フィギュアスケート 佐藤駿選手×住吉りをん選手×三浦佳生選手インタビュー「スケートでは切磋琢磨、オフでは友人」
商学部政治経済学部学生インタビュースポーツイベントMeijing
フィギュアスケート界で幼少期から切磋琢磨してきた佐藤駿選手、住吉りをん選手、三浦佳生選手。現在は、明治大学体育会スケート部に入り、学業との両立をしながら競技に取り組んでいます。3人の日常や、今シーズンのこだわり、お互いの魅力など、Meiji NOWでしか聞けないお話を伺いました。
「ISUグランプリシリーズ2024」は、日本時間の10月19日から開幕し、3選手が出場予定です。テレビ放送が予定されていますので、皆さま温かいご声援のほど、どうぞよろしくお願いいたします!
佐藤駿選手(右)、住吉りをん選手(中央)、三浦佳生選手(左)
佐藤 駿選手(政治経済学部3年)
宮城県出身。2022年明治大学政治経済学部に入学・体育会スケート部に入部。現在同学部3年生。
- 2024年:四大陸選手権大会 2位
- 2023年:四大陸選手権大会 3位
- 2023年:ISUグランプリ フィンランド大会 2位
- 2023年:全日本選手権大会 5位
- 2022年:全日本選手権大会 4位
- 2022年:ISUグランプリ ファイナル 4位
住吉 りをん選手(商学部3年)
東京都出身。2022年明治大学商学部に入学・体育会スケート部に入部。現在同学部3年生。
- 2023年:ISUグランプリ ファイナル 6位
- 2023年:ISUグランプリ フィンランド大会 2位
- 2023年:ISUグランプリ フランス大会 3位
三浦 佳生選手(政治経済学部1年)
東京都出身。2024年明治大学政治経済学部に入学・体育会スケート部に入部。現在同学部1年生。
- 2024年:世界選手権 8位
- 2023年:世界ジュニア 金メダル
- 2023年:四大陸選手権大会 優勝
- 2023年:ISUグランプリ フィンランド大会 優勝
- 2023年:ISUグランプリ カナダ大会 2位
- 2022年、2023年:ISUグランプリ ファイナル 5位
異なる競技のアスリートや留学経験者から刺激を受ける学生生活
――明治大学に入学した理由を教えてください。
佐藤 駿 さん(以下:佐藤) 高校に進学した時から、明治大学を志望していました。大島光翔くん(政治経済学部4年・スケート部フィギュア部門主将)がいたので、同じ政治経済学部に入りました。
住吉りをん さん(以下:住吉) 私も、一番身近で憧れの存在だった樋口新葉 ちゃん(2023年商学部卒)がいたので、同じ商学部に入りました。
三浦佳生 さん(以下:三浦) 僕もやっぱり身近な存在がいたからですね。駿くんとか、菊地竜生くん(政治経済学部2年)とか。
――実際に入学してどのように感じましたか。
佐藤 人との関わりが増えましたね。体育会以外の友人もできましたし、さまざまな体育会の友人もできました。明治大学はいろいろな競技の人たちがいて、競技が違えばものの感じ方や背景が全く違うので、面白いです。
住吉 私も人間関係が広がりました。資格取得の勉強に専念している人や、音楽を頑張っている人、私が今まで関わったことのないジャンルで頑張っている友人との出会いを通して、「大学に入ってから、視野がすごく広がったな」と感じています。
三浦 僕は入学して半年なので、友達はまだ少ないんですけど。駿くんと同じで、いろいろな体育会のアスリートと交流する機会がありますが、競技特性がスポーツによって全く違うので、面白いですね。
佐藤 同じクラスの友人が、試合の時いつも「頑張ってね!」と言ってくれることも、うれしいです。
住吉 私は商学部で、フェアトレードなどを研究している小林尚朗ゼミに入りました。ゼミ生がドイツに1年間留学して帰国後に、「ドイツと日本の違い」についてプレゼンテーションをしてくれたんです。
スライドも説明もすごく分かりやすくて、ドイツ語も上達していて、留学先での努力の成果を間近で見ることができたので、かなり刺激を受けました。もしスケートをしていなかったら、私も留学をしていたと思うので、充実した留学生活を送ってきた友人を尊敬しています。
――スケートと学業の両立はどのようにしていますか。
佐藤 試合や合宿でなかなか大学に来られない期間があるので、課題はなるべく早め早めに取り組んでいます。
住吉 新葉ちゃんからも「大変だよ」とは言われていたんですけど、思っていた以上に1~2年次は学業との両立が大変でした(笑)。課題は早めに手を付けて、分からない部分を友人に質問できるような時間の余裕を持てるように心掛けています。
三浦 僕は、今年の春に大学に入学してから生活がガラッと変わったので、慣れないことも多く、今まさに両立の難しさを痛感しているところです。りをんちゃんが言ったことを、僕も気を付けようと思いました(笑)。
ジャンプも、表現も注目してほしい(佐藤 駿選手)

――今シーズンのこだわりを教えてください。
佐藤 ショートプログラム(以下:ショート)の『ラヴェンダーの咲く庭で』は、後半になるにつれて盛り上がる曲です。こうした中で、ジャンプからステップへの流れや、ステップでの体の使い方にこだわっています。
フリースケーティング(以下:フリー)の『Nostos』は、単調にも聴こえる難しい曲です。一つ一つの音を自分らしく表現していきたいです。そして、自分なりの曲の捉え方と表現を見てほしいです。まだ意識がジャンプの方に集中しているので、自分なりの表現の方に意識を傾けていきたいです。
――『ラヴェンダーの咲く庭で』は、浅田真央さんや宇野昌磨さんも演技されていますね。プレッシャーは感じますか。
佐藤 あまり意識はしていません。今まで滑ってきた選手とはまた違った、自分らしい演技をしたいと思っています。
一つの物語のような演技を目指して(住吉りをん選手)

――今シーズンのこだわりを教えてください。
住吉 ショートの『Un homme qui me plaît』は、失恋を描いたフランスの映画で使われた曲です。切ない物語なのですが、私は、失意を乗り越える強い女性を表現したいと思っています。前半では心の痛みを、後半ではそれを乗り越えていく強さを自分らしく表現したいです。演技が終わった時に、一つの物語を見終わったような感覚になってもらえるように表現することを目指しています。
フリーは、『Adiemus』という曲です。4つのパートから構成されていて、全体で「植物の成長」を表しているという……すごく難しい曲です。それぞれのパートが全く異なる色を持っているので、そのギャップをどのように表現するか、演じ分けるかが課題です。
駿くんも言っていましたが、私もまだジャンプに意識が集中しています。力強いパート、柔らかいパート、最後に恵みの雨を受けて成長していくハイライトの部分など、それぞれをしっかりと演じ分けていきたいです。
――衣装へのこだわりはありますか。
住吉 はい。衣装制作は振付師さんと関わりが深い方にお願いしていて、私の特長が生きるデザインをしていただきました。手の長さを生かした演技のために袖に飾りを付けてもらったり、フリーの4つのパートを演じ分けるために左右どちらから見ても見え方が変わるマーブル柄にしてもらったり、私らしい演技を表現できるようなデザインをしていただきました。
ショートは自分らしさ全開に。フリーは繊細に表現したい(三浦佳生選手)

――今シーズンのこだわりを教えてください。
三浦 ショートの『Conquest of Spaces』という曲は、地球に飽き飽きした人が、宇宙に冒険に出るというストーリーです。最初はかなり解釈が難しいなと思いましたが、徐々にものにできていると実感しています。今は、自分らしさが全開に出せる曲だと感じています。らしさ全開の演技にしたいですね。
フリーは、『シェルブールの雨傘』というフランスの映画の曲です。昨年は、多少演技がアバウトでも曲が助けてくれる感じがありましたが、今回は曲が助けてくれないんです。本当に自分のスキルと表現だけで勝負する必要があります。
――『シェルブールの雨傘』は、ハッピーエンドかバッドエンドかの解釈が難しい曲ですね。
三浦 人によって解釈が違うと思いますが、僕はバッドエンドの物語だと解釈して滑っています。主人公たちが、戦争などのさまざまな壁を乗り越えて最終的に別々の道を行く。それが幸せだったのか、それとも幸せじゃなかったのか。本当に難しいですが、このような感情の機微まで伝えられるような、繊細な表現ができればと思っています。
行き詰まったら何もかも忘れてリセットする
――フィギュアスケートのどのようなところに魅力を感じていますか。
佐藤 ジャンプして、スピンして、スケーティングがあって、ステップもあって。そもそも、氷の上で滑って踊るっていう発想が面白いですよね(笑)。
住吉 フィギュアスケートの練習って全然単調じゃないんです。ジャンプの練習も、スピンの練習も、スケーティングの練習も……。どこまでも細部にこだわれるし、いろいろなことをどこまでも追求できるので、絶対に終わりがない。どんなに小さな動きであっても、「今日はこんなことができるようになった」と練習のたびに成長を実感できるところが面白いです。そこが一番の魅力ですね。
三浦 フィギュアスケートって、選手一人ひとりがみんな違う個性を持っていますよね。同じ曲で同じ振り付けをしても、選手にとって全然違う表現になる。それぞれに長所がみんな違って、得意技もみんな違って、ジャンプもいろいろな種類があって。こういう個性を表現できるところが、本当に面白いです。
――苦しい時は、どのように乗り越えていますか。
佐藤 調子が悪い時は、リセットするためにオフの日を作るようにしています。最近はなくなってきましたが、調子が出なくなった時に、一度全部忘れてみると自分の中でうまくいくことが分かってきました。オフの日は、サウナですね。何も考えずに入って、リフレッシュしています。
住吉 私も以前は、休めないタイプでした。でも、大学生になってから、しっかり休んだほうが調子が良くなると気付いたので、意識的に休むことを心掛けています。1日オフになった日は、趣味のパン作りをしたり、飼っているハムスターと遊ぶことで癒やされたりして、リフレッシュしています。座禅にも、1年半ほど取り組んでいます。私は、ジャンプの時にいろいろなことを考え過ぎてしまう癖があったのですが、無駄なことを考え過ぎずに試合に臨めるようになりました。
あとは、私はスケーティングの練習がすごく好きなので、行き詰まった時は基礎的なスケーティングの練習に時間を割いて、「滑るって楽しい!」と初心に戻ってスケートの楽しさを改めて感じることもリフレッシュになっています。
三浦 僕も、一回完全にスケートを頭から外してしまいます。友達を食事に誘ったり、ただただ寝たり、本当に1日何もかも忘れて、何も考えない。あとは、最近部屋を改造することにも凝っています。YouTubeとかInstagramで「おしゃれな部屋の作り方」などを参考にして、IKEAに行って家具をそろえたりするのもリフレッシュになります。
スケートでは切磋琢磨、オフでは友人
――お互いに学び合うことはありますか。
佐藤 普段はそれぞれの拠点で練習していますが、スケートの合宿や部連(部の全体練習)でお互いの練習を見る機会があります。ジャンプの練習の様子を見て、「こんな風に跳んでいるのか」と学んでいます。
住吉 私は、女子では珍しく4回転トーループに挑戦しているので、男子選手を参考にすることが多いです。駿くんは、私とは真逆のタイプなので、ジャンプの軸の作り方もスピードの生かし方も違いますが、自分に取り込めるところを探しながら見ています。
三浦 2人に同感です。僕も2人の練習を見て、「どのような練習をすれば、もっとうまくなれるのか」と考えながら勉強しています。
――3人はどのような関係ですか。
三浦 良い意味で先輩・後輩感がないんです。駿くんも、りをんちゃんも学年は2つ上なんですけど、幼い頃からずっと一緒だったので。
住吉 スケート界全体が、そういう感じなんです。
佐藤 後輩という感じは、しないですね。
三浦 スケートでは、お互いに切磋琢磨して高め合っていきたいですけどね。でも、オフではただの友達です(笑)。
佐藤 オフでは、佳生と2人で食事にも行くしね。でも、スケートの話はしないね(笑)。
三浦 もう普通の大学生って感じで、授業の話とか、ゲームの話とか、そういった何気ない会話をしています。
住吉 女子も先輩・後輩という感じはなくて、樋口新葉選手のことも「新葉ちゃん」と呼んでいました。男子と違ってあまり食事に行く習慣はないかもしれないですね。たまに一緒に遊びに行くことはあります。

自分らしさとお互いの魅力について
――どのようなところに自分らしさを感じていますか。ご自身の強みについて教えてください。
佐藤 やっぱり「ジャンプ」ですね。そこを期待されているとも思うので。中でもルッツが得意なので、こだわっていきたいです。
住吉 私は、どの瞬間を切り取っても美しい演技を目指しています。「全ての所作が美しい」と言っていただけるので。「きれいだなと思って見ていたら、あっという間に終わってしまった」と言ってもらえるような演技をしたいです。
三浦 僕は、「スピード」です。スピードを出すと高さが出る一方で、勢いでリリースポイントが不安定になります。それが長年の悩みでしたが、最近改善してきました。やっと胸を張って「スピードが持ち味です」と言えるようになりました。

――お互いにどのようなイメージがありますか。
三浦 みんなそれぞれに自分らしさが違うのは、面白いですよね。駿くんみたいに安定してルッツを跳べる選手は、日本には他にいないんじゃないですか?彼しかできないことだと思います。
りをんちゃんも、本当にどこから見てもきれいなんですよね。練習でも、本当に細部にまで気を配っています。演技以外での所作も常に気を配っているところ、本当に尊敬しています。
住吉 佳生くんは、ジャンプもステップも「なんでそのスピードでいって怖くないんだろう」といつも驚かされます。最近は、さらにスピードをコントロールする力も増しているので、すごいです。コントロールしたスピードのおかげで加点がどんどん付いていくし、そこがさらに伸びていっているので、本当にすごいと思います。
三浦 ありがとうございます(笑)。
佐藤 あのスピードからジャンプに行けるのは、世界でも佳生だけだと思います。まねしたいけど、なかなかできない(笑)。
りをんちゃんは、難易度がぐっと上がる4回転トーループを毎試合入れていますよね。昨年は、ISU公認大会で日本女子で初めて4回転トーループを成功させましたし。その姿勢がかっこいいなと思いますし、心から応援しています。

最後に
――夢や目標を教えてください。
佐藤 まずは、全日本選手権大会(以下:全日本)の優勝です。それと、「4回転アクセルを成功させたい」と強く思っています。
住吉 夢は、ミラノ・コルティナ2026オリンピックの出場です。そのために、ショートもフリーもノーミスで、なおかつ質の良い演技をつくり上げなければと思っています。「パーフェクトの演技をコンスタントにできる強い選手になる」というのが直近の目標です。
三浦 全日本の優勝とか、そういった気持ちはもちろんあります。でも、その前に「試合で自分ができることを全て出し切る」ということを目標に設定しています。やるべきことをやりきらないと、結果に結び付かないので。夢は、駿くんもそうだと思いますが、やっぱりオリンピックです。
――最後にメッセージをお願いします。
佐藤 いつも応援ありがとうございます。明治大学のスケート部として、大学全体を盛り上げていけるように、スケート全体を盛り上げていけるように、少しでも貢献できるように頑張っていきたいと思っています。今シーズンもけがに気を付けながら、少しでも多くの試合に出て、皆さんに楽しんでいただけるような演技をしていきますので、応援よろしくお願いします。
住吉 スポーツが強い明治大学の中でも、スケート部が明治大学を引っ張っていくぐらいの意気込みで、スケート部一丸となって頑張っています。世界の試合ももちろんですが、インカレや全日本でも、明治大学の名前を背負って頑張っていきますので、今シーズンも応援よろしくお願いします。
三浦 明治大学のスケート部は、これだけのメンバーがそろっているので、すでに強豪ですが、僕自身も少しでもチームに貢献できるように頑張っていきますので、皆さんも力を貸して、応援していていただけたらと思います。あと、明大生の皆さんは、ぜひ僕と友達になりませんか?
――皆さん喜んで友人になるんじゃないですか?
三浦 そうですかね。本当に明大生の友達募集中です!(笑)
――「ISUグランプリシリーズ2024」は、日本時間の10月19日から開幕しますね。3選手の演技を、楽しみにしております。本日は、ありがとうございました。
(写真=鎌田 健志)
ISUグランプリシリーズ2024
主催 | 国際スケート連盟(ISU) |
日程 | 現地時間 2024年10月18日(金)~12月8日(日) |
第1戦アメリカ大会 | 現地時間 10月18日(金)~20日(日)【出場予定者】三浦佳生選手(政経1)、樋口新葉選手(校友) |
第2戦カナダ大会 | 現地時間 10月25日(金)~27日(日)【出場予定者】佐藤駿選手(政経3) |
第3戦フランス大会 | 現地時間 11月1日(金)~3日(日)【出場予定者】住吉りをん選手(商3)、樋口新葉選手(校友) |
第4戦日本大会(NHK杯) | 現地時間 11月8日(金)~10日(日)【出場予定者】三浦佳生選手(政経1) |
第6戦中国大会 | 現地時間 11月22日(金)~24日(日)【出場予定者】佐藤駿選手(政経3)、住吉りをん選手(商3) |
グランプリファイナル | 現地時間 12月5日(金)~8日(日)【出場予定者】未定 |
放送予定 | テレビ朝日「フィギュアグランプリシリーズ2024」の放送予定・大会スケジュールの詳細は、こちら。 |
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