①「ホープ(Hope: 希望)」、②「エフィカシー(Efficacy:自己効力感)」、③「レジリエンス(Resilience:回復力)、④「オプティミズム(Optimism:楽観性)」という4要素から構成される。①は高い目標に向けて粘り強く尽力する姿勢を意味し、②はチャレンジングな活動の起点となる自信のことである。③は問題や逆境に直面した際に落ち着いて対応していく柔軟な姿勢を意味し、④は成功のイメージを自らの現状に結び付けて前向きに現状を認知する力である(※)。

客観的に捉えれば、社会人に求められているこのHEROを学生時代から意識して、それを就職活動を通して身に付けていっているのである。HEROの4要素が少しずつでも自分の中で備わってきた頃、自らの就職活動における「主体的アプローチ」が効果をもたらして来ることだろう。

※フレッド・ルーサンス、キャロライン・ユセフ=モーガン、ブルース・アボリオ著、開本浩矢、加納郁也、井川浩輔、高階利徳、厨子直之訳(2022)『こころの資本-心理的資本とその展開-』中央経済社、11-12頁、59-89頁、97-124頁、133-159頁、165-197頁。

こちらの記事は広報誌『明治』第100号(2024年1月発行)からの転載です。
ページの内容や掲載者のプロフィールなどは、記事公開当時のものです。