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2024.09.27

落語と文学を行き来する。総合学習の時間から始まった、落語家と作家への道|桑島直寛さん

文学部学生ゼミ・研究室Meijing

プロの落語家を目指して落語研究会で意欲的に活動している桑島さん。文学部の文芸メディア専攻では、現代文学や創作の基礎を学びながら、自身でも小説を執筆しています。「落語」と「文学」を行き来しながら創作活動に取り組む桑島さんに、文学部での学びや落語研究会での活動についてお聞きしました。

明治大学での学生生活を紹介してくれた方桑島直寛さん(文学部 4年)

プロフィール写真

桑島さんのMeijingは、「楽しませる」を意味する “Entertain” ing

総合学習の時間に落語に出会い、”学生落語研究会の名門”へ

明治大学に入学した理由を教えてください。

明治大学の落語研究会に入りたいと思ったからです。落語に興味を持ったきっかけは、中学2年生の時に総合学習の授業で、明治大学落語研究会出身の落語家さんが来てくれたことでした。「座布団に座って話しているだけなのにこんなに笑えるなんて」と衝撃を受けました。

実際に落語を自分でやってみるとより面白く感じて、高校に入学してからは廃部になっていた落語研究会を復活させ、活動していました。次第に、「もっと本格的にやりたい」と考えるようになり、数々の落語家を輩出してきた、“学生落研の名門”ともいえる落語研究会がある明治大学を目指すことに決めました。

なぜ、文学部文芸メディア専攻を選んだのでしょうか。

学部に強いこだわりはありませんでした。ただ、高校3年生から文芸部も兼部していて、その時に書いた小説が県のコンクールで入選した経験があり、文学や創作には興味を持っていました。そもそも文芸部に入ったのは、新作落語を作ることに憧れていたからです。自分の創作活動につながる学びがあるのではと、文学部の中でもカリキュラムの中に「創作表現」がある文芸メディア専攻を選びました。

創作の基礎を学び、文学の面白さに触れた

文学部での学びを教えてください。

印象に残っている授業の一つが、1年次に受講した文芸メディア専攻の必修科目「文芸メディア概論」です。授業の内容自体も興味深かったのですが、担当する内村和至先生から「自分の意見を持て」と言われたことも印象的に残っています。内村先生の話を通して、学生としての心構えや、自分らしく大学生活を送るにはどうすればいいのかを考えるきっかけになりました。

また、3年次に受講した伊藤氏貴先生の「表現創作Ⅱ」で学んだことは、今、自分が創作活動をする上での基礎になっています。授業は「創作をするなら、今までにない型破りなものを書かなければならない。そのためにこそ、先例、型を学ぶ必要がある」という考えの下、さまざまな純文学作品を読み解いていく内容でした。創作する上での基礎知識は、この授業で一から叩き込んでもらえたと思います。

演習(ゼミナール)での学びや桑島さんの研究テーマについて教えてください。

文学部では1年次から演習があり、3年次にどの先生の下で卒業論文を書くかを決めて、本格的に研究を進めていきます。僕は現代文学や創作に興味があったことから、伊藤先生の演習に入りました。研究テーマは、西村賢太(※1)の作品です。僕が落ち込んでいた時期に伊藤先生が教えてくださったことをきっかけに読み始め、研究テーマにしようと決めました。西村賢太は、大正時代や昭和初期の作家を愛好しており、作品にもその影響が表れています。僕はそこに注目して、「この作品は、どの作家のどういう思想に基づいて書かれているのか」を読み解き、研究しているところです。

伊藤先生の演習では、論文は手取り足取り教わるものではなく「自分で学び取るもの」というスタンスです。そのため、参考になる論文の書き方の本や図書館にある学術論文などを教えていただくことはありますが、そこからは自分で考えながら書き進めています。

※1 西村賢太:作家。2007年『暗渠の宿』で野間文芸新人賞、2011年「苦役列車」で芥川賞を受賞。その他、作品多数。

桑島さんは、第15回明治大学文学賞の倉橋由美子文芸賞を受賞されています。取り組まれている創作活動について教えてください。

『透明人間、簡単に消えた』という作品で賞をいただきました。僕自身、大学生活の中で人間関係がうまくいかなかった時期があり、その時の気持ちを書いた私小説です。そのため読まれると少々恥ずかしいのですが、この作品を書いたことを機に、もっといろんな表現方法で自分が今思っていることを書いてみたいと思うようになりました。

次回作は、もっと自分の内側の深いところにある、誰にも言えないような思いや感情を書いてみたいと思っています。創作についてさまざまなことを教わった伊藤先生に「面白い」と言わせるような作品を書きたいです。

また、4年次からは小説だけではなく新作落語も書くようになりました。今はかなりハイペースで書いていて、すでに15本ほどのネタがあります。小説を書くことと、方法や考え方は異なりますが、どちらも「人に伝える」という部分でとても考えさせられます。落語だけをやっていては視野が狭くなるし、逆も然りです。落語と文学、どちらも行き来することで、自分にとってより良い創作ができると考えています。

全国で落語会を主催。応援してくれる人たちのためにも頑張りたい

落語研究会での活動について教えてください。

主に他大学と一緒に活動することが多く、新作のネタを下ろす落語会をしたり、落語を見て意見を交換する勉強会を開いたりしています。特に決まった曜日や時間に集まるわけではなく主体的に活動を行うスタイルで、僕はだいたい1~2週間に1回くらいのペースで落語会を主催しています。明治大学内で開催することもありますし、渋谷などでスペースを借りたり、時には地方に行ったりすることもあります。

桑島さんは落語研究会の幹事長も務めていたと伺いました。意識したことや取り組んだことを教えてください。

自信を持って成し遂げられたと言えるのが、他大学の落語研究会とのつながりを作れたことです。これまで明治大学の落語研究会では他大学との交流がなかったのですが、僕が幹事長になってから他大学にアプローチして、合同で落語会を開いたり勉強会をしたりするようになり活動内容は大きく変わりました。今は後輩たちも他大学と積極的に交流しているので、活動の幅を広げてくれています。

活動の中で大変なことはありますか。

最初は、落語会を主催する時にさまざまな苦労がありました。例えば会を開催する時には、演者の控室や高座を準備したり、音響や照明といった設備を整えたりしなければなりません。さらに、集客のための宣伝も自分で行う必要があります。過去には演者6人に対してお客さんが1人だけの時もありましたが、経験を積み重ねることで会を開催するノウハウを身に付けることができました。

まだまだ一般のお客さんを呼び込むことに苦労しているものの、先日僕が開いた落語会になんとプロの落語家さんが来てくださいました。アマチュアの落語家をプロが見に来られるのはとても珍しいことなので驚きましたが、ごあいさつした時にはお褒めの言葉もいただけてとてもうれしかったです。「頑張っていればどこかで見てくれている人がいるんだ」と思えました。また、明治大学の落語研究会は、父母会や校友会、そして卒業生からも大いに支えられているので、励みになっています。

和泉キャンパスにある落語研究会の部室には、歴代の亭号(落語家の芸名)が飾られている和泉キャンパスにある落語研究会の部室には、歴代の亭号(落語家の芸名)が飾られている

夢は落語家と作家になること。物語の力で、地元・長野県の魅力を伝えたい

将来の夢を教えてください。

夢はプロの落語家になることです。まずは師匠に弟子入りし、経験を積んで「二つ目(※2)」と呼ばれる階級を目指します。僕が今、具体的に思い描いている理想の落語家像は、面白い新作を書ける落語家です。そして、落語を通して地元・長野県の魅力を伝えていきたいと思っています。実はすでにご当地ネタをテーマにした落語も作っていますが、地元で披露させていただいた時には、観客の中に笑いすぎて入れ歯が飛び出してしまったおじいちゃんがいたくらい、良い反応をいただきました(笑)。地元が大好きなので、今後も長野県をテーマにした落語を作っていきたいです。

そしてもう一つの夢が、小説家としてデビューすることです。明治大学の文芸メディア専攻で過去に権威ある純文学の賞を受賞された、片瀬チヲルさん(2013年文学部卒業)と児玉雨子さん(2016年文学部卒業、2018年文学研究科修了)に続く作家になりたいです。大きな夢ですが、文芸メディア専攻で4年間学んだ以上、せっかくなら高みを目指して、これからも書き続けたいと思います。

※2 二つ目:若手落語家のポジション。弟子入りした後、見習いから楽屋入りして「前座」という身分になり、そこから5年くらいの期間を経ると「二つ目」という階級に昇進する

新作落語「信濃の国」を披露する桑島さん。桑島さんは伝統の亭号「紫紺亭志い朝」を襲名している新作落語「信濃の国」を披露する桑島さん。桑島さんは伝統の亭号「紫紺亭志い朝(※3)」を襲名している

※3 紫紺亭志い朝:三宅裕司さん、立川志の輔さん、渡辺正行さんらが大学時代に担った明治大学落語研究会の大名跡

まずは目の前のことに全力で取り組むことで、道が開けてくる

最後に、高校生の皆さんにメッセージをお願いします!

僕は「自分はこうなりたい」という確たる像をもって、明治大学に進学しました。なんとなく大学を選ぶのはもったいないと思うので、進路を考える時には、自分の「個」は何かをしっかり見つめ、納得のいく選択をしてもらいたいです。

また、僕は高校時代に落語に取り組み、小説を書き、応援団に所属するなど、自分のやりたいことに全力で取り組んできました。その経験の積み重ねが、今につながっています。まずは目の前のことに一生懸命取り組むことで、道は開けていくのではないでしょうか。

インタビューは和泉キャンパスの和泉ラーニングスクエアで行ったインタビューは和泉キャンパスの和泉ラーニングスクエアで行った
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