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思索の樹海
2025.04.04

『留学への挑戦』―明治大学から新入生へのメッセージ―「留学を通して人生の扉を大きく開こう!」国際日本学部 平井達也先生

国際日本学部教員学生生活サポート思索の樹海
【思索の樹海(うみ)】『留学への挑戦』―明治大学から新入生へのメッセージ―は、新入生に高校時代までと大学での勉強の違い・面白さ・心構えなどをお伝えするコーナーです。今回は国際日本学部の平井達也先生に、ご執筆いただきました。
「思索の樹海(うみ)」『留学への挑戦』を執筆いただいた先生平井達也先生(国際日本学部 教授)

PROFILE:
福岡県出身。一橋大学社会学部在籍中に、大学の奨学金で1年間ミネソタ大学心理学部に留学。大学卒業後、九州大学教育学研究科修士課程、および博士後期課程にて臨床心理学を専攻。その後、フルブライト奨学金にてミネソタ大学大学院教育心理学研究科カウンセリングプログラムにてPh.D.を取得。九州産業大学国際文化学部専任講師、APU(立命館アジア太平洋大学)教育開発・学修支援センター准教授、教授、センター長、教学副部長などを経て、2024年より現職。専門は異文化間教育、カウンセリング心理学、キャリア教育、リーダーシップ教育など。

留学を通して人生の扉を大きく開こう!

はじめに

明治大学の皆さん、こんにちは。この記事では、私の留学経験を紹介することで、皆さんの未来の可能性を広げるきっかけになれば幸いです!私は現在、国際日本学部で異文化間教育や国際教育などを通して、学生の皆さんが多様な文化を理解する機会を提供しています。

私の留学体験としては、学部時代に1年間心理学を学びにミネソタ大学へ留学し、その数年後にカウンセリング心理学の博士号を取得するために、再度ミネソタ大学大学院に5年間ほど留学をしました。この合計6年間は、自分の一生の中で一番勉強をした期間でもあり、人生を形成する上で最もインパクトがあった期間だと言えます。

留学を通してレジリエンスを高める

皆さんは、「レジリエンス(Resilience)」という言葉を聞いたことはありますか?これは、主に心理学の分野で使われることが多いのですが、レジリエンスとは困難を乗り越えるしなやかな心の力です。

留学をすると、もちろん楽しいことやうれしいこともたくさんありますが、自分にとってのチャレンジもたくさん経験することになります。例えば、毎週数百ページに及ぶリーディング課題に四苦八苦したり、アメリカ人の院生とのディスカッションで自分が言いたいことをうまく言えずに悔しい思いをしたり、アメリカ人の大学生を相手にカウンセリングをしても思ったように助けになれなかったり、など自信を無くすような経験をたくさんしました。

しかし、苦労をした分、留学時代は英語や専門知識のみでなく、生きる上で重要なスキルやマインドセット、そして上記のレジリエンスを最も身に付けることができた時間でした。例えば、「失敗を必要以上に恐れなくてもいい」「パーフェクトでなくてもトライしてみる」「困ったときは周りに助けを求めて良い」「弱さも強さも持った自分を等身大に受け入れる」などです。

海外で生活をすると、当然その社会では文化・国籍的にも言語的にもマイノリティになるのですが、だからこそマイノリティの人々や生きづらさを感じている人、そして不完全な自分への共感も深まったと感じました。そして、これらの成長は、その後の自分の生活やキャリア、人間関係において、たくさんの豊かさをもたらしてくれました。

新しい人生の扉を開く

もう一つ、留学は自分でも予想していなかったさまざまな出会いや可能性への扉を開いてくれます。私の専門の一つである、キャリアカウンセリングで「計画された偶発性(Planned Happenstance)」という考え方があります。これは、人の進路や人生の選択には、本人の計画や予定以上に、偶然の出来事(Happenstance)が大きく影響を及ぼすというものです。通常、偶然を計画することはできませんよね。

しかし、自分を新たな環境におき、好奇心や冒険心、柔軟性を持って、さまざまな人や情報、経験に出会う時、その後の人生に大きな影響を与える偶然が訪れやすくなるということであり、留学はその意味でも最適のチャンスだと思います。私自身の例からしても、学部留学の時に優れたカウンセラーの先生に出会い、自分の仕事としてカウンセラーを目指そうと思いましたし、その後の仕事のテーマとなるキャリア教育や異文化理解、Well-being(※)にも留学時の授業や実体験を通して出会いました。

留学の時に得た、日本人やアメリカ人を含む友人やメンターとは、今も長い付き合いが続いていますし、仕事やプロジェクトを一緒にすることもあります。これらの出会いは、留学する前には予想もしていなかったことですし、留学をしなかったら経験できなかったことでしょう。従って、留学は自分の人生の新しい扉を開けて、予想もしなかった新しい世界を見せてくれる貴重なチャンスなのです。

皆さんの多くは20歳前後だと想像しますが、体力や気力、感受性や柔軟性豊かなその時にこそ、留学という体験からスポンジのように吸収し、自分なりの生き方や未来へつなげることができるのではないでしょうか。皆さんにも、自分のcomfort zoneを飛び出して、チャレンジを自分に与えることで、自分という器を大きく広げてほしいと切に願います。あなたなら、きっとできるはず!

※ Well-being:幸福で肉体的、精神的、社会的全てにおいて満たされた状態

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