
明治大学地域連携推進センターは、協定に基づく連携事業として「学生派遣プログラム」を実施しています。この活動を通じて連携地域が取り組むプロジェクトの推進や地域振興に貢献しつつ、参加学生が地域への理解を深め、社会性を培う機会となることを目的として、公募型の課外活動として開催しています。
今回は、2025年度の学生派遣プログラム「県外の若者に向けた鳥取市の情報発信について」に参加した、更田さんにお話を伺いました。
なお明治大学と鳥取市は、本学創立者の一人、岸本辰雄先生の出身地が鳥取市であるご縁で、2016年11月に連携協定を締結し、各種連携事業を実施しております。

プログラムでの活動内容を教えてください。
「県外の若者に向けた鳥取市の情報発信について」をテーマに、さまざまな角度から見た鳥取市の魅力や課題等を調査・研究し、具体的な施策の立案と実行を目指す活動を、約4カ月間にわたって行いました。
私たちは2グループに分かれ、計画立案・事前準備を経て、8月21日から25日にかけて鳥取市に滞在し、市内を歩きながらさまざまな体験や交流を行いました。帰京後は、具体的な施策立案に向けてさらなる調査やブラッシュアップを重ね、10月29日に最終成果発表会を行いました。私の班は、鳥取市の情報共有サイト「旅ナビ」の作成と活用方法を、もう一班は、SNSを活用した新しい鳥取市のブランディングを提案しました。
プログラムへの応募理由を教えてください。
理由は三つあります。一つ目は、私自身が鳥取市のことをもっとよく知るためです。1年次の3月に旅行で初めて鳥取県を訪れた際、県内の地域性の多様さに気づき「またこの地を訪れたい。もっと知りたい!」と思っていました。このプログラムに参加することで、鳥取市との継続した関係を築き、理解を深めて魅力を言語化できるようになりたいと考えました。
二つ目は、さまざまなバックグラウンドを持つ人たちと交流し、視野を広げるためです。このプログラムは、異なる学部・学年・出身地の明大生が集まり、また、現地ではより多様な背景を持つ人々と交流することから、学部という専門分野を超えたマクロな施策立案力を養うチャンスだと考えました。また、自分の思考や視点の癖を知ることも、目的の一つとしてありました。
三つ目は、現場の実情に沿った施策をチームで企画する中で、これまでの学びや自分の強みを進化させるためです。私は2年次に所属していたゼミで、地域住民を主体とした、来訪者による客観視を活用しながら地域をにぎやかにする「誇りある地域づくり」について学んだことから、このプログラムはフィールドワークを通して現場感覚を身に付けるチャンスだと考えました。
活動の中で、印象に残った出来事を教えてください。
印象に残った出来事は、人との思いがけない交流です。「とっとり若者地方創生会議」の皆さんや「もちがせ週末住人の家」で出会った方々はもちろん、ほかにも行く先々でたくさんの出会いや交流があり、本当に充実した5日間でした。バスの中やお店の中、歩いているだけでも、声をかけてくださる温かい住民の方々。誰かと出会えば自然とあいさつや会話、交流が生まれること。これは、普段の都市部での生活ではなかなか経験したことがない出来事でした。
「とっとり若者地方創生会議」の皆さんとの懇親会
「もちがせ週末住人の家」での集合写真また、印象に残った言葉として「私たちが感じた『非日常』は、住民にとっての『日常』である」があります。私たちにとって、鳥取市での体験は特別なものに思えましたが、それらは地域の方々にとっては日々の暮らしそのものです。鳥取市に限らず、私たちは身近にありながらその価値に気づけていないことが多くあります。外からの視点、つまり客観的に見つめ直すことで、初めてその地域の「当たり前」の奥にある豊かさや意味を知ることができるのだと実感しました。
梨狩り体験の様子
市の最西端、青谷町の早朝風景活動の中で苦労したことと、それをどのように乗り越えたかを教えてください。
最も苦労したのは、班別自由行動の計画立案と、現地調査を着実に進めるための準備・調整です。
計画立案では、「鳥取市のどの地域で、どんな体験や調査を行うか」を限られた日程の中で決める必要がありました。そこで私たちは、まず、さまざまなデータを分析して調査のターゲットと目的を明確化しました。そして議論を重ねることで、一貫した目的を持った行動計画を作ることができました。
また、現地調査の準備・調整では、効率的な移動ルートや交通手段の検討、訪問先へのアポイント交渉・事前連絡が、想像以上に大変でした。地図アプリやバス会社の時刻表、検索エンジンを駆使してスケジュールを組み立てつつ、夏季休業期間中は何度も電話交渉を行いました。
そのほか、現地に行って初めて分かる課題や、現地調査後の情報収集での苦労などもありました。事前リサーチから発表までの多大なタスクを、限られた時間で学業と両立しながらこなすことは大変でしたが、やるべきことや情報を整理しながら、常にメンバーと連携し続けたことで、これらの課題を一つ一つ乗り越え、最終的には非常に充実した活動にすることができました。
開店前にもかかわらず訪問を快く受け入れてくださった、鹿野町の古民家ショップの店主さん活動全体を通して学んだことや成長したこと、自身の中での変化を教えてください。
この活動を通して、客観視の大切さを学びました。地域の内部からは気づけないことがあるように、自分自身についても、他者の視点があって初めて分かることがあります。私は、鳥取市で出会った皆さんから温かい言葉をいただいたことで、私自身が気づけていなかった個性や強みを知ることができました。
また、素直に向き合う姿勢を学び、成長することができました。初対面のメンバーと、普段とは違う環境で5日間生活を共にしたことで、価値観の違いや意見の食い違いもありましたが、相手の考えを聞いた上で自分の思いを素直に伝え、歩み寄る姿勢を身に付けることができました。その結果、活動を心から楽しめただけでなく、メンバーとの信頼関係も深まりました。
そして、活動を通して最も大きかった私自身の変化は、自分にとっての活動の一番の目的が「自己成長のため」から「お世話になった地域の方々に喜んでいただくため」へとシフトしたことです。現地での出会いや交流を通して、鳥取市は、外から来た私たちも含め、町が好きな人であれば誰もが一緒に熱くなれる、素直になれる、そんな温かくてすてきな環境が、自然と築かれる地域だと感じました。「何度でもここに戻ってきたい」という思いが強くなった5日間でした。
「もちがせ週末住人の家」での一枚このプログラムは、どのような人に参加を勧めたいですか。
地域活性化や社会貢献に関心のある人はもちろん、人との交流を楽しめる人やチームで一つの目標に向かって切磋琢磨したい人、学部の垣根を超えてゼロから何かを作り上げる経験をしてみたい人にお勧めします。大切なのは、今どれほど鳥取市のことを知っているかではなく「知りたい、学びたい」という気持ちです。向上心と主体性、そして未知の環境に飛び込む勇気を持って、ぜひ挑戦してみてください。
将来の夢や目標、今後チャレンジしたいことなどを教えてください。
私の夢は、大切な人たちの「居場所」や「当たり前の日常」を守り支える人になることです。そのために、将来は、現場の声に寄り添いながら社会課題を解決する制度設計に携わりたいと考えています。現在、試験勉強や就職活動など一つ一つの目標達成に向けて、努力を楽しみながら取り組んでいます。学生生活の残りの時間、そして卒業後も、今起きていることの正しい知識や現場の実情を積極的に知り、改善しようとする姿勢を大切にしながら、挑戦を続けたいです。
明大生・高校生に伝えたいメッセージをお願いします。
このプログラムを通して、鳥取市は私にとって心のふるさとになりました。また、多種多様な背景・個性でありながら同じような熱い思いを持っている、すてきな仲間とも出会うことができました。たくさんの気づきや結び付きを得ることができ、この活動に参加して良かったと心から思います。皆さんに伝えたいのは「現地に行くからこそ分かることがある」ということです。少しでも興味を持った人は、ぜひ一歩踏み出してみてください!その一歩が、皆さんの価値観や人生を大きく変えるきっかけになると思います。
現地での活動を通して、すっかり仲良くなった班のメンバーとの一枚Meiji NOWでは、Xアカウント(@meiji_now)で日々の更新情報をお知らせしています。Xをご利用の方は、以下のボタンからMeiji NOW公式アカウントをフォローして、情報収集にご活用ください。
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