前列左からボー氏、上野学長、後列右は小早川教授フランス中央銀行副総裁ドゥニ・ボー氏が9月30日、駿河台キャンパスを訪問した。ボー氏は、デジタル通貨を巡る関係者との意見交換のために来日。その機会を生かして日本の学生とも直接意見交換をしたいとの意向が政治経済学部の小早川周司教授(研究テーマ:フィンテックと貨幣の将来像)を通じて示され、上野正雄学長との懇談および学生向けの講演会が実現した。
懇談の席でボー氏は「金融教育はフランス中央銀行の重要な使命の一つ。学生との接点をできるだけ多く設け、社会全体の金融リテラシー向上を図っている」と語った。上野学長は「次の社会をつくるのは若い世代。中央銀行がそのような視点から社会づくりに取り組んでいるのは、大学人としても非常に意義深いことと感じる」と応じた。
その後、ボー氏は「デジタル期における中央銀行マネー再考」と題した講演をグローバルホールで実施。政治経済学部の学生を中心に90人が参加した。

ボー氏は「社会のデジタル化が急速に進む中で、欧州では金融の『トークン化』(資産の価値や権利をブロックチェーン上でデジタルに表現しようとする取り組み)を支える法整備が進み、欧州中央銀行を中心に、ホールセール・リテールの両面でデジタル通貨の発行に向けた検討が進められている」と解説。
学生が「民間企業が発行するデジタル通貨があれば十分ではないか」と問うと、ボー氏は「デジタル社会を支える基盤として銀行券のデジタル版を発行し、利用者に『選択の自由』を提供することが重要だ」と答えるなど、活発な質疑応答が行われた。

講演後、学生からは「中央銀行デジタル通貨(CBDC)について最新の検討状況を聞けたのは貴重な機会。CBDCに限らず、先端技術や制度を検討する際、利便性だけでなくリスクの視点も持つことが重要と再認識した」「キャッシュレス決済について、東南アジアに焦点を当てて研究してきたが、欧州の取り組みにも注目したいと思った」といった声が聞かれ、学びの視野が広がる機会となった。


