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明大生にフォーカス
2022.06.17

【鳥取県の魅力紹介!】「淀江傘(よどえがさ)継承の歴史と現在へ受け継がれる人々の思い」

学生社会連携イベントエンタメ鳥取コラム
鳥取県は、創立者の一人である岸本辰雄初代校長の出身地で、明治大学は同県との連携協定を締結しています。本コラムでは、学生ライターが取材を重ね、発見した鳥取の魅力をさまざまな視点からお伝えします。
鳥取県米子市淀江町。ここでは、2021年に継承200周年を迎えた「淀江傘」が作られています。今回、私たち「淀江傘はたはた広報隊」は、「淀江傘」について深く知るために「淀江傘伝承の会」の山本様と米子市文化振興課にインタビューを行いました。お話を聞く中で、「淀江傘」について深く知るとともに、移りゆく時代の中でその技術を潰えさせまいと励む人たちの熱い思いを受け取りました。 皆さんにも「淀江傘」の魅力をおすそ分けします。

2021年に継承200周年を迎えた淀江傘

色鮮やかな淀江傘。150年前は茄子紺色の傘に金糸の糸飾りのみでした(©鳥取県)

はじめに

私たちは記事のテーマを探す過程で、鳥取県の伝統工芸品について取り上げることで地域の活性化に貢献できるのではないかと考えました。その後、さまざまな鳥取県の伝統工芸品について調べていく中で、淀江傘の美しさに引かれました。さらに、淀江傘が2021年に継承200周年を迎えたことを知り、この記念すべき事実をより多くの人に知ってもらいたいと思い、今回記事を執筆しました。 学生の視点で書かれた淀江傘の魅力と、伝統を継承する人々のつながりを感じていただけましたら幸いです。

淀江傘はたはた広報隊。Zoomミーティングで取材を行いました

「淀江傘伝承の会」の山本様へのインタビュー

今回取材に協力してくださった山本絵美子様(写真提供:社会福祉法人 鳥取県社会福祉協議会)

――淀江傘を作るのにどれだけの時間がかかりますか?

山本さん(以下:山本)淀江傘には野点傘、蛇の目傘、番傘、裾黒番傘、ミニ傘、ランプスタンドなどたくさんの種類がありますので、その種類によってかかる時間がまちまちです。ですからどれくらい時間がかかるかを答えるのは難しいですが、傘それぞれの製作時間を平均すると一本作るのに大体2カ月ほどかかります。一番大きい野点傘は、直径4尺(開いた傘の端から端までが約2m40cm)ありますので、一本作るのに半年以上はかかります。

――淀江傘を作る中で一番楽しいこと、一番大変なことは何ですか?

山本 作業の楽しさに一番、二番はないです。注文してくださったお客さまの喜んでいただく顔を想像しながら傘を作っている時や、淀江傘の中でも一番人気の蛇の目傘を作っている時、淀江傘独自の糸飾りが傘の内側に施された傘を作っている時も楽しいです。大変なことはそれぞれありますが、傘の骨を作る作業が難しいです。また、天井張りという作業は何枚も紙を重ねて作業しますので大変です。

――傘の骨を作る作業について詳しく教えていただけますか。

山本 「淀江傘伝承の会」では、制作現場から車で10分程度の竹藪に入って傘骨に適している真竹を一年分伐採して、倉庫に保管しています。骨づくりは、傘づくりの基本中の基本です。やはり、最初にしっかりとした骨を作れば良い傘ができます。傘のサイズによって傘骨の厚みや骨のサイズが違いますし、きれいに竹のささくれを取るなど、骨づくりはとても神経を使う作業です。

傘の材料となる真竹。真竹は節と節の間が長く、野点などの大きな傘を作ることができるため傘づくりに適しています

――コロナ禍の現在、淀江傘伝承のためにどのような活動をされていますか?

山本 2021年は淀江傘が継承されてから200年という記念すべき年です。まず10月にデパートで米子市さんが大々的に200年展を主催してくださいました。とても評判が良くて、素晴らしいイベントでした。また、10月末からの15日間、私たちがいつも仕事をしております「和傘伝承館」で、「継承200年展」という展示をさせていただきました。こちらがまたまた大盛況でした。全国とまではいきませんが、地元のお客さま、広島、岡山などの近隣の県からもたくさんの方々が見学にお越しいただきました。

――ランプスタンドの制作はいつごろからされているのでしょうか。

山本 ランプスタンド(行灯)は3年前から制作をし、とても評判が良いです。お値段もお手頃です。「お部屋の隅に置いて灯りをともす」「お庭やベランダ、外に置いてその光でワインを飲む」「お店のインテリアにする」など、いろいろな使い方があります。ランプスタンドは「胴貼り体験」ができて、5名から募集しています。他にもワークショップで、因州和紙を使った折り紙を体験することができます。

淀江傘のランプスタンド。画像は東京で展示されたもの

――和傘と洋傘の利点や欠点はありますか?

山本 普段皆さんが使っていらっしゃる洋傘は軽くて安く、使い捨てです。一方で和傘は、昔は実用品として使われておりましたが、洋傘に比べると骨の数が多いから何倍も重みがあります。親骨(長い骨)が48×2本、和紙を張って油を塗るとさらに重くなります。長い間差すと肩が重くなります。

昔は実用品だったので安く売られていたのですが、今は実用品ではなくてどちらかというと「飾り」です。普段使いしてほしいけれど、洋傘を使うか和傘を使うかだったら、やはり皆さん安くて軽い洋傘だと思います。

内側から見た淀江傘。和傘は骨の数が多く、見ているだけで一本一本の重量感が伝わってきます(©鳥取県)

――最後に淀江傘に対する山本様の思いをお聞かせください。

山本 文政4年(1821年)から淀江傘が作られて、2021年が200年の節目の年になります。1984年に最後の製造業者がご年齢と、洋傘におされて和傘は商売にならないということで店じまいをされました。そこで淀江傘の技術が途絶えかけたのですが、その元傘屋さんのご家族、娘さんや息子さんたちが集まって、せっかく続いている淀江傘の技術をここで絶やしてはいけないと、翌年に「淀江傘伝承の会」を発足させました。

現在は、3人で一生懸命次の担い手として頑張っています。この先淀江傘がどれだけ続いていくか分かりませんが、50年、100年と、この技術がずっと継承されていくことが私の使命だと思って、後世に伝えていくために頑張っています。

余談になりますが、近くの高等学校にある郷土芸能部の生徒さんに毎年、傘づくりの指導をさせていただいております。また、地元の小学校や中学校に出向いて傘の種類や歴史について知っていただくために講演会をさせていただいております。この話を聞いた生徒さんの中から、一人でもいいので「将来傘の仕事についてみたい!」という方が出てくれば本当にありがたいことだと思っております。

小学校、中学校に行った時に「こんなに近くに、こんなに素晴らしい傘を作っている工法があるなんて知らなかった」「将来、自分は傘づくりの職人になりたい」という生徒さんの声も多々ありました。先のことは分かりませんが、少しでも淀江傘の素晴らしさを知っていただければ幸いです。

かつては海辺で干されていた淀江傘。現在は室内で乾燥させています(©鳥取県)

「米子市文化振興課」へのインタビュー

――工芸品をアピールするために米子市で行っている活動はありますか?

米子市  淀江傘が200年ということで、10月に米子新町天満屋で270本の傘を大々的に展示させていただきました。展示期間は5日間でしたが、皆さんに「良かった」と言っていただきました。そして、米子市立山陰歴史館では、2月に歴史をテーマにした淀江傘の企画展も行いました。

昨年、和傘伝承館で行われた「継承200周年展」で展示された淀江傘

米子市 また、「淀江傘伝承の会」にお願いしてランプスタンドをふるさと納税の返礼品として取り扱っております。ふるさと納税していただいた際には、ぜひランプスタンドを返礼品として選択していただきたいですね。

――米子市が民間の企業・団体と協力して実施している文化振興のための活動はありますか?

米子市 当課としましては、「光」をテーマにした米子町の「マチノヒカリ」というイルミネーションを定期的に行っています。また、市として大々的にアピールしたいのは米子城跡ですね。そちらのライトアップ「黄金の石垣」は、毎年12月31日に設置して1月10日まで点灯しています。(大晦日はオールナイト) さらに、米子城と米子城下町の2つをテーマにした田んぼウォークを楽しむ企画として、日本海新聞と共同でガイドを行っています。 米子市だけでは小さな地域ということもあって、周りにご協力いただきながらこれからも活動を続ける予定です。

――米子市の広報活動における課題はありますか?

米子市 文化財は販売として取り扱うのが難しいですね。天満屋での展示は、淀江傘の宣伝になったと思います。購入を検討している方には、チラシをもとに、直接お問い合わせをいただいています。PRの手法としては、『広報よなご』という冊子とインターネットを使った告知のみですが、大規模な企画展の際にはニュースで報道されるため、ニュースを見て足を運んでいただくお客さまも多いです。報道の力は大きいと実感しています。

――米子市文化振興課として、地域活性化には何が必要であるとお考えですか?

米子市 米子市の特徴的な歴史と文化を生かしたまちづくりを実現するために、地域に根差した文化財の掘り起こしと、文化財を生かした分かりやすいストーリーを地域と協力して構築することが不可欠だと考えています。文化財は行政だけで守りきれないので、地域を巻き込んで活動していきたいと考えております。淀江地区でも、淀江傘の認知度が低下しつつあります。200周年の企画展を通して、淀江傘を周知させることができたのは確かです。

米子城跡のエゴノキを淀江傘の心臓部分「ろくろ」に活用するプロジェクトが進んでいます(©鳥取県)

今回紹介した魅力スポットMAP

和傘伝承館に足を運んでみてはいかがでしょうか?

淀江傘はたはた広報隊

浅井七海(2022年経営学部卒業)
鳥取県は今まで馴染みのない場所でしたが、今回オンライン上とはいえ、つながりを持つことができて大変うれしく思っています。私たちがオンラインで魅力を感じることができたように、読んでくださった皆さまにも鳥取県の魅力が伝われば幸いです。ぜひコロナ禍が落ち着いたら、実際に足を運んでみてください。

築島穂香(商学部4年)
インタビューを通して直接お話を伺ったことで、淀江傘の伝承のための取り組みや淀江傘そのものへの理解、そして淀江傘への愛着を深めることができました。米子市文化振興課および伝承の会の方から私たちが汲み取った思いを、このコラムを通じて米子市や鳥取県にお住まいの方にもお伝えできればうれしいです。そして、皆さまが私たちの発信をきっかけに、米子市や淀江傘に興味をもたれ、淀江傘の継承に少しでも力を添えたいと思っていただけたら幸いです。

相磯里奈(文学部3年)
後世に伝えようと頑張る人たちの熱意によって、淀江傘の技術は現在まで受け継がれているのだと感じました。このコラムを読んだ皆さまに少しでも淀江傘の魅力が伝わりますように。

守屋朱莉(政治経済学部3年)
『鳥取県の魅力を発信する』という漠然としたテーマから、淀江傘に絞る過程は簡単なものではありませんでした。しかし、淀江傘伝承の会の山本様、米子市文化振興課の方々のご協力があり、無事に取材を実現することができました。改めて、感謝申し上げます。米子城跡のエゴノキを淀江傘の心臓部に生かす取り組みなど、伝統工芸品も地域とつながり、さらにその魅力を高めています。皆さんの地元にも、魅力的なストーリーを持つ伝統工芸品があるかもしれません。

根本隼輔(農学部2年)
私たちは学生ライターとして、明治大学ゆかりの地である鳥取県の魅力をメンバーとともに発見し、記事を執筆しました。テーマの淀江傘は200年の歴史を持つ伝統工芸品ですが、その伝統の背景には人々の努力や工夫がありました。今回の活動をきっかけに、身近な地域の魅力を発信していきたいと考えています。

コラムを紹介してくれた方鳥取県の魅力発信ライター:チーム「淀江傘はたはた広報隊」

紹介者:上段左から:相磯里奈さん(文学部3年)、築島穂香さん(商学部4年)
中段左から:守屋朱莉さん(政治経済学部3年)、根本隼輔さん(農学部2年)
下段から:浅井七海さん(2022年経営学部卒業)

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