鳥取県の優秀な「子牛」って何?
鳥取県の子牛が優秀なことはご存知ですか?知らない人も多いと思います! そこで、鳥取県の子牛がいかに優秀かを解説していきます!
優秀な子牛とは
優秀な子牛とは霜降りの能力(入り方)で決まってくるそうです。この霜降りの入り方によって皆さんがよく聞く、「A5ランク」などのランク付けがされます。その霜降りの能力の約50%が遺伝的要因からなると言われているので、ランク付けは子牛時代から始まっていることが分かりますね!
鳥取県で有名な「白鵬85の3」
鳥取県には、かつて「気高号(けだかごう)」と言われる黒毛和牛が存在していて、それは今では「日本の黒毛和牛の始祖」と言われています。その「気高号」と「他県の良質な牛」が掛け合わされて生まれたのが「白鵬85の3(はくほうはちじゅうごのさん)」です!「白鵬85の3」の特長としては、なんといっても霜降りの能力が高く、鳥取県の子牛市場でしか買えないということもあり、全国で一番高い子牛価格になっています。2020年、2021年と2年連続で「和子牛平均価格の年間ランキングが全国1位」という快挙を成し遂げています。
鳥取の自然環境×子牛の育成
鳥取の子牛の能力が高い背景には、その他にも「鳥取の自然」も挙げられます。全国で有名なブランド牛の生産地には共通の特長があり、それは「きれいで豊かな水」があることです。鳥取にも「豊かな自然から育まれたきれいな水」が流れる川が数多く存在し、そうした豊かな環境面も非常に重要なファクターの一つになっています!
鳥取和牛の認知度が低い理由
鳥取県の子牛が優秀なことは分かっていただけたかと思います!意外だと思った方も多いのではないでしょうか? では、なぜ子牛の優秀さに比べて、鳥取和牛の認知度が低いのでしょうか?これにはさまざまな理由が考えられますが、取材の中で出てきた問題点3つを順に説明します。
1点目としては、「全国にライバルが多すぎる」という点です。これは、皆さんもご存じの通り既にブランド牛として地位を確立している「松坂牛」「神戸牛」「近江牛」をはじめ、全国には100を超えるブランド牛が存在しています(出典:(財)日本食肉消費総合センター)。2点目としては、「県内の畜産農家さんが使うエサやノウハウが、統一されていない」という点です。他の有名ブランド牛は、その地域でノウハウなどを共有することで、出荷する牛の精度を統一して質の安定を図っています。3点目としては、「肉用牛の出荷頭数が少ないため、限られたバイヤーにしか扱ってもらえない」という点です。
鳥取県では、子牛を生ませて販売する「繁殖農家」が多く、肉用牛にまで育て上げる「畜産農家」が少ないため、出荷頭数が少ないそうです。出荷頭数が少ないと、いつ入荷できるか分からないので飲食店のメニューとして取り扱ってもらえないことから、お肉のバイヤーに断られてしまい、特に取り扱い量の多い、東京など首都圏への進出が難しいという現状があるそうです。
ブランド牛として鳥取和牛の認知度を高めるために
鳥取和牛のブランドを強化するために、鳥取県として今後行っていきたい事としては、「差別化の工夫」と「畜産農家の連携強化」です。「差別化の工夫」は過去にも行っていて、「佐賀牛」など多くのブランド牛が霜降りの度合いでブランド化を行っているのに対し、鳥取県は全く異なるベクトルの付加価値をつけようと、「脂肪の質」に着目したブランド化を目指しました。
そして、2011年に和牛肉のくちどけに好影響を与える「オレイン酸」と呼ばれる脂肪成分を55%以上含む「鳥取和牛オレイン55(とっとりわぎゅうおれいんごーごー)」というブランド牛を立ち上げました。今後は赤身の成分にも着目して、数多ある競合ブランドと差別化を図っていきたいと考えているそうです。「畜産農家との連携強化」に関しては、「出荷数を増やすこと」と「出荷する牛の質の確保」を目的としています。
出荷数を増やすことで、東京などの一大市場により流通量が増え、私たちの目に留まることが多くなり知名度を上げることができるのです。質の確保については、畜産農家さんのこだわりを無視するような統一は難しいため、最初は普段それぞれが使っているエサに加えて、統一したエサを牛たちに与えることなどから始め、さらには、コストはかかりますが「うまみ」に直結する出荷までの月齢を、これまでより3~4カ月長く延ばすといった統一を行いたいそうです。
小江さんの今後に対する思い
――取材の最後に、協力していただいた鳥取県農林水産部畜産課の小江さんに、今の思いや考えを伺いました。
小江さん(以下:小江)「和牛といえば鳥取県!」と全国の方々から言ってもらえるように、また県内でこういう考えが広まるように今後は励んでいきたいです。そのためにも、「小さい県だからできないではなく、小さい県だからできる!」をモットーにしていきたいです。
――小さい県だからできるとは、どういうことでしょうか?
小江:例えば、何万頭も出荷できる地域はあるとは思いますが、その大規模がゆえにできないこと、おざなりにしていることは少なからずあると思います。だからこそ、鳥取県ではそういった大規模地域でできていないことまでも、きっちり突き詰めることができるようにしていきたいです。
――具体的な試みはあるのでしょうか?
小江:「鳥取和牛オレイン55」については、オレイン酸の数値を毎頭測ってから出荷しています。最近では、子牛のセリで、メスについては「ゲノム評価」を示していて、全国で見ても初めての試みだと思います。何万頭も出荷頭数がいると全てを測定したり、評価値を示すことは困難ですが、小さい鳥取県であるからそれができると思っています。
――なるほど。まさに、小さい県だからできる試みですね!取材中は冷静に淡々と分かりやすく私たちに説明していただいたのに加えて、このような熱いお話も伺うことができたので、感謝しかありません!今回取材を受けていただき、本当にありがとうございました!
取材を終えて―
取材を通して、関わる機会がない私たちだから聞ける、価値あるお話がたくさんあり、「多くの人に知ってもらいたい!」という気持ちがより感じられるようになりました!私たちが手に取る商品や情報では、こうした一次産業に携わる方の努力や工夫に気付ける機会が少ないのが現状です。皆さんにはこの記事を通して農家さんの努力や鳥取県の取り組みを知ってもらい、少しでも関心ごととして「鳥取和牛」を捉えてほしいと思いました!
取材担当者から~皆さんへのメッセージ~
こちらの4人で取材・作成を進めました。 前編では、鳥取東伯ミート株式会社の方に鳥取和牛の美味しさについて取材をしているので、ぜひ記事の前編もご覧ください!

下段左から:伴柾希さん(商学部3年)、山下栄実さん(国際日本学部1年)
※記事中に掲載した写真は撮影時のみマスクを外すなどの配慮をしております
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