『学生生活への扉』―明治大学から新入生へのメッセージ―「自由への期待」情報コミュニケーション学部 鈴木雅博先生
情報コミュニケーション学部教員学生生活サポート思索の樹海PROFILE:
静岡県生まれ。東京大学大学院教育学研究科博士課程単位取得退学。博士(教育学)。専門は学校組織研究。著書に『学校組織の解剖学:実践のなかの制度と文化』(勁草書房、2022年)、内田良・山本宏樹編『だれが校則を決めるのか』(岩波書店、2022年)、秋田喜代美・藤江康彦編『これからの教師研究』(東京図書、2021年)など。
自由への不安
新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。新たな門出を前に期待と不安が入り混じった心持ちではないでしょうか。「新しい友人はできるだろうか」「講義にはついていけるだろうか」「一人暮らしをうまくスタートできるだろうか」といった具合に心配の種は尽きないかと思います。
実際、大学というところは高校や中学とは異なり、クラスでの仲間づくりを企画してくれたり、部活動に入るように促してくれたり、履修すべき授業をパッケージ化してくれたりといった世話を焼いてはくれません。その意味では、皆さんの不安は理に適ったものだと言えます。
大学生の自由
それでも、何とはなしに皆さんが大学生活のスタートに期待を抱くのはなぜでしょうか。それは人生の新しい局面に踏み出すことへの期待であり、これまでになかった「自由」への期待なのだと思います。先ほど述べたように、大学は細々とした面倒を見てくれるわけではありませんが、こうした控えめな態度は大学の自由に付随するものだとも言えます。
もちろん、大学における自由とは、まずもって権力からの学問の自由を意味しますが、大学自体が権力者となって、学生にああしろ、こうしろと押しつけがましく指図しないという意味での自由も大切にしています。
皆さんは、この自由な空気のなかで、気の合う仲間と腹を抱えて笑ったり、悩みを語り合ったり、興味のある何か(もちろん学問も)にのめり込んだり、アルバイトに精を出したり、知らない土地に出かけたり、世の中の不正に声を上げたり、SNSやゲームで時間を溶かすことができます。
こうした自由は大学生となった皆さんが「大人」として扱われていることを意味しますが、実のところ、あくせくと働いている大人の方がよほど不自由な生活を送っているのかもしれません。失ってみてはじめて学生時代の自由の輝きに気づいた大人たちは、その眩しさを憧憬や嫉妬や後悔の念とともに振り返りながら、若い人たちに自分がしてきた(できなかった)道を口うるさく説いてしまいがちです。しかし、それを聞き入れるか否かもまた皆さんの自由なのです。

「自由」は明治大学建学の精神のなかにも
(駿河台キャンパス・アカデミーコモン正面入り口 創立者肖像レリーフ記念碑)
自由を享受する者の責務
ただし、自由に過ごせない人たちがいることにも目を向けてほしいと思います。大学を含め社会には経済的理由や心身の状態等のために不自由を感じている人がたくさんいます。そうした人たちが抱えたリスクが現実の不自由として顕在化しない社会にしていくために、是非、皆さんの「自由」を使ってください。逆説的に聞こえるかもしれませんが、それが自由を享受する者の責務だと思います。
最後に少し教訓めいた話をしてしまいましたが、そんなことを私が言えるのもまた「自由」の為せる業です。皆さんが期待を持って出会うその自由が、他者の自由につながっていくこと。明治大学での学生生活がその礎となることを願っています。
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