
農学部 食料環境政策学科は6月6日から12日にかけて、モンゴル国で実習科目「海外農業体験」を実施した。この科目は2009年度から2年次の学生を対象に開講しており、実際に海外で農作業を体験したり、現地の農家や農業企業の人々と交流したりすることを通じて、海外の農業や社会、経済に関する理解を深めることを目的としている。今年度の実習は、教員2人の引率の下、14人の学生が参加し、首都ウランバートル市およびその周辺地域で行われた。
遊牧民への訪問では、なりわいや文化、搾乳や放牧の見学、乗馬体験などを行った。また、博物館でモンゴルの歴史について学んだほか、製革工場や革靴工場ではモンゴルの皮革加工(軽工業)事情について理解を深めた。
モンゴル国立農業大学の付属農場アグロパークでは、園芸作物について学んだ。平均気温の低いモンゴルでは作物の栽培可能な時期が短いため、ほとんどの野菜を輸入に頼っており、近年は野菜の自給率向上に力を入れている。アグロパークには、日光温室、ガラスハウスやビニールハウス、貯水設備などが設置され、野菜や花卉を中心に研究が行われている。
国際協力機構(JICA)モンゴル事務所では、JICAがモンゴルで実施している技術協力プロジェクト「市場志向型農業推進プロジェクト(MON-SHEP)」について学んだ。このプロジェクトでは、小規模農家支援の取り組みである「SHEPアプローチ」に基づく一連の活動を通じて、作期を延ばすための施設や寒さ対策のための設備を活用し、計画的な野菜生産・普及方法を中小規模の農家や農業普及員に技術移転することで、国産の野菜生産を促進する市場志向型農業の効果的な仕組みづくりを進めている。
参加した学生からは、「国際協力の現実に触れることができた。ただ建物を造る、技術を教えるといった一方通行の支援ではなく、現地の人々が『自分たちの問題』として課題に気づき、動き出すまでを支える。そんな丁寧な関わり方が持続可能な支援には必要だということを改めて知った。SHEPの話は特に印象的で、農業の支援が『技術』だけでなく『意識』にも働きかけていくものだという視点が新鮮だった」といった感想が寄せられ、この実習による深い学びの効果がうかがえた。(農学部事務室)

