
こちらの記事は、「明治の“いま”がこの1冊に!」広報誌『明治』第100号からの転載になります。
1984年 千葉県山武市(旧:成東町)生まれ
2007年 明治大学農学部農業経済学科(現:食料環境政策学科)卒業
2009年 明治大学大学院農学研究科農業経済学専攻博士前期課程修了後、学校法人明治大学に就職
2017年 学校法人明治大学を退職後、神奈川県川崎市にて都市型農業を学ぶ
2019年 千葉県茂原市にて新規就農者として認定を受ける
2020年 観光農園「いばちゃんちのいちご園」を開園し、現在に至る
憧れへの挑戦、前へ
私は現在、千葉県茂原市にて、いちご狩りと直売をメインとした観光農園を経営しています。栽培面積20アールの決して大きくはない農園ですが、シーズンになると、大変ありがたいことに、毎年多くのお客さまがご来園くださいます。観光農園ということもあり、お客さまが複数の品種を食べ比べできるよう、スーパーなどでよく目にする品種から近年誕生した新品種まで、今シーズンは9品種を栽培しています。

私の実家は農家ではなく、いわゆるサラリーマン家庭でした。ただ、実家のある山武市はいちごの栽培が千葉県内でも非常に盛んなエリアで、幼少期は、いちごのシーズンになると、近所のいちご農園のお手伝いとして、親と一緒に直売の店番をしていました。「三つ子の魂百まで」ではありませんが、この経験が私にとって最初に触れたビジネスの現場だったと記憶しています。
大学ではくしくも農学部農業経済学科に入学。この学科には、「ファームステイ実習」という実際の農家で一週間寝食を共にして農作業を手伝うという農学部ならではの科目があります。学部生の時は、山梨県笛吹市の桃農家で、大学院生の時は、学部生の引率も兼ねて山形県天童市のさくらんぼ農家でお世話になりました。どちらも収穫期でのお手伝いで、農業の大変さを肌で感じるとともに、素人ながら疲労の中にもやりがいや充実感を得る経験をしました。
そんな学生時代を過ごしましたが、あくまでも就農に対しては「憧れ」や「夢」にとどまっていました。大学院修士課程を修了後は、学校法人明治大学に職員として就職。教育現場の最前線で仕事をする中で、学生の成長する姿を目の当たりにし、「育む」ことへの魅力と、幼少期と学生時代の経験や憧れが強くリンクし、33歳の時に脱サラを決意しました。

退職後、ご縁があり明治大学商学部で教鞭を執られていた松本穰先生(現:名誉教授)が開園された川崎市にある都市型農業公園の運営に携わりながら、近隣農家の方の指導の下、農業全般の研修を受けました。ここでは、農業のノウハウだけでなく、広い人脈を築くことができました。また、社会に出た時に大切な「人間としての本当の頭の良さとは」ということを、改めて松本先生から学ぶことができました。
そして、2019年春に新規就農として独立を決意。地元の山武市に戻り、観光農園に適した農地を探し始めるも、なかなか条件のそろった農地が見つからず、非常に苦戦しました。そこで、山武市内に限定せず、検討エリアを広げることにしました。
そうしたところ、知人から茂原市内に農地を所有しているオーナーを紹介してもらうことになりました。これも不思議なご縁で、そのオーナーは明治大学農学部卒の大先輩の方でした。そうと分かると話は早く、また、観光農園としての農地の条件も満たしていたため、無事に賃貸借契約を結ぶことができ、ついに新規就農者としてのスタートラインに立つことができました。
新規就農して、今シーズンで4シーズン目に入りました。いちご狩りや直売を主体とした観光農園は、市場への出荷と異なりお客さまがいらっしゃって初めてビジネスが成立します。お客さまの中にも、明治大学ご出身の方がいらっしゃって、声を掛けてくださり、接客そっちのけで話が盛り上がることもしばしばあります(笑)。また、学生時代のゼミの仲間や元職場の同期や先輩後輩、教員の方もご家族でご来園くださり、改めて紫紺の絆の強さを感じます。

新規就農という夢の舞台に何とか立つことはできましたが、まだまだ不安定な産業である農業。そんな険しい環境への第一歩を踏み出させてくれたのは、明治大学で培った「前へ」の精神から生成された「行動力」だと自負しています。そして、この行動力をバックアップしてくれた全国(あるいは全世界)に広がる未知なる紫紺ネットワークによるご縁。
この紫紺のご縁から新たにつながるご縁に感謝しつつ、多くの方が笑顔になるようないちごを、これからも育んでいきたいと思います。
Meiji NOWでは、Xアカウント(@meiji_now)で日々の更新情報をお知らせしています。Xをご利用の方は、以下のボタンからMeiji NOW公式アカウントをフォローして、情報収集にご活用ください。
※ページの内容や掲載者のプロフィールなどは、記事公開当時のものです