
プロフィール
朝生 紫乃(あそう・しの)
社会連携事務室で働く職員さん。二児の母で、大学時代はフライングディスク競技のひとつ「アルティメット」に打ち込んでいた。
企画から広報まで、社会人向け講座を一気通貫
――明治大学の生涯学習機関「リバティアカデミー」を担当する朝生さん。現在は、キャリアアップを目指す社会人の女性を対象にした「女性のためのスマートキャリアプログラム」やMBA進学を目指す方向けの「プレMBAプログラム」など、幅広い講座の運営を任されています。大学生とは直接接点を持つことは少ないですが、広く社会人とつながる取り組みは、大学にとって大きな役割があると話します。
朝生 私は2018年に社会連携事務室に配属される前、経営学部事務室で履修成績や定期試験の支援、学部独自の留学プログラムの立ち上げなどに携わっていました。教育環境を良くするという視点は同じですが、講座をゼロからつくることはあまりなかったですし、対象が社会人、しかもビジネスパーソンからシニア層まで世代の幅が広がったのが大きな変化です。そのため現在は、異なるターゲットごとに「学びの需要」を見極めるため、社会の動向にアンテナを張っています。
社会人向け講座の担当者は、企画立案から講師への打診、受講生募集まで一連の業務を主導していきます。社会のニーズに合わせたプログラムの見直しや新規講座の検討、積極的な広報活動まで多岐にわたるので、あらゆる観点と知識が求められます。
――企画運営から広報まで幅広く担っているのですね。リバティアカデミーは講座数も多く、明治大学は社会人向け講座に力を入れているイメージがあります。
朝生 社会人向け講座は、大学の「知」を社会に還元する取り組みの一つ。「知の還元」は社会貢献とされ、教育・研究に続く大学の第三の柱にも位置付けられています。もちろん明治大学も社会貢献活動を推進していて、生涯学習だけでなく、全国の各地域との連携活動も盛んに行っているんです。とはいえ、予算とマンパワーには限りがあります。その中で、どれだけの成果を出せるかが課題ですね。
募集後にやむなく開講中止の判断を下すことも
――朝生さんは明治大学にこれまでになかった新たな講座を次々と企画してきました。苦労もたくさんあるようですが、受講者から満足度の高い反応があった時が最もやりがいを感じると語ります。
朝生 リバティアカデミーは、受講料収入や講師料支出などの収支バランスを講座単位でとっています。そのため、一つの講座に対する費用対効果をシビアに考えなければなりません。申込人数が一定に達しないと、開講中止の判断を下さなければいけない場面もあります。そういった苦しみがある分、自身の企画が通って設置した講座が「満員御礼」になった時は本当にうれしかったです。
受講後のアンケートも必ず全て目を通しています。「知らなかった分野について、最先端の研究成果から分かりやすく知ることができた」や「とてもわくわくさせられた。もっと深く学んでみたいと思った」といった満足度の高いコメントを目にすると、講座を企画して良かったと心から感じます。
受講生の関係で止まらず、正規学生になってもらいたい
――社会人向け講座の発展だけに留まらず、社会人とのつながりを強めて正規学生の獲得につなげられないかと模索していた朝生さん。2015年から続く「女性のためのスマートキャリアプログラム(スマキャリ)」のノウハウを生かして、ビジネススクールの授業を体験できる「プレMBAプログラム」を企画したところ、ヒットしたそうです。
朝生 講座が社会連携事務室の枠を超えて、大学全体にメリットをもたらせないかと考えていた中、スマキャリの修了生が数名、大学院に進学していたというデータを目にしました。そこで、対象を女性だけに絞らず、MBA進学に向けてステップアップしやすくなる講座を設けることで、明治大学のビジネススクール(専門職大学院 グローバル・ビジネス研究科:MBS)の正規学生の獲得にも貢献できるのではないかと仮説を立てました。
MBSとは互いのメリットを探りながら研究科長の先生にかけ合うことで全面的な協力が得られ、MBSの必修5科目の授業を2カ月間でコンパクトに体験できるプログラムにまとめ上げることができました。
また、授業を受けながらキャリア形成につながる「ビジョン・ロードマップ」を作成することもプログラムに盛り込みました。これはスマキャリで行っている長年のノウハウを取り入れたものです。こうした要素がビジネスパーソンのニーズと合致していたのか、定員40名の枠がすぐに埋まり、満員御礼となりました。うれしいですね。
――受講生どうしの交流やMBSの先生との出会いは受講する上での大きな魅力になりますね。
朝生 プログラムはオンラインですが、交流を促進できるように時間割の空き時間に「コミュニケーションタイム」を設けています。初回は、MBSの研究科長による大学院の説明会を開催したのですが、これがかなり好評でした。個人的な疑問点や悩みを解消できた方も数多くいたようです。このプログラム修了生からMBS進学者を輩出し、社会人の学びを後押しする良い循環を生み出せたらうれしいです。
学び続ける自分の姿を描き、大学職員に
――朝生さんは講座を手がける一方で、自身も学び続けることを大切にしています。この学びへの興味関心は、大学で働くルーツになっているようです。
朝生 社会人向け講座の仕事を通じて、私自身の学びにもつながっているなと日々実感しています。意欲が高まった受講生のコメントや行動から大きな刺激をもらっています。そもそも、私が就職先に大学を選んだ理由の一つは、社会とつながりが強くて学びやすい環境があるので、就職後も興味の幅を広げられそうだと思ったからなんです。
私は中学生の頃、授業で難民問題に触れたことがきっかけで「国際協力」に興味を持ちました。大学では東南アジアの経済や文化を中心に幅広く学び、社会に対して自分はどんな役割を担いたいかを考えていました。授業を受けながら、少しずつ視野が広がっていったと思います。
それと、周囲に外国人の留学生が多かった環境も大きかったです。色々な国の教育や文化の現状を知ることができたのは貴重な経験でした。そういった大学生活を送っていく中で、まずは日本の教育業界に身を置き、実務を経験したいと考えて進路を決めました。
――大学職員を目指したのも学生時代の経験や人間関係が大きく関わっているんですね。学生時代にはスポーツにも打ち込まれたそうですね。
朝生 アルティメットというフライングディスク競技のサークルに入っていました。大会優勝を目指して勝ちにこだわりたい人や、身体を動かしてエンジョイしたい人など、さまざまな熱量を持ったメンバーが一丸になれるよう、調整役を買って出ていました。そういった経験は、社会人になっても生きているなと実感しています。
身体を動かすことは今でも好きで、最近は週末にフットサルをしたり、仕事後にバスケットボールをしたり。隙あらば、身体を動かしてリフレッシュしています。職場の仲間とスポーツをすることもありますよ。
ワクワクを大切に
――先の見えない時代の中で明治大学の教育・研究・社会貢献の発展のために、朝生さんは挑戦し続けたいと語ります。
朝生 社会貢献は大学にとってもちろん重要ですが、教育と研究がベースになってこそ。極端な話、社会人向け講座がなくなっても、大学の経営基盤を大きく揺るがすことはありません。
でも、さまざまなバックグラウンドを持つ人が集まって、研究者が講師を務めて事例を交えながら深みのあることを学べるというのは、とても豊かで魅力的だなと思います。そういった「豊かな学び」の価値を可視化するのは難しいとも感じていて、社会的評価が高まると良いなと常々思っています。
今はリバティアカデミーの担当として生涯学習を推進しながら、広く学内関係者を巻き込んでいきたいです。そして関わった人たち全員が互いにウィンウィンになり、明治大学全体の価値を高めるような取り組みや仕組みをつくって残していきたいです。
明治大学には「前へ!」の気持ちで、一歩踏み出す背中を後押ししてくれる環境があります。学生の方は、「やってみたい」気持ち、「わくわくする」気持ちを大切に、自分の可能性が広げられそうなことにたくさんチャレンジしてください。キャリアに正解なんてないんですから。
学校法人明治大学
学術・社会連携部 社会連携事務室
朝生 紫乃(あそう・しの)
東京都出身。東京外国語大学を卒業後、2008年に学校法人明治大学に入職。教務事務部 経営学部事務室にて学生のサポート・履修成績などの教務事務や留学プログラムの立ち上げなど国際化推進の業務を経て、2018年に学術・社会連携部 社会連携事務室に配属。現在は、明治大学の生涯学習機関「リバティアカデミー」を担当しており、幅広い世代に向けた講座の企画立案から広報活動までを手がけている。
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