
明治大学地域連携推進センターは、協定に基づく連携事業として「学生派遣プログラム」を実施しています。「学生派遣プログラム(公募型/課外活動)」を通じ、連携地域が取り組むプロジェクトの推進や、地域振興に貢献しつつ、参加学生が地域への理解を深め、社会性を培う機会となることを目的に実施しています。
2024年度の学生派遣プログラムである「鳥取県鳥取市『若者が魅力的だと感じる地域づくり』」に参加した、篠原さんにお話を伺いました。
プログラムでの活動内容を教えてください。
今回のプログラムでは、「若者が魅力的だと感じる地域づくり」をテーマに、具体的な施策の立案と実行を目指して活動を行いました。私たちの活動は二つの柱から成り立っていました。一つは、鳥取市の課題を深く理解し、若者が本当に興味を持ち、愛着を感じる地域にするための解決策を見出すこと。もう一つは、出身地にかかわらず、若者が鳥取という地域に親しみを持てるような具体的な施策を考え、提案することです。
事前活動では、鳥取市役所の方々から鳥取市の概要、中山間地域と中心市街地が抱える課題についてのレクチャーをオンラインで受け、地域に対する理解を深めました。その後、8月26日から28日の3日間にわたり現地調査を実施し、鳥取市役所や「とっとり若者地方創生会議」の学生の皆さんにたくさん協力していただきました。中心市街地を歩きながら人々の温かさや自然に触れ、鳥取の魅力や課題を直接体感し、若者目線での「地域の魅力の発掘」と「課題の整理」を行いました。

また、中山間地域の調査では、吉岡温泉や「いなば西郷工芸の郷」の取り組みを視察し、用瀬町 でのフィールドワークや「週末住人の家」での地域住民との交流を通じて、地域資源や課題に対する実感を得ることができました。
帰京後は、現地調査の結果を中間報告として発表し、関係者の方々からのフィードバックを基に、施策をさらにブラッシュアップしました。そして最終報告会では、鳥取市役所や「とっとり若者地方創生会議」などお世話になった方々に向けて、私たちの提案を発表し、「若者が魅力的だと感じる地域づくり」に向けた具体的な施策を報告しました。


プログラムへの応募理由を教えてください。
私が本プログラムに応募した理由は、三つあります。
➀チームの仲間と共に「若者が魅力的だと感じる地域づくり」を実践の場で具現化したい
一つ目は、大学最終学年として、この4年間で培った学びや知識を実践の場でアウトプットし、チームの仲間と共に「若者が魅力的だと感じる地域づくり」を具現化したかったからです。大学生活での学びは、理論的には充実していましたが、実際に地域社会の中でどのように応用されるのかを体験する機会をもっと得たいと思いました。
日本には地方創生を含むさまざまな社会課題があり、自治体ごとに多様なアプローチが図られています。しかし、理想を掲げても、それを具体的に実現し、成功させている自治体は多くありません。そこで、私自身の力を地方創生に生かし、学生としての視点や若者としての感覚を持ち寄ることで、現実的な目標達成に貢献したいと考えました。「このプログラムを通じて、自治体の方々や意欲的な仲間と力を合わせ、共にビジョンを実現してみたい」という思いが強かったです。
➁地方出身かつ都心の明治大学の学生として、鳥取市が掲げる「若者が魅力的だと感じる地域づくり」に貢献したい
二つ目は、地方出身かつ都心型キャンパスに通う明治大学の学生として、鳥取市が掲げる「若者が魅力的だと感じる地域づくり」に貢献したかったからです。私は自然に囲まれた地方の田舎で生まれ育ち、地元の地域活性化や地方創生の課題を目の当たりにしてきました。地元を愛する一方で、東京での大学生活を通じて、都市部と地方の文化や暮らしの違いを体感し、地方が抱える課題をより明確に認識するようになりました。
これまで大学の講義を受講する中で、産業と地域のつながり、地域の特性を生かした産業の発展がどれだけ重要であるかを学びました。特に、地域の中で人材を育成し、魅力的な産業を創出することが地方活性化に不可欠であると感じました。私は、このプログラムで地域の課題解決に挑むことにより、大学生活で得た知識や学びを「机上の空論」に留めず、しっかりと行動に移すことで課題解決をしたいと考えました。
➂鳥取市の魅力を全国に伝えたい
三つ目は、鳥取市の魅力を全国に伝えたいという思いからです。鳥取市には「鳥取砂丘」「砂の美術館」「鳥取しゃんしゃん祭」「ホタル祭り」など、自然や文化の魅力があふれています。しかし、2023年の「都道府県魅力度ランキング」では鳥取県が41位と評価されており、これらの魅力が全国的に十分に知られていないことを痛感しました。
私自身はこれまで鳥取県を訪れたことがありませんでしたが、以前から興味を持っており、大学生のうちに訪れてみたいと思っていました。そんな時、このプログラムを知り、すぐに鳥取市の地域づくりに参加したいと決意しました。若者の視点で鳥取市の魅力を発信することで、「鳥取に住みたい」「鳥取が好き」と思ってもらえるような施策を考え、SNSなどのメディアも活用しながら、特に若い世代にその魅力を届けたいと思いました。
活動の中で、印象に残った出来事や印象に残った言葉があれば教えてください。
鳥取は、人の温かさと親しみやすさが魅力
今回の活動を通して、最も印象に残っているのは、鳥取の皆さんの温かさと親しみやすさです。特に、2日目の夜に用瀬町で参加した「週末なべ部」の活動では、その温かさを肌で感じました。私たちが到着するや否や、地域の方々が笑顔で「遠くから来てくれてありがとう」と迎えてくださり、温かな言葉で私たちの心を包み込んでくれました。その時にふと、「ここは都心では味わえない『人と人との距離感』があるな」と感じ、すぐに心が和みました。
さらに、地元の方との会話の中で、「よそから来た人にも鳥取の良さを知って帰ってほしい」という言葉を聞き、鳥取の方々が自分のふるさとを愛し、誇りを持っている姿勢に感動しました。この言葉を聞いた瞬間、単なる交流ではなく、鳥取の文化や歴史を肌で感じられる貴重な経験をしているのだと改めて実感しました。
また、地元の方が手土産にと持ってきてくださった名産品をいただく場面でも、鳥取の暮らしや習慣の話に耳を傾ける中で、言葉だけでは伝えきれない「生活への愛情」を感じました。「自分もこの地に根付く人々のように、周りを大切にする温かな心を持ちたい」と強く思いました。
その他にも、吉岡温泉の視察では、「一ノ湯」さんが特別に温泉に入らせてくださったり、「デストピア吉岡 フクジュエン」という閉館した旅館をリニューアルしたお化け屋敷を、営業時間外であるにもかかわらず、わざわざ中を案内してくださったりと、私たちを特別に受け入れてくださる姿勢が非常に印象的でした。こうした鳥取の皆さんの一つ一つの温かい心遣いが、活動全体を通して強く心に残っています。

活動の中で苦労したことと、それをどのように乗り越えたかを教えてください。
台風の影響で現地調査の日数が予定より短縮され、施策の方向性を一から再考しなければならなかったことです。当初の予定では、最終日の鳥取市役所での中間活動報告に向け、5日間の現地調査を行い、特に4日目のグループ行動で得る地域の生の声や具体的なデータを基に「若者が魅力的だと感じる地域づくり」の施策を組み立てていく計画でした。
しかし、4日目の現地調査が台風で中止となり、すでに考え進めていた施策案の方向性を見直す必要が生じました。私たちは、短縮された現地調査の期間で得られた貴重な情報をどう生かし、施策を再構築するかに悩みました。そこで、まずは現地調査で得たデータを一つ一つ整理し、活動時間外もメンバーと集まって徹底的に話し合うことで、この事態を乗り越えました。
特に、限られたデータから地域の方々が本当に求めているものや、地域資源の魅力をどのように若者向けに伝えられるかを重点的に考えました。各メンバーが異なる視点から意見やアイデアを出し合い、使えるものは全て施策に生かすよう試行錯誤を繰り返しました。結果として、事前準備の段階で計画していた施策に固執せず、柔軟な発想で新たなより良い施策を立案することができました。
活動全体を通して学んだことや成長したこと、自身の中での変化を教えてください。
活動全体を通して学んだことは、困難に直面したときの柔軟な対応力と、チームで協力することの重要性です。特に台風の影響で現地調査の日程が短縮された際には、事前に考えていた施策を一から再考せざるを得なくなり、非常に頭を悩ませました。しかし、限られた時間でメンバーと議論しアイデアを出し合い、試行錯誤を重ねていくことで、問題解決への対応力を養うことができました。
また、この経験を通じて、物事に対する自分の視野が広がったと感じています。計画通りに進めることに捉われず、「その時にできる最善の方法」を考えることの大切さを実感しました。特に、自分の常識の範囲内で考えるのではなく、地域の方々のニーズをより深く理解し、それを若者の視点でどう伝えるかという視点から、相手の立場に立って施策を立案するという意識が自分の中で芽生えました。
さらに、メンバーと密に連携を取る中で、チームで協力して成果を出す喜びや、メンバーそれぞれの強みを生かして取り組むことの価値を感じました。自分一人では成し得ないことも、チームだからこそ実現可能な形にすることができ、目標を達成できた経験は自分にとって大きな成長となり、自信にもつながりました。今後も、こうした柔軟な対応力や協力の姿勢を持ち続け、さまざまな課題に前向きに取り組んでいきたいと考えています。
この活動をどのような人に勧めたいですか。
地域振興や地方創生に興味があり、地域の課題解決に本気で向き合える学生には、ぜひお勧めしたいです。
この活動では、地域が抱える複雑な課題を自ら見つけ出し、その課題に対して持続可能な解決策を考え、実行する力が求められます。また、活動は個人で取り組むのではなく、異なるバックグラウンドを持つメンバーと共にグループで行うため、全員の意見を尊重し、多様な視点を取り入れながら協力していく姿勢が非常に重要です。メンバーの声を傾聴し、相互理解を深めた上で意思決定を行うことが、この活動を成功させる鍵になります。
さらに、地域の方々や自治体の皆さまなど、貴重な機会を提供してくださる多くの方々のご支援や期待に応え、自分の考えを的確に伝えるコミュニケーション力や、課題の本質を見抜く分析力も不可欠です。単に課題を解決することが目的ではなく、そのプロセスを通じて、地域の魅力や課題に対する深い理解を得ることを目指します。この経験を通じて培うスキルや人とのつながりは、自身の成長のみならず、将来的に地域の発展に貢献できる力となると私は考えます。
加えて、活動は半年間にもわたり、グループで知恵を絞り、実現可能な施策を立案し、最終報告を行うまで続きます。地域の方々と直接交流しながら、その期待に応えつつ、責任感を持って主体的に行動しなければならないため、大変な場面もあります。しかし、グループ全員で一つの目標に向かい、最後までやり抜くことで得られる達成感や、この活動を通して得られた自信、人とのつながりは何物にも代え難い人生の財産となります。

将来の目標を教えてください。
今の私の目標は、家族をはじめ、これまで支えてくださった方々へ感謝を行動で示し、恩返しができる人間になることです。今回の活動もそうですが、これまでさまざまなことに挑戦し続けられたのは、決して私だけの力ではありません。家族や友人、大学職員の方々、そしてお世話になった多くの方々の支えや励ましがあったからこそ、私自身も前に進み続けることができました。彼らが示してくれた期待と信頼に応えるためにも、これからは私がその感謝を形にし、周囲に恩返しをする番だと強く感じています。
自分の夢を追いかけながらも、社会や周囲の方々に貢献することを大切にしていきたいです。感謝の気持ちを忘れずに、人や社会の役に立てるような行動や実績を積み重ねることで、周りの人たちへの恩返しを実現したいと考えています。
そして、私が自分の目標を達成する姿を見てもらうことも、恩返しの一つになると考えています。支えてくれた方々への感謝を胸に、これからも精一杯努力を続け、信頼に応える人間に成長していきたいです。
明大生・高校生に伝えたいメッセージをお願いします。
大学生活の4年間は、振り返ればあっという間です。だからこそ、この時間を自分の将来の選択肢を広げ、自分の可能性を見つけるために最大限活用してほしいです。よく「今が人生で一番若い」という言葉を耳にしますが、新しい挑戦に「遅すぎる」ということはありません。高校生でも、大学生でも、その一歩を踏み出したその日が、その人にとっての「最も若い日」です。
ぜひ、今こそ、少しでも興味を感じたことや、心がワクワクすることに、深く考え過ぎず飛び込んでみてください。もし今、あなたが目の前の選択に迷っているならば、自分が心からワクワクする方を選び、思い切って行動に移してみましょう。これは私自身が高校生の頃から意識してきたことです。まずは一歩踏み出し、その後はとにかく「量」をこなしてみてください。行動し続け、挑戦を重ねる中で必ず新しいチャンスが見えてくるものです。
頭の中だけで考えていたり、悩んで立ち止まっていると、せっかくのチャンスを逃してしまうかもしれません。行動すること、挑戦することは決して簡単なことではありませんが、大学生活のこの時期だからこそ得られる貴重な経験が必ずあります。「学生」という今だけの特権を活かし、思いっ切りいろいろなことに挑戦してみてください。失敗を恐れず、むしろ失敗から学ぶことを楽しんでください。失敗も含めたすべての経験が、きっとこれからの人生においてかけがえのない「糧」になります。自分を信じて突き進む姿勢が、きっと未来のあなたを強く、輝かせてくれるはずです。
幸い、明治大学には学生が主体となって挑戦できる多彩なプログラムが用意されています。他の大学では得がたい経験や、安心して挑戦を続けられるフォロー体制が整っており、大学全体があなたの挑戦を後押ししてくれます。ぜひ、明治大学の環境をフル活用して、たくさんの課外活動に取り組んでみてください!あなたの挑戦を応援しています!

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