理工学部は、8月2日(土)〜3日(日)の2日間、女子中高生の理系進学を後押しするためのイベント「ふらっと理工系トーク@生田OC」を生田キャンパスで開催した。オープンキャンパスに合わせて開かれたこのイベントでは、社会の第一線で活躍する卒業生(OG)を各日3人招き、午前中にパネルトーク、午後に雑談会を実施。2日間で350人の女子中高生と保護者が参加した。
女子中高生が理系へ進学するにあたり、進路選択の判断材料やキャリアを描くための身近なロールモデルが不足していると考えられている 。理工学部は、イノベーションを創出するには誰もが「フラット(平等)」に学べる環境が重要だと考えている。今回のイベント名にある「ふらっと」には、このような学部の姿勢と「気軽に」参加してほしいという2つの意味を込めており、イベントを継続して行っている。また、進路選択における女子中高生への無意識な偏見(アンコンシャス・バイアス)を解消するため、保護者や教員への参加も積極的に呼びかけている。
午前中のパネルトークではまず、「働いていて心から楽しいと思える瞬間は?」「進路を決断した時に悩んだことは?」などを話題に、高校・大学時代を振り返りつつ、現在の仕事の醍醐味や学問とのつながりについて、それぞれ率直に語った。

イベントに登壇した卒業生(OG)
塩入真衣さん(応用化学科2015年卒業)
いすゞ自動車株式会社で海外工場のサポート業務を担う塩入さんは、「小学生の頃から理科の実験が大好きで、現象が変化するのをよく観察していた」と理系進路へのきっかけを話したうえで、「応用化学科で学んだこと、特に人工骨の研究でトライアンドエラーを繰り返した経験は、異業種と思われる自動車業界でも存分に生かされている」と幅広い活躍ができる理系進路について語った。
石井カンナさん(電気電子生命学科 生命理工学専攻2022年卒業)
株式会社明電舎で産業コントローラの営業技術や製品戦略立案に携わる石井さんは、「ロボットをつくりたいという小さい頃からの思いに加えて、高校で生物学系にも興味を持ったのでこの学科・専攻を選んだ。母親から『女性だから手に職』として別の進路も勧められたが、モノづくりの道は諦められなかったので自分で進路を決めた」と進学時のエピソードが披露された。
永松洋乃さん(機械情報工学科2022年卒業)
株式会社バンダイで児童向け玩具の技術設計を担当している永松さんは、「ロボットや宇宙工学、プログラミングなど幅広く興味があったのでこの学科が自分に合っていると思った」と話したうえで、「当時私の学科は女子が少なかったが、学科の垣根を超えた『無学科混合クラス』の授業があったので、女子同士の交流がたくさんあった。親友との出会いも混合クラスだった」と学生生活について当時を振り返った。

秋野友香さん(理工学研究科 応用化学専攻博士前期課程2023年修了)
日清オイリオグループ株式会社で化粧品原料の品質企画・分析業務を担っている秋野さんは進路選択について、「理系科目が好きで得意だったので学部・学科選びに迷いはなかったが、大学院への進学は少し悩んだ。結果として専門性を生かした仕事をしたいという気持ちが強まったので進学を決めたが、その過程では院卒のキャリアや年収などのあらゆる情報を集め、両親を説得した」と大学院進学時のエピソードを披露し、「理工学研究科で得た深い学びや考え方、アプローチの視点が研究職としての土台になっている」と語った。
片山あかねさん(理工学研究科 機械工学専攻博士前期課程2019年修了)
ソニー株式会社で開発・設計職としてセルソーター(細胞分取装置)の送液の開発・設計を担う片山さんは、現在の仕事について「顧客はじめ商品企画・サービス部門の意見をくみ取ってチームで意見交換し、自分の意見も採用されながらプロダクトとして形にできるのが嬉しい。細胞が流れる流路の洗浄検討など、データ測定・解析する機会も多く、日々学びと刺激があって楽しい」と開発・設計職ならではの魅力を語ったうえで、「好きだからこそ、その先の深掘りができて新たなことを見出せると私は思っている。皆さんも今自分が好きなことに真剣に向き合って進路を考えて欲しい」と自身の経験から参加者へアドバイスを送った。
石和田侑菜さん(数学科2018年卒業)
株式会社NTTデータでシステムインテグレーションの営業を担当している石和田さんは、「理系の知識を持つ営業職として、システム部門の方と対等な知識で話せることを強みに感じている」と現職について話し、「理系は学業が大変だが、教職課程やサークル、学園祭実行委員、アルバイトなど、さまざまな経験ができたことが財産になっている。やりたいこと、大学でしかできないことに挑戦して後悔しないでほしい」と後輩を激励した。


その後、質疑応答の時間が設けられ、参加者からは活発に質問が飛び交った。最後に、登壇した卒業生から中高生へ激励のメッセージが送られ、パネルトークが締めくくられた。終了後にも熱心に個別質問をする多くの中高生たちの姿が見られ大盛況となった。

午後は会場をセンターフォレストのグループワークラウンジに移し、パネルトークに登壇した卒業生が小さなテーブルにそれぞれ分かれて、中高生や保護者からの個別相談に応じた。


参加者からは「進学の参考になっただけではなく、化粧品業界で活躍する秋野さんが私の憧れの存在、モデルになった」(高1)や「このイベントのために大分から上京した。先輩のリアルな実体験が私の悩んでいることに直球で刺さった」(高2)、「娘が特に参考にしたいことが得られたうえ、理工系の進路はとにかく幅広く、選択肢が多いのだと知り自信を持って進学させたいと思った」といった多くの前向きな感想が寄せられ、有意義な機会になった。(理工学部事務室)
なお、本イベントは報道取材が入り以下の媒体で掲載された。