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2023.10.13

日本プロ麻雀協会 第21期雀王 浅井堂岐さん・第21期女流雀王 水崎ともみさんインタビュー

経営学部卒業生インタビュー

こちらの記事は、「明治の“いま”がこの1冊に!」広報誌『明治』第98号からの転載になります。

2022年、日本プロ麻雀協会に明大旋風が巻き起こりました。浅井堂岐選手が同協会最高峰のタイトル戦である雀王決定戦を、そして水崎ともみ選手が女流雀王決定戦を制し、タイトルを獲得。そんなお二人にプロとしてのやりがいを伺うと、口を揃えて言いました。
応援してくれる方が喜んでくれること――。
学生時代に始めた麻雀ですが、今後のさらなる活躍に向けて、闘牌はまだまだ始まったばかりです。
プロフィール浅井堂岐さん(2009年経営学部卒業)・水崎ともみさん(2011年経営学部卒業)

浅井堂岐(写真右)
2009年明治大学経営学部経営学科卒業。2010年日本プロ麻雀協会9期後期入会。2021年に皓王位を獲得。2022年に、同協会最高峰のタイトル戦である雀王決定戦で優勝、第21期雀王を獲得した。

水崎ともみ(写真左)
2011年明治大学経営学部経営学科卒業。2009年日本プロ麻雀協会8期後期入会。2022年に女流雀王決定戦に4回目の挑戦で優勝し、第21期女流雀王を獲得した。

タイトルを獲得して起きた変化

――雀王、女流雀王の獲得、おめでとうございます。タイトルを獲得されて半年が過ぎましたが、変化はありましたか?

浅井 雀王決定戦の対戦相手3人が全員Mリーグ(※1)の選手という注目度が高い対局となり、そこで勝つことができたので、3人のファンの方をはじめ多くの麻雀ファンの皆さまに知っていただくことができました。雀王を獲得したことでMリーグの解説者も務めさせていただき、麻雀関係者からも声をかけていただくことが多くなりました。X(旧 Twitter)のフォロワー数も3倍ほどに増えましたね(笑)。

※1 Mリーグ:一握りのトッププロだけが出場できるチーム対抗戦の麻雀ナショナルリーグ

水崎 ありがたいことに、とても仕事が増えました。最近では地方の麻雀店にゲストとして呼んでいただけるようになり、北海道や大阪など飛び回っています。また、これまでは出場することができなかった大会や、テレビや動画配信サイトでの放送対局で麻雀を打つ機会が増え、著名な選手と対戦できたことは大きな変化でした。

――麻雀のプロを目指したきっかけを教えてください。

浅井 大学4年次に、就職活動が終わって居酒屋でアルバイトをしていた時に、同僚が麻雀店でのアルバイトを掛け持ちしていて、そこに誘われたのがきっかけです。その店は麻雀プロが経営をしていて、働いている方も全員プロという環境でしたが、その中でも私は良い成績を残すことができていました。それから大学を卒業して就職したのですが、営業の仕事で土日も働いていたので、この時はまだ麻雀プロになろうという気持ちはありませんでした。

仕事をしながらも趣味で麻雀を続けていたのですが、強い相手と対戦する機会が減って面白くなくなってきてしまいました。そんな時に、以前一緒に働いていた仲間がプロの世界で活躍しているのを見て、私も同じステージで戦ってみたいと考えプロを目指しました。

水崎 私も就職活動が終わって、これが人生最後のアルバイトになると思って始めたのが麻雀店でした。その後留年をしてしまい引き続き麻雀店で働いていたのですが、そのタイミングで周りからプロ資格を取得することを勧められて目指すことにしました。

――水崎さんが働いていた麻雀店にも、他にプロはいたのですか?

水崎 いませんでした。それもあって、お店の人から勧められたんだと思います。麻雀店で働くまでは麻雀プロという存在も知りませんでした。

――麻雀プロというのは、どのようなお仕事なのでしょうか?

浅井 プロと言ってもすぐに収入がある訳ではなく、所属する団体に年会費などを支払ってリーグ戦などに出場しています。収入を得る方法は人によってさまざまですが、まずは麻雀店で働くということが一つです。特定の店舗で働くこともあれば、ゲストとして呼んでいただくこともあります。

実績を積んで有名になってくると、執筆活動や放送対局、また、実況や解説といった仕事を頂けるようになります。ただ、放送対局に呼ばれるのはプロのうちでもほんの一握りで、多くのプロはまずリーグ戦に出場して、成績を残すためにがんばっています。

水崎 麻雀教室の講師をすることもあります。やはり、プロという名前が付いていた方が、受講される方にも安心してもらえるようです。最近ではMリーグを見て、健康麻雀(※2)の人口も増えているので、そういった機会は増えていますね。

※2 健康麻雀:「飲まない、吸わない、賭けない」を徹底し、純粋にゲームを楽しむための麻雀

実感する麻雀界の盛り上がり

――年々Mリーグも盛り上がり、麻雀に対する目が変わってきているのではないでしょうか?

浅井 かなり変わったと思います。まず、女性が増えましたね。それは、女性ファンという意味でもそうですし、実際に麻雀をする人も増えています。麻雀のことを知らなくてもMリーグを見ている人が結構いて、Mリーグの選手が参加するイベントに来て「今日初めて麻雀を打ちます」と言いながら、震える手で打っている方もいらっしゃいました。麻雀に興味を持つ人が増えたと実感しています。

水崎 「麻雀牌に初めて触ります」という方に会う機会は増えましたよね。

――麻雀の魅力、面白さはどのようなところにありますか?

浅井 まず一番は、今日麻雀を始めた人でも1回の勝負であればプロにも勝てるということだと思います。もちろん、100回やったら私が勝ちます(笑)。でも、一度だけの勝負であれば簡単に負けてしまうこともあるので、そういったところは魅力だと思います。

また、勝つパターンが一つではないのも面白いですよね。確率的に考えればこうするべきというのは決まっていても、人によって進め方が全く異なります。麻雀牌という決められたものを使っているのに、その人の考え方や性格によって全然違うので、競技をしている側も面白いですし、放送を見ている方も楽しんでくださっているのではないかなと思います。

水崎 同じ配牌(※3)だとしても人によって進め方が違うということ、そして全く同じことが起きることがないので、勉強をし続けなければいけないということも魅力だと思っています。進め方にいろいろなパターンがあって、どれを選んでも正解にたどり着けそうな場面でも失敗したり、途中で失敗したと思っていても最後は成功したり、それも面白さではないでしょうか。

※3 配牌:初めにプレーヤーに配られる牌

浅井 だから、勝って悔しいこともあるし、負けてもうれしいことがありますね。「昨日、内容は完璧だったな」とか(笑)。

――麻雀プロとして、どのような時にやりがいを感じますか?

水崎 応援をしてくださる方が私の対局を見て、共に一喜一憂してくださることがやりがいにつながっています。女流雀王決定戦に出場するためには女流リーグで一番上のAリーグで1年間戦って上位に入る必要があり、私は今回で4回目の決定戦出場になったのですが、回を重ねるごとに応援してくださる方が増え、そしてタイトルを獲得した時には「本当に取れて良かったね」とたくさんの方に喜んでいただきました。

プロの仲間、お店のお客さまやスタッフ、そして明治大学の卒業生の方からも声をかけていただき、本当にうれしかったです。

対局中の水崎さん

浅井 私の活躍を自分のことのように喜んでもらえるのは、とてもうれしいですよね。私も、応援してくださる方と一緒に喜びを分かち合えることにやりがいを感じています。

また、私は一番上に上り詰めることだけを目標にやってきたので、今回雀王のタイトルを獲得できたのはうれしかったですね。雀王決定戦も女流雀王決定戦と同様にトップのA1リーグで上位に入らなければいけないのですが、私はその一つ下のA2リーグに6年間いたので、その時期はかなりつらかったです。苦しい時間が長かった分、喜びもひとしおでした。

対局中の浅井さん

――浅井さんは卒業後に営業の仕事をされていたそうですが、現在も続けていらっしゃるのですか?

浅井 今はシステムエンジニアをしています。昨年雀王を獲得するまではうまく両立できていたのですが、おかげさまで最近は麻雀の仕事が増えてきたので忙しい日々を送っています。平日の活動も増えているのですが、理解のある職場なので、残業も少なく在宅勤務がしやすい部署に異動させてくれるなど支援していただいています。

――水崎さんは今でも麻雀店で働いていらっしゃいますか?

水崎 初めに働いていたお店とは異なりますが、今も麻雀店で働いています。私も女流雀王を獲得してから仕事が増えているので、お店や仲間に負担をかけてしまっています。それでも、みんなサポートをしてくれているので、ありがたいですね。忙しく大変ですが、タイトルを取ったからこそ解説やゲストに呼んでいただけているので、うれしく思っています。

学生時代に出会った麻雀

――明治大学に進学した理由を教えてください。

浅井 私が通っていた高校は男子校で、私服通学が可能な自由な校風でした。その校風が明治大学に近いと感じて志望するようになりました。他にも目指していた大学があり、合格もいくつか頂きましたが、学部や家からの距離、また、親にどの大学が良いか相談をした時に「明治が良いんじゃない?」と言ってもらえたので、最終的に決断しました。

水崎 私は元々理系でした。でも高校3年の時に物理が苦手だと気付き、得意な数学を生かすことができる経営学部の受験を視野に文系へ転向しました。国公立の大学もいくつか合格を頂いていたのですが、家族で話し合い、通学がしやすく知名度が高い明治大学への進学を決めました。

――学生時代はどのように過ごしましたか?

水崎 私は剣道と旅行のサークルに入っていました。小さい頃から剣道をしていたのですが、高校が進学クラスで部活に入ることができなかったので、大学で再開しました。どちらのサークルでも、よく麻雀をしていました。

――大学生の時に麻雀を始めたのですか?

水崎 高校生の時にゲームセンターで麻雀のゲームを見て興味を持ち、大学に入って初めて麻雀牌を触りました。サークルの合宿で麻雀をする機会が多く、だんだんと覚えていきましたが、麻雀をするのは男子ばかりで、サークル内で麻雀をする女子は私だけでした。

浅井 学生時代によく行っていた明大前の麻雀店にいつも一人だけ女の子がいた記憶があるのですが、ほぼ間違いなく水崎さんだったのだと思います(笑)。

水崎 お店にいる女子は私だけでしたからね(笑)。同じ明大生なので、授業終わりなど、お店にいる時間が大体同じなんですよ。

浅井 もしかすると、1日で20時間くらい同じ空間で過ごしていた可能性がありますね(笑)。当時はお互いに知りませんでしたが、こうして同じ年にタイトルを獲得し、それも同学部・学科の卒業生ということは奇跡的なことだと思います。

――浅井さんが麻雀と出会ったのはいつ頃ですか?

浅井 私は大学1年次にサークルの友達に誘われて麻雀を始めました。母がテレビゲームで麻雀をしているのを見ていて仕組みは少し分かっていたので、「麻雀できる?」と聞かれてやってみようと思いました。

この時誘ってくれた3人とは今でも麻雀をするのですが、今でも私が負けることがあるくらい強くて、始めた当初はかなり負けてしまいました。それがとても悔しくて、1年次の夏休みの間に麻雀の本を5冊くらい読んで勉強しました。初めての大学の夏休みは、アルバイトをしている以外はずっと麻雀のことを考えていた気がしますね。その3人は、ずっと私を応援してくれています。

――ゼミではどのようなことが印象に残っていますか?

水崎 私は安部悦生先生のゼミで経営史の勉強をしていました。安部先生は私が留年している間に学部長になられて、卒業式で学位記を頂いた時には「やっと卒業できたね」と声をかけていただきました。ゼミでは研究発表のために京都へ行ったことや、大学の山中湖セミナーハウスでの合宿で卒業論文の発表会をしたことが思い出に残っていますね。一学年上の先輩と一緒に合宿に行くのですが、その時も麻雀をしていました(笑)。ゼミはみんな仲が良く楽しかったです。

浅井 私は歌代豊先生のゼミで経営戦略を学んでいました。プレゼンテーションをする機会が多かった記憶がありますが、このことが現在放送対局で解説をする時に生きていると感じています。また、麻雀以外の知識がないと解説では話題が広がらないのですが、大学で勉強した知識が今、役立っていると実感しています。

水崎 大学には多くの地域や海外からさまざまな学生が集まってくるので、人と対話する能力が磨かれたと思います。麻雀店は、初対面の方と話す機会が多い職場なので、大学での経験が生きていますね。また、明治大学を卒業したということは大きな武器になっています。最近はお店で明治大学を卒業されたというお客さまから声をかけていただくことが増えました。

浅井 麻雀関係者の方でも卒業生が多くいますしね。明治大学のつながりに助けられています。

新たな目標に向けて

――今後の目標を教えてください。

水崎 私はこれまで女流雀王になることを目標にプロを続けてきたので、今の目標はやはり連覇です。今回女流雀王になってからお店で新しく働き始めた人が、私のことを知ってくれていました。他にも、アルバイトで働いている子から「サインもらっていいですか?」と聞かれて、憧れの気持ちを持って接してくれたことがとてもうれしかったですね。今後はさらに他のタイトルも獲得するなど、応援してくださる人の気持ちに応え続けられるような存在になりたいと思います。

また、「水崎さんに麻雀を教えてもらえてうれしい」と喜んでくださる方もいます。今は店舗内で教えるぐらいしかできていませんが、麻雀を始める人が増えているので、麻雀の普及に貢献できたらいいなと考えています。

浅井 私の今の一番の目標はMリーガーになることです。この目標を達成するために計画を立て、まず「皆さんに知ってもらう」ため、YouTubeチャンネルを開設しました。それから見た目も大事だと考えて身体を鍛えたり、解説でも呼んでいただけるように勉強もしたり、やるべきことは全てやってきました。Mリーガーになることができたらまた目標ができると思いますが、麻雀だけで生活ができるようになりたいですね。そしてもちろん、雀王連覇を目指したいと思います。

――最後に、明治大学の学生に向けてメッセージをお願いします。

浅井 麻雀プロは多くの人が日の目を見ることができない世界で、私も「雀王になれる日が来るのかな」という不安と戦ってきました。両親にも迷惑をかけてきましたが、それでも続けることができて雀王になれたのは、大学の仲間など、周りの人の支えがあったからです。皆さんもこの先、つらいことがあると思いますが、支え合える仲間と学生時代に出会えることを祈っています。

もちろん、一人で生きていきたいという方もいると思います。そうであれば、自分の生きやすいフィールドを自らの手でつくり上げられるように努力してみてください。

水崎 何事も続けることが大切です。どんなに細い道でもいいから、やりたいことを続けていれば、いつかは結果が出るかもしれません。結果が出ずに辞めたくなる時もありますが、飽きっぽくて物事が続かない性格の私も、一つのことを続けて目標を達成することができたので、ぜひ皆さんも続けるということを大切にしてみてください。

――本日はありがとうございました。今後も応援しております!

※ページの内容や掲載者のプロフィールなどは、広報誌『明治』第98号発行当時のものです
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