2019.11.14

【特集・第2回】ハーモニカ奏者 寺澤ひろみさんにインタビュー


【特集・第1回】ハーモニカ奏者 寺澤ひろみさんにインタビューは こちら

ハーモニカの魅力―「吸う」表現とは

関根 ご自身で代表作や自信作などはありますか?

寺澤 私の代名詞といわれる曲が1曲あって、「コンドルが飛んでいく」という曲です。この曲は父が得意としていた曲で、世界大会に出た時のもう1曲だけ吹ける曲というのがこの曲でした。どのタイミングでも、この曲を最初に吹くと落ちついて集中することができるんです。逆にこの曲を吹いてダメな時は、何をやってもダメというバロメーターのような楽曲です。

ハーモニカ、特に複音ハーモニカという楽器は、できてからまだ200年足らずの楽器なので、比較的若い楽器です。しかも、その200年の半分くらいは楽器としてあまり認められておらず、どちらかと言えばおもちゃ扱いをされていたものなので、習いに行くという感じではないし、作曲家が積極的に楽曲を作るというものでもありませんでした。特に複音ハーモニカはオリジナルの楽曲に乏しいのが実情です。

関根 それでは、ハーモニカのどういったところに魅力を感じられているのですか?

寺澤 自由に音程が出せるようなトロンボーンや、音域が広くあって10本指で10個の音が出せるピアノなどに比べると、たしかに不自由極まりない楽器ではあります。けれども、自分にとっては、自分の声よりも「歌える」楽器なんです。

ハーモニカは息を吐くときだけでなく、吸う時にも音が出せる楽器です。ということは、吐く時だけでなく吸う時にも感情を乗せられるということです。さらに、その吸った息をまた吐く時に、どう変えていけるかという楽しみもあるわけです。歌を歌う時は、ブレスはやはり短いほうがいいですよね。

関根 基本的にはそうなりますね。

寺澤 もちろんテンポや曲調によると思いますけれど。歌の場合は言葉が乗り、句読点が出てくるわけです。ハーモニカの演奏では吸っても音が出せるので、「ここを伸ばしたいけれど、どうしても息を吸わなければいけない」というような場面でも、私にとっては歌よりも感情が込めやすいと感じています。

関根 私たちが合唱する時には、ブレスの位置は交代で入れたり、工夫をすることもあります。

寺澤 私は結構「吸う」という行為が、気に入っています。先日、ラジオの番組でアナウンサーの古館伊知郎さんとご一緒させていただく機会があって、古館さんが私の演奏を聴いて、「呼吸というのはすべて人生ですね」とおっしゃったんです。

死ぬという形容をするのに、「息を引き取る」という表現がありますよね。呼吸がすっと消えて亡くなるというイメージが想起されて、ただの吐いて吸うという行為を超えて、切なさを帯びるような気がするとおっしゃられたんです。

息遣いの中には、私自身が認識していない感情や思考がそのまま音に出ているんですよね。そういった、制御しているけどできていないところなどに気を配っていきたいなと思っています。歌にもそのような部分がありますよね?

関根 そうですね。歌に入る時の意識や息の吸い方が、直接ではないかもしれませんが歌の乗り方に影響を及ぼすところもあるのかもしれません。お話を聞いて納得したというか、共通するところがあるのだなと思いました。

寺澤 演奏が終わった後や、息を吐ききった後にどうするかとか、考えることはたくさんあるのかもしれません。ハーモニカの演奏をする人は声楽の勉強した方がいいと指導される先生もいるようです。

明治大学でよかった

関根 以前私は、ただ合唱をするだけなら大学のサークルにこだわらなくてもよいのではないかと感じたこともありました。 現在では明治大学のグリークラブだからこそできた経験があったと感じていますが、寺澤さんは明治大学ハーモニカソサエティーで、ハーモニカ以外の部分で学ばれたことなどはありましたか?

寺澤 大学時代は途中から進路変更があってハーモニカのことばかりを考えるようになったので、逆にそれ以外のことってあまりなかったのかなと思いますが、その後結局企業勤めをすることのない人生を選択してみて、ハーモニカソサエティーに入っていたからできた縁というのが少なからずあります。

今でも御茶ノ水の街おこしイベントで現役の明大生と年1回くらい関わらせてもらっていて、すごく勉強になるんです。私の普段の生徒さんは、70歳以上の方が当たり前で50代の方でも若いくらい。そういった世界にいるので、若い人の考えや習慣を取り入れる機会がほとんどありません。

大学生の皆さんは、携帯電話は生まれた頃からあったでしょうし、YouTubeなども慣れ親しんでいることだと思います。人間関係を築いたり、自分の好きなものを発信するとしても、今はそういったことができる機会がたくさんありますよね。良い面も悪い面もどちらもあると思いますが、今の若い人たちは何かをするにしてもとても上手にやっているなと思っています。

ハーモニカソサエティーの今の現役の皆さんは、私のようなOGと嫌がらずに一緒にやろうとしてくれるところは、私よりもよっぽど大人で素晴らしいなと思っています。

関根 現役の明大生とも関わりがあるのですね。身近に感じてすごくうれしいです!

寺澤 他の大学の学生さんとも関わる機会もあるので、大学ごとの特色はあるなと感じています。リバティタワーができたのは私が在学中の頃だったので、この教室で授業を受けたことも、17階に食堂ができて「外が見えてすごい!」と喜んだことも覚えています。

郊外に移転せずに都心にキャンパスがあることが、明大生のおおらかさの理由の一つではないかなと思っています。関根さんは明治に入ってよかったと思うことはありますか?

関根 第一希望の大学ではなかったので、入学当初はやりたいことも見つからなかったのですが、4年間通ってサークルやゼミで過ごした時間を振り返ってみると、「あ、明治でよかったな。明治だったからできた体験がたくさんあったんだな」と実感しています。

寺澤 明治大学の人はつながりが強くて、面倒見のいい人たちがたくさんいますね。私は他の大学への進学は全然考えていなくて、記念受験で受けておけばよかったなと思うこともありましたが、結局卒業してから「明治でよかったな」と思うことばかりです。

関根 友人とも、卒業が見えてきた今だから「明治でよかったと思うよね」と話しています。今も昔も共通なのかもしれませんね。今日は貴重なお話をありがとうございました。

After the Interview…

寺澤様にお話を伺い、人生の転機やきっかけはいつ起こるかわからないものだと強く感じました。残り短い大学生活ではありますが、まだまだ新しいことに挑戦していきたいと思います。

プロフィール寺澤ひろみさん(2002年文学部卒業)

複音ハーモニカ奏者だった父の影響で明治大学ハーモニカソサエティーに入部。父の急逝をきっかけに独学で複音ハーモニカを習得し、2001年ドイツ・トロッシンゲンで行われた「ワールドハーモニカフェスティバル2001」複音ハーモニカ独奏部門に初出場し優勝。

音楽のジャンルを問わずハーモニカの魅力を伝えるべく、箏・尺八・薩摩琵琶、ピアノトリオ、弦楽四重奏、ウインドオーケストラなど様々な楽器との共演を果たす。テレビ・ラジオにも多数出演し、映画・テレビドラマでのハーモニカ指導も務めるなど、多方面で活躍中。日本ハーモニカ芸術協会 師範、全日本ハーモニカ連盟 常任理事。2018年より「F.I.H.Japanハーモニカコンテスト」にて史上初の女性審査員を務める。

寺澤ひろみさんコンサート「ハーモニカと筝の調べ」

日程 2019年11月17日(日) 15:00開演(14:30開場)
場所 タワーホール船堀 大ホール(都営新宿線「船堀」駅下車徒歩1分)
料金 3,500円

チケット購入方法など詳しくは寺澤ひろみさん公式ホームページから

※ページの内容や掲載者のプロフィールなどは、インタビュー当時(2019年11月7日)のものです