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スペシャル・インタビュー
2026.09.01

明治ビジネスチャレンジ歴代受賞者 ピーク・エイダン・ゼファーさん×合田圭佑さん×蓮見大聖さん インタビュー

Meijing

アントレプレナーシップ教育や、起業・スタートアップを目指す学生を支援する「明治ビジネスチャレンジ」。歴代受賞者で、現在それぞれの分野で起業し活躍する3人に、学生時代の挑戦や起業を決意したきっかけ、困難を乗り越えた経験などを伺いました。三者三様の歩みから見えてきたのは、「まず一歩を踏み出すこと」の大切さでした。

プロフィール(左から)ゼファーさん、合田さん、蓮見さん

ピーク・エイダン・ゼファー(理工学部3年)

株式会社ニューロジカ代表取締役。第3回明治ビジネスチャレンジ最優秀賞受賞。
時系列予測を専門とするAIモデルを一から設計・実装している研究開発会社「株式会社ニューロジカ」を在学中に設立し、学生と起業家の二足のわらじを履く。


合田 圭佑(2023年農学研究科博士前期課程修了)

Sympal株式会社代表取締役。第1回明治ビジネスチャレンジ優秀賞受賞。
2023年大学院農学研究科を修了し、食品およびペットフードを開発・販売する「Sympal株式会社」を設立、代表取締役に就任。ビジネスチャレンジ受賞者による起業の第1号となった。


蓮見 大聖(2024年情報コミュニケーション学部卒)

Amateras Space株式会社代表取締役。第2回明治ビジネスチャレンジ最優秀賞受賞。
2024年情報コミュニケーション学部を卒業し、宇宙服やECLSS(環境制御・生命維持システム)の研究開発を行うディープテック・スタートアップ「Amateras Space株式会社」を設立し、代表取締役に就任。

学生の起業は「特別」か
――明治ビジネスチャレンジ歴代受賞者が語る、「始める」という決断

ビジネスプランの評価が自信に

――今振り返って、“起業が現実になった瞬間” はいつでしたか

蓮見さん(以下:蓮見) 2023年度の第2回明治ビジネスチャレンジで最優秀賞に選ばれたときに、「これでやれる」と思いました。ビジネスプランの策定に没頭していた時期は、アルバイトも全て辞め、お金もなく、合田さんにも「ちゃんと食べているのか」と心配されていました。副賞の100万円を頂けたことで当面の活動資金を確保でき、1年間の起業サポートも受けられることになりました。同時期に、NEDOの起業家育成支援事業にも採択されました。自分のビジネスプランが認められたことで、「本気で起業しよう」と背中を押されました。

合田さん(以下:合田) 肝臓の弱い愛犬のため、幼少期は獣医師になりたいと思っていました。その後、ペットの健康には食事が大切だと考えるようになり、人間も食べられる食品と同品質のペットフードを作りたいと思うようになりました。起業を決めてからは、その実現に向けて知識や体力を少しずつ付けていきました。大学3年生のとき、私のXの発信を見た方から「ペットフードを作ってほしい」と依頼を頂き、その開発費を受け取った時に、「これなら会社員にならなくても、自分の技術で食べていける」と感じました。

ゼファーさん(以下:ゼファー) 私は、本当にやりたい研究を続けるために会社をつくりました。最初は、自分たちで費用を出しながら研究を行っていましたが、それだけでは限界があります。やりたい研究を続けるためには利益を生み、その利益を次の研究へとつなげる仕組みが必要です。研究と事業継続のバランスを考えながら、その仕組みを少しずつ形にしていく中で、「起業」が現実味を帯びてきました。利益だけを目的とした依頼はお断りしていますが、社会実装につながる仕事を通じて、研究を続けられる環境を築いています。

「起業が現実になった瞬間」は、それぞれ異なる出来事でした。そこで共通していたのは、自分たちの挑戦が社会から認められ、「これなら前に進める」と確信できた瞬間が、大きな転機になっていたことでした。

卒業生の人脈に感謝

――学生という立場だったからこそ、できたことはありましたか

蓮見 宇宙業界で活躍している方の多くは50~70代です。社会人になってから突然ドアをノックしても、なかなか相手にしてもらえなかったと思います。学生だったからこそ、インターンやイベントに気軽に参加し、多くの方にかわいがっていただきました。学生時代に作ったつながりを通じて、今でも経営の相談に乗っていただいています。一方で、会社として信用を得るまでには時間がかかりました。経験豊富な方に仲間になっていただくためにも、自分自身が知識や経験を積み重ねていかなければならないと感じています。

合田 私の場合は技術を提供するビジネスなので、「学生だから有利だった」という場面はあまりありませんでした。むしろ、年齢が若いことや、博士号を持っていないことで、最初から取り合ってもらえないこともありました。ただ、起業してからは明治大学の人脈に何度も助けられました。農学部農芸化学科の卒業生の方々が打ち合わせの機会を作ってくださったり、相談に乗ってくださったりして、本当に感謝しています。

ゼファー 今も学生ですが、学生という立場そのものがビジネス上のメリットになることはありません。ただ、若いからこそ「面白そうだね」と興味を持っていただけることもあります。その一方で、「本当に技術力があるのか」という目で見られます。そこに応えることができると、「若いのにここまでできるのか」という驚きにつながり、そこから紹介の輪が広がっていきます。また、学生だからこそ明治大学の卒業生の集まりにも参加しやすく、新しいコミュニティに自然と入っていけることも、大きな財産になっています。

学生という立場は、決して有利なことばかりではありません。しかし3人とも、「明大生だったからこそ出会えた人」とのつながりが、その後の挑戦を支える力になったと口をそろえました。同時に、年齢や経験の不足は、自らの技術や実績で乗り越えてきたことも共通していました。

壁にぶつかった時の、それぞれの選択

――“これは無理かもしれない” と思った瞬間はありましたか

蓮見 今でも宇宙服は開発前の設計段階で、決して順風満帆とは言えません。目指すゴールは見えていても、その途中にある「4合目」「5合目」が見えないような、暗中模索の時期もありました。それでも、少しずつ資金調達が進み、著名な投資家や企業から「面白い」と言っていただけるようになりました。そうした一つ一つの評価が、「この方向で間違っていない」という自信につながっています。

合田 私は起業前から、1年目で売り上げを立て、黒字を確保することを計画していました。そのため、1年目は予定通りに推移しました。一方で、ペットフード事業は設備投資など先行投資が多く、2年目は債務超過になりました。ただ、それも事業計画の中で想定していたことです。大きくジャンプするタイプではありませんが、数字を積み上げながら着実に進めるのが自分のスタイルなので、計画を信じて進み続けることができました。

ゼファー 起業前の半年間は、研究費を全て技術開発につぎ込み、手元の資金が尽きたことが一番苦しかったですね。その経験から、外部資金に頼るだけではなく、自分たちの研究が継続できる仕組みを作らなければならないと考えるようになりました。そこで、ある日曜日の朝に社員全員で話し合い、ビジネスモデルを転換しました。研究成果を社会実装し、その利益を次の研究につなげる循環をつくることで、研究も会社も継続できる形へとかじを切りました。その結果、共創する企業や団体とのつながりも広がり、新たな仕事へと結び付いています。

壁に直面した時、評価を積み重ねながら前へ進んだ人、計画を信じて歩み続けた人、事業そのものを見直して突破口を開いた人――。乗り越え方は違っても、「挑戦を続けるための仕組みを考える」という姿勢は同じです。

「明治を背負っていく」気概

――明治ビジネスチャレンジや大学との接点が支えになっていることはありますか

蓮見 やはり、明治ビジネスチャレンジで最優秀賞を頂いたことが一番大きかったです。副賞の100万円は、当時の私にとっては砂漠のオアシスでした。そして「このアイデアで挑戦していいんだ」と認めてもらえたことが、自信につながりました。もし受賞できていなければ、一度企業に就職してから起業を目指していたかもしれません。受賞を機に、「明治を背負って挑戦していこう」という気持ちが芽生えました。

合田 第1回の受賞者であり、起業第1号だったので、私も大学も手探りの状態でした。だからこそ、大学職員の方が親身に相談に乗ってくださり、それが事業を進める上で大きな後押しになりました。また、食品分野では多くの農芸化学科卒業生が活躍されており、「同じ明治ですね」と話が弾む場面も少なくありません。大学で学んだ専門知識だけでなく、人とのつながりも今の仕事に生きています。

ゼファー 私も、明治ビジネスチャレンジで受賞したことが、多くの出会いにつながったと感じています。大学職員や理事の方々、寄付者交流会やメディア交流会でお会いした皆さんとのつながりは、学生だけでは得られなかった貴重な財産です。こうした機会を頂けることに感謝していますし、これからは「就職の明治」だけでなく、「起業も明治」と言われる大学にしていきたいと思っています。

3人の話から見えてきたのは、明治ビジネスチャレンジが単なるコンテストではなく、その後も人とのつながりが続く「スタートライン」になっているということでした。受賞をきっかけに広がったネットワークや大学との関係が、それぞれの挑戦を支え続けています。

大学時代に人生の目的を決める

――今の学生に、“まずこれをやってみるといい” と思うことは

蓮見 好きなことを、とことん突き詰める時間を持つのがいいと思います。でも、その「好き」を見つけること自体が難しいですよね。だからこそ、旅に出たり、多様な人と出会ったりして、自分が何にワクワクするのかを知ってほしいです。社会に出てから振り返ると「大学でしか学べなかった」と思えることがたくさんあります。ぜひ、その環境を存分に活用してほしいですね。

合田 大学で学ぶことが、将来どのようにつながるのかが見えないと、勉強にはなかなか身が入りません。まずは、自分が将来どんな仕事をしたいのか、その仕事をしている人たちが何を考え、どんな研究や仕事をしているのかを知ることが大切です。インターンなどを通じて現場に触れれば、大学での学びの意味も変わってくると思います。

ゼファー 大学時代にやるべきことは、人生の目的を決めることです。自分が何を実現したいのか、そのために何を学ぶのかを考える時間は、とても大切です。もちろん、起業だけが選択肢ではありません。自分の中にある熱を高め、その思いを少しずつ形にしていけば、多くの人との出会いが生まれ、自分らしい道が見えてくると思います。

3人の話に共通していたのは、自分が本当にやりたいことや、夢中になれることを大学時代に見つけてほしいという思いでした。それぞれ異なる道を歩んできた3人ですが、その出発点には「自分の軸を持つこと」がありました。


ゼファーさん、合田さん、蓮見さんのMeijingは「革新を起こす」を意味する “Innovat” ing

学生時代から互いに刺激を受け合い、それぞれ異なる分野で挑戦を続ける3人。自分自身の目標を見据えて歩み続ける姿勢が、3人に共通する強みでした。今後もそれぞれの舞台で挑戦を続けながら、その経験を次の世代へとつないでいきます。

「起業も明治」の実現を目指して――起業・スタートアップ支援室の取り組み

副教務部長(起業・スタートアップ支援担当) 岡田 浩一(経営学部教授)

明治大学が目指しているのは、起業家を増やすことだけではありません。自ら課題を見つけ、考え、行動し、社会に新たな価値を生み出す力を育むことです。その実践の場として、「明治ビジネスチャレンジ」を開催しています。

同コンテストは2022年度に始まり、26年度で第5回を迎えました。社会課題の解決に挑むビジネスプランを学生が提案し、受賞後も専門家による伴走支援やネットワーク形成を通じて、挑戦を継続できる環境づくりに取り組んでいます。今回鼎談に参加していただいた3人も、その環境を活用しながら、それぞれの分野で挑戦を続けています。

また、本学では25年4月に「起業・スタートアップ支援室」を設置し、全学共通総合講座「明治起業家学」「明治スタートアップ学」の運営や学生からの相談対応、起業支援などを全学的に進めています。さらに、校友の皆さまからのご寄付を原資とする「明治大学起業・スタートアップ支援資金」を活用し、学生の挑戦を後押ししています。

起業を目指すかどうかに関わらず、自ら課題を見つけ、一歩を踏み出す経験は、どのような進路にも生きるはずです。今後も本学は、学生一人一人の挑戦を支える環境づくりを進めてまいります。

引き続き、起業にチャレンジする学生へ温かいご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

※ページの内容や掲載者のプロフィールなどは、記事公開当時のものです

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