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2023.06.09

好きなことを、仕事にする―『Fine』編集長・市川博文さん

情報コミュニケーション学部卒業生就活
協力してくれた卒業生市川博文さん(2008年情報コミュニケーション学部卒業)
2022年3月に男性ライフスタイル誌『Fine』(ファイン)の編集長に就任した市川さん。大学卒業後、テレビ局に就職し、スノーボーダーを経て出版社に勤めるという異色のキャリアについて伺いました。
勤務先 株式会社 日之出出版 Fine編集部/編集長

2008年3月、明治大学 情報コミュニケーション学部を卒業。同年4月、TOKYO-MXに入社し、「5時に夢中!」でADを担当。平日は仕事をしながら、休日は大学時代から続けてきたスノーボードに打ち込む日々を過ごす。翌年に新潟県妙高市のスノーボードスクールから声がかかり、本格的にスノーボーダーの道へ。ショップ経由でボードやウェアなどのスポンサードを受けながら、地区予選を通過し、全日本選手権(ハーフパイプ)に出場。2011-2012年シーズンのツアーランキングで16位に。2012年5月、日之出出版に入社。雑誌『Fine』で編集担当を経て、2022年3月から現職。

テレビ局のADからスノーボーダーに

就職活動からスノーボーダーになるまでの道のりを教えてください。

僕は「情コミ1期生」です。2004年に開設した情報コミュニケーション学部を最初に卒業した世代です。今もそうかもしれませんが、当時の情コミには、メディアに関心のある学生がたくさんいました。僕もその一人で、就職活動ではテレビ局や映像作品の制作会社を中心に採用試験を受けていました。

就職したのは、TOKYO-MX(東京メトロポリタンテレビジョン株式会社)です。そこでは、看板番組の「5時に夢中!」でADを担当しました。キー局に比べて一人で受け持つ仕事の幅が広かったため、初年度から良い経験をさせてもらいました。今は雑誌をつくる仕事をしていますが、当時の経験が生きることがあります。雑誌のインタビュー企画では、テレビで街頭インタビューをした時のノウハウが生きたり、ファッションページのモデルカットを撮影する時に、テレビの撮影で学んだ画角を取り入れたり、思わぬところで前職の経験が生きています。

1度目の転機は入社2年目の時です。僕は学生時代から打ち込んでいたスノーボードを、仕事の合間を縫って続けていました。テレビ番組の制作という仕事はとてもハードでしたが、平日は仕事に打ち込み、週末になるとスノーボードに行ったり、大会に出たりするという生活をしていました。

そうして地道に頑張っている中で、新潟県妙高市のスノーボードスクールから声がかかりました。スノーボーダーとして大会に出場し、スノーボードやウェアなどのスポンサーを獲得しながらプロを目指すというお話でした。大好きなスノーボードを仕事にするためのキッカケになるとうれしく思いましたが、本当にやっていけるのか不安もありました。

そんな時、当時お世話になっていた番組のプロデューサーが、「チャンスだと思うなら挑戦すべきだ!今しかできないことはやった方がいい!」と背中を押してくださいました。それで決心できました。この方には今でも感謝しています。

2度目の転機は、スノーボーダー生活3年目のことです。この年、プロ昇格の基準となる国内大会での年間8位を目指して臨んだ国内ツアーで、地方予選を勝ち上がり、北海道で行われた全日本選手権の出場を勝ち取るなど、キャリア最高となる国内16位になりましたが、8位には届きませんでした。全力で臨んだ大会でしたし、当時27歳で、30歳が目前に迫ってきたこともあり、自分の中で一区切りがついたと感じました。

スノーボーダー時代の一枚

『羅生門』の研究からフットサルサークルの立ち上げまで

日之出出版でのキャリアの前に、どんな学生時代を過ごしていたか教えてください。

僕は新聞や雑誌などのメディアに関心があり、ゼミでは現代文学を研究していました。「情コミ1期生」ですから、もちろんゼミでも1期生です。当時のゼミ生には、活字に興味のある人が集まっており、僕と同じく、メディアに就職したいと思っていた人もいました。

学業以外では、同じゼミを専攻していた友人の誘いで、映像制作会社でアルバイトを始めました。小さい頃からスポーツが好きだったので、もともとは「活字×スポーツ」という考えで、スポーツ新聞の仕事にとても興味があったのですが、この時映像の仕事に関わったことでテレビや映画などの映像制作にも興味が湧きました。

ちなみに卒業論文では、『羅生門』について研究しました。芥川龍之介の小説も面白かったのですが、映像制作にハマっていたこともあって、黒澤明監督の映画を軸に研究しました。研究を進める中で一段と興味が強くなり、「やっぱり自分は映像作品が好きなんだな」と実感しました。その後の就職活動では、映画とドラマのみに絞って試験を受けるなど多大な影響を受けました。

それから、これはその後のキャリアに直結する話ではありませんが、情報コミュニケーション学部の友人とF.C.Montanaというフットサルサークルを立ち上げました。その後、公認サークルにまで成長しています。振り返ると、好きなことをやりきった学生生活でしたね。

判断の基準は「自分がワクワクするかどうか」

今、日之出出版ではどのようなお仕事をしているのですか。

『Fine』という雑誌で編集長をしています。雑誌の編集長は音楽で言えば指揮者のような役割で、企画や雑誌全体をしっかりとイメージしてコントロールしています。毎号毎号、全ての企画担当者と入念に打ち合わせし、一つの雑誌としての方向性を打ち出します。

編集長として大事にしている考え方は、「自分がワクワクするかどうか」をフィルターにすること。『Fine』の読者層は20代後半~40代の男性です。平日は街でしっかり働き、休日になると海や山などの自然の中で遊ぶ。そんなアクティブ思考を持つ大人に向けて、ライフスタイルを提案しています。自分自身がそうした読者層のど真ん中にいる人間なので、いろいろな企画の検討をする中で、最終的には自分自身の感覚を信じるようにしています。

ただ、自分が知らないことに関しても、積極的に取り入れるように意識しています。パッと見では面白くないように思えることも、印象だけの判断で選択肢から外してしまったら新しい発見はありません。見方を変えれば面白くなることは世の中にたくさんありますからね。そういう意味では、知らないことに出会えることは幸せなこと。今では知らないことがあるとワクワクする感覚さえあります。

ちなみに、「知らないことは知っている人から教えてもらえばいい」という当たり前のことに気付かせてくれたのが、今の仕事です。Fine編集部には、さまざまな得意分野を持った人たちが集まっているので、それぞれの力をうまく組み合わせて一つの雑誌を作るようにしています。

『Fine』2023年1月号を手に

ON・OFFを切り替えて、自分が楽しい時間、自分らしい時間を大切に

明大生・受験生へのメッセージをお願いします。

遊びの時間を大事にしてほしいです。僕の場合はスノーボードやサーフィンですが、そうした外遊びでなくても、友人と食事をしたり街でショッピングをしたりするのでもいい。自分が楽しい時間、自分らしい時間があるからこそ、自分が自分でいられる気がします。

社会人になったら、仕事のときは「ON」モード。自分らしくいたくても、それだけではいられないのが現実です。だからこそ、休日などの「OFF」モードの時にしっかりとリセットすることで、「ON」モードに戻った時にフレッシュな頭でさまざまな問題を解決できるようになります。

テレビの仕事をしていた頃は、まだ若かったこともあり、なかなかうまくOFFの時間を作り出すことができませんでした。逆にスノーボーダー時代は、好きなことにどっぷりと漬かるOFFの時間がたくさんありました。僕はもともとONとOFFの切り替えがうまい方ではなかったのですが、正反対ともいえる2つのライフスタイルを経験したことで、意識的に切り替えられるようになりました。

編集長になってからは時間に追われることがより多くなり、自分の思い通りにいかないことも増えていますが、だからこそ、より意識的にON・OFFを切り替えています。その方が仕事ばかりしているよりも、新しいことや面白いことを思いつくし、常にフレッシュな頭でいられるので、仕事もはかどります。休む時は休んだ方が、仕事の能率がアップすることも多いです。

明大生や高校生の皆さんも、勉強や部活動などで忙しく過ごしているのではないかと思います。そのような中でも、自分が楽しい時間、自分らしい時間を大切にしてください。きっと一つのことを詰め込み続けるよりも、頭の中を整理できたり、新たな発見が生まれたりすると思います。これからも頑張ってください。応援しています。

※ページの内容や掲載者のプロフィールなどは、記事公開当時のものです
※記事中に掲載した写真は撮影時のみマスクを外すなどの配慮をしております

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